小さな破壊神VS巨大少女怪獣(中編)

更新が遅くなって申し訳ないです……。前々からなんですが、どうも周期的に気分が沈む状態に悩まされていて、前回の更新後あたりから創作どころではなくなっていました(ホームページの止まったのも同じ原因)。しかも、昨日の朝からは「胸郭出口症候群」のせいで右腕が酷く痛む始末。これは医者に行って軽くはなったのですが、散々でした。それでも、何とか書き上げましたのでアップします。本当は前後編で完結の予定だったのですが、今回は中編とさせてもらって、いちゃいちゃシーンは次に回します。巨大化した女の子たちの破壊的いちゃいちゃも書いてて楽しいですからね。

……
水奈の突撃を、ハルカは正面から受け止めた。スニーカーで足元の車を派手に踏み潰しながら両手でガードしたが、その程度では止められなかった。
「絶対に許さないんだから!」
心の底から感情をぶちまけながら、ハルカの両手を掴むとそのまま力を込めて投げ飛ばす。
「えっ……きゃっ!」
思わず女の子らしい悲鳴が口をついたものの、30倍サイズに巨大化していては被害は甚大だった。白いパーカーとミニスカートの下で巻き添えになった住宅が次々に潰れ、マンションを背中で破壊してようやく止まったからである。短いスカートの奥の下着も丸見えだったが、気にしている余裕はなかった。
後先考えずに、水奈が飛びかかってきたかと思うとそのまま組み付いてきたからである。それだけでハルカが半壊させたマンションは完全に破壊され、瓦礫が周囲の建物などを巻き込む。
「ち、ちょっと水奈止めて!」
心のどこかでは全身を使って建物を壊し尽くすことに快感を覚えながらも、ハルカは抗議の声を上げた。幾ら身体は痛くないとはいえ心の痛みまでは誤魔化せなかった。
「嫌よ! 罰としてこーしてやるんだから!」
ハルカが反論する余裕もなかった。両腕で親友の巨体をロックした水奈は周囲の建物にも構わず思い切り転がったからだった。巨大な二人の少女によって、小型のビルや住宅、商店などが原型を残すことなく壊されていく。少女たちの洋服からも瓦礫やスクラップがぼろぼろとこぼれ落ち、そこに切れた電線が絡みつき火花を散らす。
水奈が転がるのを止めたのは二車線の大通りまで来た時だった。ハルカの上に馬乗りになったまま、道路上のバスを掴む。
「お姉ちゃんから教えてもらった遊びをしてあげる! ほらほら!こーすると気持ちいいでしょう?」
悪魔のような笑みを浮かべながら、水奈は手にした大型バスをハルカのパーカーに包まれた小さな胸の谷間に押し付けると、そのままこすりつけた。握力などによってバスは簡単に潰れたが、ハルカは脳が焼けるかのような刺激にあどけない喘ぎ声を上げる。
「あっ……! 止めて止めて! なんか……下から出ちゃう!」
「やっぱりね。お姉ちゃんこれが気持ちいいって言ってたけど、本当みたいね」
<ちょっとちょっと水奈! 大声で言わないで!>
「お姉ちゃんが遊びまくってるのはみんな知ってるわよ。お姉ちゃん胸が大きいから谷間で何でも壊してしまうって」
<……>
イヤホン越しに姉が沈黙するのも構わず、水奈はバスを放り投げると、愉悦に溺れて惚けるハルカの巨体を無理やり起こした。
「もっともっと壊して遊びたい?」
「うん……。お願い……」
目がとろんとして、返事も夢見心地だったが、水奈は<お願い>を忠実に実行に移した。笑いながら、ハルカの巨体をまだ壊していなかったビルに叩きつけたからである。抱きつくような形になったが、勢いがついていたので建物は簡單に倒壊し、周囲に瓦礫を派手に撒き散らす。ハルカもまたその上に転がる形になったが、水奈はさらに物のように転がして、周囲を壊滅に追い込んでしまった。
「いけない子ね。こんなに派手に壊してしまうなんて。ハルカのせいでみーんなめちゃめちゃじゃない」
「仕方ないじゃない……巨大化してるんだから……」
「そうだけど、こんなに素直だと張り合いないわね。さっきまでの元気はどこにいったのよ」
「さあ……。もっともっと壊したい……」
「さすがはハルカね。たった一時間で街を一つ壊滅させて得意そうにしてただけあるわね」
両手を腰に当てて呆れていた水奈だったが、自分の圧倒的な優位を確信して完全に気が緩んだ。腑抜けになったハルカの相手をする気が無くなって、背中を向けたからである。
「勝手に壊したらいいじゃない。水奈も勝手に遊ぶから♪ この街ぜーんぶ壊してしまうんだから」
恐ろしいことを平然と言い切って、水奈は道路上の車をまとめて蹴散らしながら歩き始める。
「あ、工場とかまとまってるじゃない。あそこ壊して遊んだら大爆発しそう♪」
すぐに新たな標的を見つけて、平然と住宅地に足を踏み入れる。小さな建物が紙の模型のように簡単に壊されていき、少女のスニーカーによって踏み潰されていったが、水奈は楽しそうに壊し続ける。
一通り住宅地を破壊し、いよいよ工業地帯に足を踏み入れようとした、その時だった。
背後で建物などが壊される音がしたような気がして、水奈は反射的に振り向いた。てっきりハルカが勝手に遊んでいるだけと思っていたのだが……。
いきなり、正面からタックルを受けて巨大化した少女は工場の敷地の中に思い切り突き飛ばされた。全身で建物やプラントを破壊し、倒れた煙突がまとめて体に当たる。
「油断したわね。本当に甘いんだから」
タックルを仕掛けたハルカの勝ち誇ったような声が響き渡る。
「さっきはよくもやってくれたわね。お返しするんだから!」
周囲の建物をさらに壊し、煙突などをかき分けてようやく水奈は体を起こした。短めのジーンズスカートの下では工場が無残に潰れていたが、その破壊の快感を味わうより早く、ハルカに腕を掴まれる。
「あっ……」
「この工場壊して遊ぶわよ! 水奈の体を使ってね!」
正直なところ、水奈は為す術がなかった。そのまま投げ飛ばされてさらに全身で工場を破壊してしまったからである。そこに倒れた煙突を叩きつけられ、たまらず転がってしまったが、その瞬間。何かに引火したのか大爆発が発生した。さすがのハルカも慌てて目を覆ったが、すぐにただの「演出」であることを思い出して微笑む。破壊行為も楽しかったが、こうやって炎上させてしまうのも怪獣のようで面白かった。
「こーなると一段と燃えるわね。巨大少女怪獣ハルカ、炎の力を借りてパワーアップ!」
思わずつぶやきながら水奈に対する復讐を続ける。工場が全て破壊され、盛大に黒煙や炎を吹き上げるようになっても水奈は反撃一つしなかった。

「……大丈夫かい? このままだと水奈ちゃんがヤバいよ」
モニターで仮想空間内を見つめながらスタッフAがつぶやく。
「心配性ね。水奈は平気よ。ああ見えても打たれ強いんだから。それに……」
「それに?」
「ハルカちゃんは怪獣だけど鬼じゃないわ。そろそろかもね」
水奈の姉・杏奈は平然としていた。まるで何かを確信しているかのように。

……

次回の更新は来週の予定です。もちろん、イラストをアップします。SSの方は……年内に完結するように頑張ります。ホームページの連載小説「反逆の従者」もラストなのでそっち優先になると思いますが……。

小さな破壊神VS巨大少女怪獣(前編)

今回はガリクソン様からのリクエストに応えて、水奈&ハルカのSSをお送りします。ただ破壊するだけではちょっとつまらなかったので、今回はこんなお話にしてみました。

……
「元気出しなさいよ、水奈ったら。半分は水奈が悪いんでしょう」
「違うったら! 悪いのはハルカの方だってば!」
大学生の姉・杏奈の言葉に、妹の水奈は全力で反論した。
今日は久しぶりにシティクラッシュゲーム(CCG)のテストプレイの日だったが、そのプレイヤーである水奈の機嫌がいつもよりずっと悪かった。
「ハルカかが水奈の言ったことをぜーんぶバラしたんだから! ハルカのこと信じてたのに……」
「でも言ってはいけないことを言いまくっていたのは水奈じゃない。だから無料通話アプリは気をつけないとダメだって言ってたのに」
「ハルカは絶対バラさないと思ったのに……」
姉にそっくりな正統派美少女の水奈だったが、むくれまくっていては台無しだった。
「水奈ちゃん、今日の実験どうする? 準備は全部整ってるけど」
いつもは楽天的なスタッフAが心配そうに尋ねてくる。
「ん……。そのままやっちゃって。変更なし」
「いいのかい? 水奈ちゃんそんな気分じゃないように見えるよ」
「そんな気分じゃないからやってもらうのよ。架空の街を徹底的に壊して暴れれば少しはすっきりするんじゃない? それに……」
「それに?」
「ちょっと面白いこと思いついたからそのまま実験するわよ。水奈、準備して」

身長50メートル近くまで巨大化した水奈が、仮想空間上に作られた巨大都市に降り立ったのは、それからしばらくしてからのことだった。
「今日はやりたくないのに……」
<贅沢言わないの。この実験、準備に凄く手間がかかるんだから。ドタキャンは出来ないのよ>
耳の中の超小型イヤホンから姉が注意する。それがまた面白くなかったこともあり、水奈は足元の車数台スニーカーの先で思い切り蹴飛ばして破壊する。
Tシャツにデニムスカート、羽織っただけのシャツというシンプルな私服姿のままだったが、巨大化しているのでやりたい放題だった。
「……やればいいんでしょう? やれば」
<そういうこと♪ どーしても今回のテストは必要なのよね。オプションを追加してるし>
「オプション?」
<ま、それはすぐに分かるわ。とにかくいつもみたいに好き勝手に暴れて。その街ぜーんぶめちゃめちゃにしていいから>
それで姉からの通信は終わったが、水奈は辺りを見回して小さく溜息をついた。
今立っているのは中心部に近い鉄道の駅の前だった。新幹線も通っている大型の高架駅で、ロータリーには高架の歩道橋も渡されていたが、水奈にはただのおもちゃにしか見えなかった。
もう、お姉ちゃんったら。いっつもこーなんだから!
親友と姉への怒りが、破壊衝動に転じるまでほんの一瞬だった。ぐっと唇を結んだ巨大少女は後先考えずに駅前のロータリーを蹂躙し始めたからだった。巨大なスニーカーが凶器と化して車やバス、歩道橋をまとめて破壊していく。道路は踏み抜かれて足跡だらけになり、バスターミナルはバスごと破壊され、一部の車両が爆発して黒煙を吹き上げ始める。
それでも水奈は止まったりしなかった。ロータリーなどを破壊すると今度は目の前のビルに容赦ないキックを浴びせたからだった。スニーカーの先がめり込んで建物を貫通し、そこから建物は崩壊していく。
「いつものことだけど簡単に壊れるわね……」
数十棟のビルを瓦礫に変えて、水奈は少しだけ気分が晴れるのを感じていた。この架空世界にいる限り、自分は無敵そのものだった。
<いい調子ね。そのまま高架駅も壊してしまいなさいよ。怪獣みたいにめちゃめちゃにね♪>
「もちろん!」
水奈の口元に笑みが浮かんだ。ようやく吹っ切れたのだろう。いつもの調子を取り戻した巨大化少女は躊躇い一つ見せずに大型の駅へと襲いかかっていった。
最初に、駅の上に立つビルを思い切り殴りつける。それだけで階層がむき出しになったのを見ると、華奢な肩でショルダータックルを食らわせる。巨大化した水奈の全体重を受け止めて駅ビルは簡単に崩壊して、駅の反対側も瓦礫に変える。そこに水奈はスニーカーに包まれた足を入れると、笑いながら歩き始めてしまった。足元ではホームや電車がまとめて潰され、原型を失っていったが、水奈は壊れた部分に両手をかけてそのまま引きちぎってしまった。
「えいっ!」
気合とともにまだ無傷の部分に叩きつけてさらに破壊すると、蹴飛ばして思い切り踏み潰す。ありとあらゆる建造物や電車が破壊される轟音が響き渡ったが、気持ちよくて仕方なかった。
「あ、電車あるじゃない♪ これで遊ぼうっと」
高架駅の中心部をほぼ壊滅させて、水奈は新たな獲物を見つけた。無造作に瓦礫の上に膝をつくと、既に半分の車両が破壊された電車を掴み上げたからである。
「電車はね……こーやって壊してしまうの!」
独り言のようにつぶやきながら、簡単に握り潰す。ただのスクラップになったのを確かめると投げ捨てて、別の車両はまだ壊していない建物に投げつけてまとめて破壊してしまった。
一通り電車で遊んでから、水奈は瓦礫を落としながら立ち上がった。周囲を見回して自分の破壊力を確かめると、それこそ調子に乗って暴れ始める。
高架駅の残りの部分を手足を使って完全に破壊する。
駅前にあった大型デパートやファッションビルをまとめて薙ぎ倒し、瓦礫を踏み潰してポーズを決める。
大通りの車を全て破壊しながらスライディングを敢行する。
こうして、可愛らしい顔をした巨大美少女の手によって、巨大都市の一部は完全に壊滅した。
<相変わらず水奈は派手に暴れるわね~>
瓦礫とスクラップを踏みつけながら大通りで休息していると、イヤホン越しに姉が話しかけてきた。
「当然じゃない。水奈は<小さな破壊の女神>だもん」
<そうよね。だったら<巨大少女怪獣>の相手をしてもらうわよ。小さな破壊の女神さん>
水奈が驚く間もなかった。
無傷だった車を盛大に踏み潰しながら、親友のハルカが巨大化した状態で大通りに降り立った。

「ハルカ……」
「わたしもテストに付き合うわよ。杏奈お姉ちゃんから誘われたの。久しぶりにいいでしょう?」
<中途参加機能、問題ないみたいね。今度から途中からでもプレイに参加できるようになったのよ>
「お姉ちゃん、早く言ってよ」
<言ったら水奈はテストに参加しないでしょう?>
姉の言葉に、妹は何も言わずに俯いた。まさにその通りだった。
<さあ、仲直りしなさい。意地を張ってもいいことなんて無いんだから>
「そういうこと。さ、いつものように遊ばない?」
ハルカが無造作に歩いてくる。長めのソックスとスニーカーに包まれた足が次々に車を壊し、アスファルトを陥没させていたが、慣れているので気にしたりしない。
しかし、水奈は……。
「嫌っ!」
激情が心を満たすのと同時に、水奈は近づいてきたハルカを思い切り突き飛ばした。不意を突かれて、巨大化したポニーテール少女は大通りの上に簡単にしりもちをつく。
「絶対に許さないんだから! ハルカばっかりいい子ぶってずるい! ハルカだって悪いのに!」
<水奈……>
「だいたいぜーんぶハルカが悪いんだから!」
最早水奈を止めることはできなかった。一時的にしろ、理性のタガが外れた巨大少女は、長い髪をふわりと翻しながらハルカへと飛びかかっていったからである。両手で相手の全身を掴むと、巨大化しているのもお構いなしに転がる。その先にあったのは低層の住宅が立ち並ぶ地区だったが、水奈とハルカの巨体によって簡単に破壊されて瓦礫となっていく。
「ち、ちょっと水奈……」
仮想空間上にいる為、痛みは感じなかったが、さすがにハルカは慌てていた。いつもは大人しい水奈とは思えない暴走ぶりだった。
「許さないんだから! えいっ!」
何にもできないまま、ハルカが投げ飛ばされた。受け身すら取れないままパーカーに包まれた背中でマンションの中央部を崩壊させ、伸びた手足も他の建物を巻き込む。巨大化しているため、被害は甚大そのものだった。
「水奈! わたしの話も聞いて!」
「嫌! えいっ!」
ハルカの言葉を無視して、水奈は攻撃を続けた。近くにあったビルを土台ごとを引き抜くと、親友目かげて投げつけたからだった。さすがにハルカは両手で庇ったので、建物はバラバラになり、周囲を破壊するだけで終わる。ハルカのパーカーやミニスカートにも破片が派手に降り注ぎ、少女の心を熱くしていく。
「水奈……」
「巨大少女怪獣ハルカ。退治してあげる!」
言い切るのと同時に、水奈は羽織っただけのシャツを翻しながら飛びかかってきた。後先考えていない攻撃だったが、さすがにハルカは避ける。
「本気なの?」
「本気に決まってるじゃない!」
誤爆した水奈は、ハルカが壊したマンションの隣りにあったビルをその巨体で破壊していた。髪を後ろにやり、まとわりつく瓦礫や建物の残骸を振り落として構える。それを見てハルカも破片などを落としながら立ち上がる。
Tシャツにジーンズスカート、シャツ姿の清楚な巨大少女と、白いパーカーにミニスカート姿でポニーテールがよく似合う活発な巨大少女が瓦礫の上で向かい合う。
「いくわよ!」
水奈の宣言と共に、破壊神と怪獣の二つ名を持つ巨大化少女たちの戦いは始まった。

……
というわけで、水奈とハルカの巨大化したままの大喧嘩が始まってしまいました。これで街は壊滅してしまいますね。

次の更新は来週、イラストの更新を予定しています。

荒事始末人ユリアの仕事(4)

やっと完結編です。お待たせして申し訳ないです。

……

一方その頃。当の謙吾はカメラを回す反対の手で電話に出ていた。動画を中継するスマホとは別のスマホに着信があったからだった。
「だからなんでこんな時に電話してくんだクソ親父! 最高のチャンス逃すだろ!?」
電話してきたのは海外にいる父親だった。余程電波事情の悪い辺鄙な場所にいるのか、いまいち聞き取りづらい。
「……え? 男なら見てないで助けろ? どーやれっていうんだ!
巨大女ふたりにビオランテもどきまでいるんだぜ!」
「へ? 護符? 今持ってるけど……。それがあれば大丈夫? 一度だけなら願いは叶う? マジかよ……」
どうやら父親の横には別の誰かがいるらしい。年老いた女性の訛りの酷いフランス語と父親の話す日本語訛りのフランス語の会話が交じるので話の筋すらよく分からない。
親父またアフリカの奥地にでも行ってるんだな。フランス語が通じる場所にいるということは……。
「なに? その護符さえあれば助けられるって呪術師のばーさんが言ってる? どんな魔法も平気だから決断次第だ? んな事言われても……」
ユリアの劣勢は明らかだった。街を盛大に破壊しながらも、一方的に嬲られ、時には痴態すらも晒していたからである。
「そろそろ本番いってみる? 世界中に中継するのも面白いわね~」
破壊されつつある大型の駅を足場に、ヘイゼルはにんまりと笑った。
「この実験体にはね、色々な性技も教えてあるのよ♪ その実験を兼ねるのも悪くないわね。うふっ♪」
「そ、そんな……」
ユリアは駅前の大型ビルを背中で破壊したまま、大通りの上に座り込んでいた。体力も魔力も消耗して、動きたくても動けなかった。格闘も得意な魔法使いといえど、両方を失っては最早無力な少女でしかなかった。
「さあ、やっておしまい!」
まるで悪の女幹部のようなヘイゼルの台詞に合わせて、実験体が触手をくゆらせながら動き始めた。自由に動けることを悟ったのだろうか? その動きは喜びに満ちているようにさえ見えた。
「駄目! 来ないで! こんな所で公開処刑なんて真っ平ごめんなんだから……って、ああっ!」
通りを破壊しながら伸ばしていた足に触手が再び絡みついてきて、ユリアは恐怖のあまり声を上げた。今度こそ犯される! そう思うと抵抗することすら出来ない。
駄目……。もうどうにもならない。任務に失敗するどころか大事なものまで失ってしまう……。あたしって、こんなに非力だったの……?
思わず閉じた目に、涙が浮かんだ時だった。
「何をしてるんだ! ユリア! 立ち上がれ!」
突然、謙吾の声が耳元に届いた。
「この護符があれば力はすべて戻る! お前が全力を出せば勝てる相手だろ!」
「謙吾……」
「この護符、お前にやるぜ。大事に使えよ! それっ!」
体格差も忘れて投げられた小さな小さな護符を、ユリアは何とか右手で受け止めた。ゴマ粒以下の大きさだったが、なぜか力が戻ってくるのを感じる。
これは……。こっちの世界の魔法? まさか……。
複数の触手がユリアのスカートの奥へと迫る。あまり気持ち悪さに身悶えしながらも、少女魔法使いは少しずつ戦う気力を取り戻していく。
「ちなみに今、中継は切ってるぜ。これ以上痴態を晒させるわけにはいかないからな」
「……いいの?」
「話は後だ。仕事だろ、荒事始末人・ユリア!」
「……。うんっ! ありがとう! 謙吾!」
大きく頷いたユリアの笑顔は無邪気そのものだった。一瞬、謙吾は胸が高鳴るのを感じたが、すぐにその場から離れる。応援はしたかったが、巨大化した少女の巻き添えだけは御免だった。
これでいいんだ、これで。後は任せたぜ、ユリア。
中継再開の準備をしながら謙吾は心の中だけでつぶやいた。
一方、力を取り戻したユリアはすぐに反撃に出た。ヘイゼルが油断しきっているのを確かめながら、足に絡む触手を魔力で一気に叩き潰す。無属性の純粋な魔力は強力な物理攻撃に相当することもあって、意外とあっさりと軛は無くなる。
「え?」
ヘイゼルが異変に気づいた時には遅かった。立ち上がったユリアがビオランテもどきの実験体へと正面から戦いを挑んでいたからだった。
「えーいっ!」
掛け声と共に、ミニスカートを豪快に翻してキックを浴びせる。純粋な魔力が込められた一撃に、実験体が大きく揺らぐ。それでもユリアは何度もキックを食らわせると、巨大化しているのをいいことに手近にあったビルを引き抜いた。撮影を再開した謙吾があっと言う間もなく、実験体に叩きつけて簡単にバラバラにしてしまった。
「えげつないな……。幾らなんでも」
「仕方ないでしょう。それに巨大化してるんだから利用しないと損じゃない」
「そういう問題か……?」
空中の謙吾は改めて辺りを見回した。巨大化したユリアとヘイゼル、そして実験体の大暴れによって街並みは原型を留めないほどに壊滅し、所々から黒煙が吹き上がり火災まで発生している始末だった。
それでも、ユリアは大暴れを止めなかった。
まだ無傷で残っていた建物を巻き込みながら実験体を投げ飛ばしたり、ビルなどを叩きつけたからである。全ての攻撃に魔力が込められていることもあり、さすがのビオランテもどきも確実に弱っていく。
「くっ……。こうなったら……」
完全に追い込んだはずのユリアの逆襲に、魔法使いのヘイゼルは打つ手が見つけられないでいるようだった。実験体はユリアの攻撃に耐えられるはずだったが、大量の魔力を吸収しきれずオーバーフローを起こしかけている。このままでは討ち取られるのは確実だった。
となると打つ手は一つ……。
「なっ……」
突然、巨大化したヘイゼルがこちらに向かってくることに気づいて謙吾は慌てた。何を狙っているのかは分からないが、逃げる方法が思いつかない。頼みの綱のユリアはこっちに気づいていない……。
何もできないまま、謙吾はヘイゼルの巨大な手の中に握られる形となった。力は込められていなかったが、状況は最悪だった。
「ユリア、これを見なさい! あなたを助けた男の子は私の手の中にあるわよ! 大人しくしなさい!」
すっかり弱った実験体に止めを刺そうとしていたユリアの動きが止まった。鋭い視線でヘイゼルを見つめると、両手をだらりと下げる。
「そう、それでいいのよ。それで。迂闊ね。この子の存在を忘れるなんて」
ユリアは無言だった。上空の風に綺麗な髪を揺らしながら、ヘイゼルを見つめるだけだった。
「条件は簡単。あなたが負けを認めて元の世界に戻ること♪ そうしたら解放してあげる」
「もし拒否したら?」
ようやくユリアが口を開いた。低く、感情のこもらない別人のような声だった。
「そうね。この子を食べてあげる♪ 今なら簡単じゃない」
「そう。勝手にするといいわ」
「なっ……!」
言葉に詰まったのはヘイゼルだけではなかった。捕らえられた謙吾もまた、ユリアの言葉に顔色を失った。
「どうせさっき会ったばかりの他人なんだから。どうぞご勝手に」
「本当にそれでいいの? 私が食べたらこの子は間違いなく死ぬわよ。本当にいいの!?」
「荒事始末に犠牲はつきものよ」
言い切って、ユリアは目線を外した。「見捨てられた」と思った謙吾は絶望のあまり、意識が遠くなる。
「ちょっと、なんでそうなるのよ! 絶対に犠牲を出さないのがあなたのポリシーでしょう!? それなのに……」
「犠牲は出すわ。……但し、それは罪を犯した者のみ!」
ユリアの言葉を謙吾が全て理解するよりも早く。少女魔法使いが風のような速さでタックルしてきた。衝撃で謙吾は空中に投げ出されたが、すぐにやわらかなクッションに受け止められる。
「えっ……?」
「もう大丈夫。安心して♪」
謙吾を受け止めたクッションの正体は巨大化したユリアの両手だった。そのまま、胸元まで引き寄せられる。程よくふくらんだ胸を目の前で見る形となり、謙吾は自分が天国にいるのか地獄にいるのか一瞬わからなくなる。
「どうしてもヘイゼル様の気を逸らす必要があったのよ。実験体の制御を乗っ取るなんて大魔法、発動まで時間がかかるから」
「え? ヘイゼルは……?」
「決まってるじゃない。罰を受けてるわよ。ほら」
ユリアに言われるまま、その方向を見た謙吾だったが、次の瞬間唖然とした。実験体の生みの親であるヘイゼルが、当の実験体に好き勝手に嬲られていたからだった。
「ああっ……! 駄目! もうっ……巨大化してるのにイキそう! 誰か止めて! ……止めなくてもいいわっ! このまま! このまま!」
「……」
「どうする? 全世界に中継するなら手伝うわよ♪」
「俺のアカウントが永久に停止されるから止めておく」

こうして。異世界から来た謎の巨大生物と魔法使いによる大騒動は、荒事始末人・ユリアの活躍によって解決した。
ヘイゼルは散々痴態を晒した後に実験体と共に元の世界に送還され、破壊された街はユリアの魔法によって完璧に復元された。
「お前、凄いんだな」
元に戻った街並みをユリアの肩から眺めながら、謙吾は大きく息をついた。
「だから荒事始末人が出来るのよ。ま、当然よね」
「大変じゃないのか?」
「大変に決まってるじゃない。でも……」
「でも?」
「こー見えても楽しいのよ。この仕事♪ 今回は巨大化して大暴れ出来たから楽しかった~。またやろうかな♪」
「遊びで街を壊滅させるな!」
「終わったら元に戻すからいいじゃない。あ、だったら今から遊んでいこうっと。日没までには元に戻すからいいでしょう?」
「馬鹿、止めろ!」
謙吾の制止も虚しく、大きな街が巨大化したユリアの大暴れによって再び壊滅したのはわずか一時間後のことだった。
ちなみにその模様も全世界に中継されており、世界中のその手の趣味の人たちを喜ばせたのは言うまでもない。

……
次に書く話は未定です。リクエストがあけば受けますが、間隔が空くと忘れてしまうので受け付けるのは「先着一名様」とさせてもらいます。また、破壊系巨大娘のお話に限定させてもらいますのでその点もご了承願います。

次回は来週更新します。久しぶりにイラストを掲載しますのでお楽しみに。

荒事始末人ユリアの仕事(3)

というわけで、「荒事始末人ユリア」の第3話です。今回は「巨大ヒロインピンチ」編です。まあ、そんなに過激な内容ではないんですけどね……。それではどうぞ。

……
その攻撃を、ユリアはまったく予想していなかった。とっさに防御はしたものの衝撃自体は打ち消せず、破壊された大通りに尻もちをつく。
「痛ーい! なんで魔法弾が飛んでくるのよ……」
「私が攻撃したからに決まってるじゃない」
「えっ……?」
聞き慣れてはいるものの、思ってもみなかった声にユリアは慌てて立ち上がった。
駅前広場のロータリーを足場にして、白と青のローブに身を包んだ魔法使いのヘイゼル・エルマークが悠然とポーズを決めていた。
「エルマーク様? どうして貴方がここに……」
「決まってるじゃない。貴方を苛める為よ♪」
ヘイゼルが口元に手を当てて楽しそうに言い切るのと同時に、ユリアの両足に実験体の触手が巻きついた。
さっきよりも格段にスピードと威力が上がっている。
判断しながらも何とか触手を振り払おうとしたが、まったく効果がない。むちゃくちゃに両手を振り回したので、さらに道路の両側の建物が破壊されただけだった。
「あらあら。パンツ丸見えじゃない。はしたないわね。しかも道路上の車もぜーン部潰しちゃってるし。悪い子にはお仕置きが必要ね♪」
嬉々とした声でエルマークが言うのと同時に。両足に絡んだ触手がスカートの奥へと向かって突撃した。純白の下着越しにその先端が秘部に接触し、ユリアは思わず喘ぎ声を上げる。
「エ、エルマーク様……何を……」
「言ったじゃない。貴方を苛めるって」
触手の一本が何度も何度も下着越しに責めたてる。悪夢としか表現のしようがない快感が全身を貫き、ユリアは我慢できずに何度も声を上げる。
「うあっ……。ち、ちょっと止めて! 世界中に見られてるのにこんな事をするなんて……ああっ!」
「見られている」と思うと、到底我慢できる状態ではなかった。しかし、その背徳感すらも快楽に転じて、ユリアの大事な部分を濡らしていく。
たまりかねて、巨大化したユリアは思い切り転がった。スカートが思い切りまくれた状態のままで周囲ビルや住宅を思い切り破壊する。断ち切られた電線が火花を散らし、巻き込まれた車が爆発炎上する。それでもユリアは女としての本能に逆らえず、喘いでいた。
「もう止めて……。めちゃめちゃになっちゃう……。ただでさえ感じ易いのに。あっ……くっ……凄い……このままイキそう……」
既に下着はぐしょ濡れだった。羞恥心と快楽が無い混ぜになった想像もつかない精神状態に陥った巨大少女は、立ち上がることすら出来ずもがき続ける。
「いいざまね。何度も私の邪魔をした報いよ」
瓦礫を踏み潰しながら、巨大化したヘイゼルが歩いてきた。空中にいる謙吾の姿には気づいたようだったが、無視してユリアに話しかける。
「邪魔……?」
「私の作った可愛い試作体を何度も破壊してくれたじゃない。どれだけ悔しかったか、分かる?」
「それは……。エルマーク様が悪いんじゃないですか! 作っては暴走させるから始末しただけです!」
「失敗は科学の進歩につきものよ。私にしてみれば我が子みたいなものなんだから」
「そんな勝手な理屈、通りません!」
「貴方はどうやら今の立場が分かってないようね。まだまだお仕置きしてあげる♪」
突然、触手が全て離れた。一瞬、安堵の息を漏らしたユリアだったが、逃げる余裕はなかった。今度はヘイゼルに両手を掴まれて無理やり起こされたからである。
「私より小さいくせに胸とかは大きいんだから妬けるわね。抱くんだったら貴方の方がいいってみんな言ってるのよ」
「そ、そんな事言われても……」
「問答無用!」
自分から言っておいて「問答無用」も何もあったものではないが、ヘイゼルはユリアを近くにあった高層マンションに思い切り叩きつけた。瓦礫を増やしながら踏み留まろうとしたユリアだったが敵わず、背中で建物を破壊させてしまう。そこに正面から蹴りが飛んできたので、両腕でガードしたが……。まったくの無駄に終わり、その衝撃でマンションを崩壊させながら、まだ壊していない鉄道の高架線の上に倒れてしまった。高架線が両断され、電車も巻き込まれて派手に破壊される。
「どうなってるの……?」
もやしのように細いヘイゼルの力が増している事に気づいて、ユリアは混乱していた。もしかすると、一時的に肉体を魔法で強化しているのかもしれない。それならば時間切れまで逃げるしか方法は無かったが……。
立ち上がろうとした瞬間に触手が足に絡みつき、再び高架線の上に倒されてしまった。
「実験体が健在なのを忘れたかしら? らしくないわね」
住宅やマンションを派手に壊しながらヘイゼルが悠然と歩いてきた。彼女もまた破壊行為を楽しんでいるのか、無傷だった周囲はめちゃめちゃになっている始末だった。
「くっ……。負けないから!」
「そんな顔をされるとどうしても苛めたくなるわね。絶対に許さないんだから♪」
ヘイゼルの顔に歪んだ笑みが浮かんだ。その笑みにユリアは恐怖を覚えたが、触手に足を掴まれては何も出来ない。
「な、何をする気!」
「とってもいいこと。これを使って遊んであげる♪」
そう言いながらヘイゼルが掴み上げたのはも高架線から脱線して道路に叩きつけられた電車の一部だった。何をするのかすぐに想像がついたユリアは慌てて逃れようとしたが、かえってスカートがまくれ上がってしまう。ぐっしょりと濡れたパンツが丸見えになってしまったが、ヘイゼルはそこに電車を押し当てる。
「あっ……! 止めて止めて!」
「止めないわよ。すごーく面白そうだから♪」
「だから、世界中に見られてるのにどうして……ああ! 駄目! 十分に感じてるのにそんな……恥ずかしい……」
「また濡れてきたわね。さすがに若いわね♪ 幾らでも出てきそう。瓦礫の上にまでこぼれそう」
「なんで、なんでこんな目に遭わないといけないのよ……」
「ヒロインはピンチに陥るのがお約束よ♪」
「そんなの知るわけないじゃ……うっ! そんなに中まで挿れないでよ! 妊娠しちゃう……」
初めて経験するような愉悦と背徳感から、ユリアの心は完全に乱れていた。唇から紡がれるのは最早喘ぎ声が中心で、戦うどころではなかった。
それでも、何とか抵抗しようと体をよじったり腕を振り回したりしているものの、巨大化しているため周囲の建物が派手に破壊されだけで何の効果もなかった。
「どんな気分? 巨大化してこんな事をしてると」
「とっても気持ちいい……わけないじゃない!」
「でも盛大に建物を壊して、こんなに恥ずかしい姿を見せびらかして……。楽しいでしょう? ほら、これでどう?」
「ああっ!た、楽しいわけ……ないじゃない! 壊したら元に戻さないといけないのよ」
「貴方なら魔法で一発でしょう?」
そう言いながら、ヘイゼルは壊された電車でユリアの下半身を徹底的にいたぶる。漏れ出た愛液が電車すらも汚し始めたが、ユリア自身は止めることすら出来ない。
電車の高架線をベッドの代わりにして、ただ羞恥に耐えるだけだった。
い、嫌……。こんなの。でもこのままではどうにもならないし。せめて謙吾がどうにかしてくれれば……。
何も口を挟んでこない少年のことを恨みながらも、ヘイゼルに嬲られ続けるのだった。

……
やっぱりユリアのように強気な女の子は虐めると楽しいですね。ついでに街は壊しまくりですけどね。

次の更新は当初の予定通り来週です。久しぶりに依頼したイラストを掲載しますのでお楽しみに。

荒事始末人ユリアの仕事(2)

更新間隔が飛びまくってすみません……。ずーっと博麗神社例大祭合わせで「幻想郷文々。日和」を制作していました。シナリオとスクリプトを同時に担当したので大変でした……。
でもまあ何とか完成したので、SSの第2話いきます。

……
意外と厄介そうね……。エルマーク様特製の試作体だから一筋縄ではいかないと思うけど。
巨大なパンプスで通りのアスファルトを陥没させながら、ユリアは気を引き締めた。
だいたいどーしてただの植物がこんな怪物になるのよ、ったくもう。巨大化能力と次元跳躍能力を持つなんて勘弁してほしいわね。
一見すると巨大試作体は毒々しい植物を生物にしたような不気味な形をしていた。触手代わりの蔓を十本以上自在に揺らし、次々に建物を壊滅させている。頭部に当たる部分には薔薇に似た巨大な花があり、意志を持つかのように周囲の様子を伺っていた。
こっちの存在にも気づいてるわね。とりあえずどうやって攻める?エルマーク様の作品だから迂闊に手を出すと……。
一瞬、空気を切り裂く音が耳に届いた。その意味を判断するよりも早く、ユリアの両足に触手が絡みつき、思い切り引きずり倒されていた。
「あっ……!」
悲鳴を上げる間すらも無かった。巨大化した少女魔法使いは背中から地面に倒され、大通りにあった車などをまとめて潰してしまった。伸ばした腕もまた周囲の建物を簡単に破壊し、派手に埃が舞い上がる。
それでも試作体の攻撃は続いた。掴まえた<獲物>を弱体化させるかのように左右に振り回し始めたからだった。ユリアの体重1000トンを超える巨体が軽々と宙に舞っては叩きつけられ、そのたびに激しい振動が戦場となった街を揺さぶる。
「ち、ちょっと何するのよ!」
魔法のお陰で痛くないとはいえ、自分の身体で街を破壊してしまう罪悪感は隠せるものではなかった。気が付くと周囲は瓦礫の山と化しており、スカートの下ではマンションのなれの果てを思い切り潰している始末だった。
「おーい! 大丈夫か~?」
反撃手段を考えるよりも早く、謙吾の脳天気な声が耳に届く。
「世界中が心配してるぞ。弱過ぎるってさ」
「馬鹿言わないでよ。まだ全然本気出してないんだから。ちょっと油断しただけじゃない」
「それより地面が揺れて揺れて駄目だ。何とかしてくれ!」
「うっさいわね。これならどう!?」
ユリアが軽く指を動かすのと同時に。謙吾の身体はふわりと宙に浮いた。突然地面が無くなり、さすがの少年も非常に慌てたが、落ちるようなことはなかった。
「ど、どーなってるんだよ! これ……」
地上20メートルぐらいまでの高さまで運ばれたところで、謙吾はようやく声を上げた。巨大化したまま地面に座り込むユリアを正面から見る形となる。
「面倒だからちょっとした魔法を使っただけ。感謝しなさいよ」
「落ちたりしないよな?」
「魔法の力を使ってるから平気♪」
「お前凄いんだな……」
「荒事始末人だから当然よ。あ、今の状態のまま自由に動けるから好きに中継していいわよ」
「ああ。……好きにね、好きに……」
正面に回り込んでいることもあり、ユリアのスカートの奥をスマホのカメラ越しにガン見していた謙吾だったが、少しだけ反省した。巨大化した少女のパンチラは絶景以外何物でも無かったのだが。
「さてと、ここから本気でいくわよ! これでどーかしら!」
謙吾の相手を済ませて、ユリアはようやく反撃に転じた。試作体が動きを止めたのをいいことに、その本体目掛けて火炎魔法を放つ。植物ならば炎に弱い。お約束の攻撃に思えたのだが……。
炎は試作体に吸収されて消えた。
「え?」
一瞬、両足に絡んだ蔓が緩んだのですかさず脱出したものの、炎を吸収されては困惑するしかなかった。
「おいおい。どーなってるんだ?」
「魔力を吸収する能力まであるみたい。こーなったら肉弾戦しかないわね」
「大丈夫かよ」
「肉体は最後の武器ってよく言うじゃない!」
立ち上がりながら言い切ると、すぐにマントを翻して新たな行動に出る。足元の瓦礫やまだ破壊されていない建物をまとめて蹴散らしながら走り出すと、高圧電線塔に両手をかけたからである。
「これいい武器になりそう。えーいっ!」
平然と言いながら一気に引き抜く。電線がまとめて千切れて派手に火花を散らし、ユリアはびっくりしたような表情を浮かべる。
「おい! 大丈夫か!?」
「へーきよ。ちょっとびっくりしただけ! これ借りるから!」
「電線塔は借り物じゃねえ!」
謙吾の突っ込みを無視して、ユリアは電線塔を両手で持った。
もはや手段を選んでいる場合ではなかった。
でも、こうやって壊してしまうのって少しだけ楽しいかも。どーせ魔法で元に戻せるんだから……。
そんなことを思いながら、電線塔を武器に試作体に逆襲していく。足元で派手に住宅地を蹴散らしながら間合いを詰めると、蔓による攻撃をかわしながら電線塔で殴りつける。少し怯んだのを見ると、ミニスカートを豪快に翻して蹴りを浴びせ、さらに拳を叩き込む。
「少しは効いてるようね」
属性魔法による攻撃は全て吸収されてしまう可能性が高かったが、さすがに物理攻撃まで耐えられるようではなかった。
「だったら……。これはどうかしら!?」
片手で持っていた電線塔を思い切り叩きつけて、ついにバラバラにしてしまうと、ユリアは試作体を両手で抱え込んだ。謙吾が驚くよりも早く、力まかせに思いきり投げ飛ばす。その先にあったのは……まだまったく壊されていない中心街だった。
「おい……」
次の瞬間、最大級の破壊劇が街の真ん中で発生した。全長50メートルはあるビオランテもどきが建物という建物を破壊しながら転がり、高層マンションを根本から倒してやっと止まったからである。大通りにあった車は全て破壊されて一部が爆発し、破壊された建物からも煙が上がり始める。まるで爆撃でも受けたかのような惨状だった。
「思い切り壊してるじゃねーか!」
「仕方ないじゃない。こんな化物相手に犠牲はつきものでしょう。だから住民は逃がしたんじゃない」
「だからといって街を破壊するな!」
「無茶言わないで!」
大声で反論しながら、ユリアもまた中心街に足を踏み入れた。邪魔な建物は無造作に足で蹴散らし、時には蹴飛ばして突き進む。
「障害物が多すぎるわね……。えいっ!」
車が全てスクラップになり、歩道橋も道路に落下した交差点に足場を置いていたユリアだったが、角に立つビルが邪魔だったこともあり、肘打ちだけで壊してしまった。標的となったビルは簡単に倒壊し、周囲の建物を思い切り巻き込む。
「お前、怪獣みたいだって世界中で大騒ぎになってるぜ。でも可愛いから許すってさ」
「あ、そう言ってもらえると嬉しいわね~」
「バカ言ってないでとっととビオランテもどきをどうにかしろ!」
「分かってるわよ! ……もっと壊したいのに」
物騒な本音を漏らした巨大少女魔法使いに、謙吾が返す言葉を見つけられないでいる内に。ユリアはマントを翻して試作体に攻撃を仕掛けた。蔓などを使って態勢を立て直そうとしているのを見ると力任せに殴りつけ、投げ飛ばしたからである。周囲の建物にも構わない猛攻だけに、さすがの試作体も少しは弱ってきたように見えたが、戦場となった街の惨状は目を覆わんばかりだった。
「意外と楽しいわね。こうやって壊しながら戦うのって」
「お前……。まさかわざとやってないか?」
「まさか。生命力が高いから少しずつ消耗させてるだけよ。こー見えても大変なんだから。えいっ!」
「だからビルを引き抜いて叩きつける奴がどこにいる!」
「武器がないんだから仕方ないじゃない。……あ、これいいかも」
謙吾の突っ込みを無視して、ユリアはさらにとんでもないものに手をかけた。それは大通りを跨ぐ鉄道の高架線だった。
「こんな乗り物に乗ってるのね……。ここの世界は。ちゃんと調べたいけど後回し。武器の代わり!」
「今度は電車かよ……」
もはや謙吾は突っ込む気にもなれなかったユリア自身は楽しそうだった。高架線を踏み潰したまま電車の編成を持ち上げると、まるで鞭のように振り回した挙句、試作体に叩きつけたからである。
「あーあ。簡単に壊れるじゃない……」
「当たり前だろ! とっとと決着つけろよ!」
「いいけど……。もっと遊んでから♪」
「本来の目的を見失ってるだろ?」
「でもあたしみたいな女の子が巨大化して大暴れしてる場面って絵になるでしょう?」
それは否定できなかった。というより、世界中にいる配信映像の受け手側も同意見だったからである。
「魔法で戻せるんだったいいんだけどな。しかし……」
「しかし?」
「うまい話には裏があるっていうのが、戦場カメラマンの親父の口癖なんだ」
「そう? 別に大したことない……」
ユリアがそこまで言った時だった。
いきなり、魔法による攻撃がユリアに命中した。

……

このシリーズは次回で完結の予定です。あくまでも予定です(終わらなくなることが度々あるので)。
次回の更新は来週、イラストを更新します。久しぶりに外部に依頼したイラストを掲載しますのでお楽しみに。
プロフィール

小笠原智広

Author:小笠原智広
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード