荒事始末人ユリアの仕事(4)

やっと完結編です。お待たせして申し訳ないです。

……

一方その頃。当の謙吾はカメラを回す反対の手で電話に出ていた。動画を中継するスマホとは別のスマホに着信があったからだった。
「だからなんでこんな時に電話してくんだクソ親父! 最高のチャンス逃すだろ!?」
電話してきたのは海外にいる父親だった。余程電波事情の悪い辺鄙な場所にいるのか、いまいち聞き取りづらい。
「……え? 男なら見てないで助けろ? どーやれっていうんだ!
巨大女ふたりにビオランテもどきまでいるんだぜ!」
「へ? 護符? 今持ってるけど……。それがあれば大丈夫? 一度だけなら願いは叶う? マジかよ……」
どうやら父親の横には別の誰かがいるらしい。年老いた女性の訛りの酷いフランス語と父親の話す日本語訛りのフランス語の会話が交じるので話の筋すらよく分からない。
親父またアフリカの奥地にでも行ってるんだな。フランス語が通じる場所にいるということは……。
「なに? その護符さえあれば助けられるって呪術師のばーさんが言ってる? どんな魔法も平気だから決断次第だ? んな事言われても……」
ユリアの劣勢は明らかだった。街を盛大に破壊しながらも、一方的に嬲られ、時には痴態すらも晒していたからである。
「そろそろ本番いってみる? 世界中に中継するのも面白いわね~」
破壊されつつある大型の駅を足場に、ヘイゼルはにんまりと笑った。
「この実験体にはね、色々な性技も教えてあるのよ♪ その実験を兼ねるのも悪くないわね。うふっ♪」
「そ、そんな……」
ユリアは駅前の大型ビルを背中で破壊したまま、大通りの上に座り込んでいた。体力も魔力も消耗して、動きたくても動けなかった。格闘も得意な魔法使いといえど、両方を失っては最早無力な少女でしかなかった。
「さあ、やっておしまい!」
まるで悪の女幹部のようなヘイゼルの台詞に合わせて、実験体が触手をくゆらせながら動き始めた。自由に動けることを悟ったのだろうか? その動きは喜びに満ちているようにさえ見えた。
「駄目! 来ないで! こんな所で公開処刑なんて真っ平ごめんなんだから……って、ああっ!」
通りを破壊しながら伸ばしていた足に触手が再び絡みついてきて、ユリアは恐怖のあまり声を上げた。今度こそ犯される! そう思うと抵抗することすら出来ない。
駄目……。もうどうにもならない。任務に失敗するどころか大事なものまで失ってしまう……。あたしって、こんなに非力だったの……?
思わず閉じた目に、涙が浮かんだ時だった。
「何をしてるんだ! ユリア! 立ち上がれ!」
突然、謙吾の声が耳元に届いた。
「この護符があれば力はすべて戻る! お前が全力を出せば勝てる相手だろ!」
「謙吾……」
「この護符、お前にやるぜ。大事に使えよ! それっ!」
体格差も忘れて投げられた小さな小さな護符を、ユリアは何とか右手で受け止めた。ゴマ粒以下の大きさだったが、なぜか力が戻ってくるのを感じる。
これは……。こっちの世界の魔法? まさか……。
複数の触手がユリアのスカートの奥へと迫る。あまり気持ち悪さに身悶えしながらも、少女魔法使いは少しずつ戦う気力を取り戻していく。
「ちなみに今、中継は切ってるぜ。これ以上痴態を晒させるわけにはいかないからな」
「……いいの?」
「話は後だ。仕事だろ、荒事始末人・ユリア!」
「……。うんっ! ありがとう! 謙吾!」
大きく頷いたユリアの笑顔は無邪気そのものだった。一瞬、謙吾は胸が高鳴るのを感じたが、すぐにその場から離れる。応援はしたかったが、巨大化した少女の巻き添えだけは御免だった。
これでいいんだ、これで。後は任せたぜ、ユリア。
中継再開の準備をしながら謙吾は心の中だけでつぶやいた。
一方、力を取り戻したユリアはすぐに反撃に出た。ヘイゼルが油断しきっているのを確かめながら、足に絡む触手を魔力で一気に叩き潰す。無属性の純粋な魔力は強力な物理攻撃に相当することもあって、意外とあっさりと軛は無くなる。
「え?」
ヘイゼルが異変に気づいた時には遅かった。立ち上がったユリアがビオランテもどきの実験体へと正面から戦いを挑んでいたからだった。
「えーいっ!」
掛け声と共に、ミニスカートを豪快に翻してキックを浴びせる。純粋な魔力が込められた一撃に、実験体が大きく揺らぐ。それでもユリアは何度もキックを食らわせると、巨大化しているのをいいことに手近にあったビルを引き抜いた。撮影を再開した謙吾があっと言う間もなく、実験体に叩きつけて簡単にバラバラにしてしまった。
「えげつないな……。幾らなんでも」
「仕方ないでしょう。それに巨大化してるんだから利用しないと損じゃない」
「そういう問題か……?」
空中の謙吾は改めて辺りを見回した。巨大化したユリアとヘイゼル、そして実験体の大暴れによって街並みは原型を留めないほどに壊滅し、所々から黒煙が吹き上がり火災まで発生している始末だった。
それでも、ユリアは大暴れを止めなかった。
まだ無傷で残っていた建物を巻き込みながら実験体を投げ飛ばしたり、ビルなどを叩きつけたからである。全ての攻撃に魔力が込められていることもあり、さすがのビオランテもどきも確実に弱っていく。
「くっ……。こうなったら……」
完全に追い込んだはずのユリアの逆襲に、魔法使いのヘイゼルは打つ手が見つけられないでいるようだった。実験体はユリアの攻撃に耐えられるはずだったが、大量の魔力を吸収しきれずオーバーフローを起こしかけている。このままでは討ち取られるのは確実だった。
となると打つ手は一つ……。
「なっ……」
突然、巨大化したヘイゼルがこちらに向かってくることに気づいて謙吾は慌てた。何を狙っているのかは分からないが、逃げる方法が思いつかない。頼みの綱のユリアはこっちに気づいていない……。
何もできないまま、謙吾はヘイゼルの巨大な手の中に握られる形となった。力は込められていなかったが、状況は最悪だった。
「ユリア、これを見なさい! あなたを助けた男の子は私の手の中にあるわよ! 大人しくしなさい!」
すっかり弱った実験体に止めを刺そうとしていたユリアの動きが止まった。鋭い視線でヘイゼルを見つめると、両手をだらりと下げる。
「そう、それでいいのよ。それで。迂闊ね。この子の存在を忘れるなんて」
ユリアは無言だった。上空の風に綺麗な髪を揺らしながら、ヘイゼルを見つめるだけだった。
「条件は簡単。あなたが負けを認めて元の世界に戻ること♪ そうしたら解放してあげる」
「もし拒否したら?」
ようやくユリアが口を開いた。低く、感情のこもらない別人のような声だった。
「そうね。この子を食べてあげる♪ 今なら簡単じゃない」
「そう。勝手にするといいわ」
「なっ……!」
言葉に詰まったのはヘイゼルだけではなかった。捕らえられた謙吾もまた、ユリアの言葉に顔色を失った。
「どうせさっき会ったばかりの他人なんだから。どうぞご勝手に」
「本当にそれでいいの? 私が食べたらこの子は間違いなく死ぬわよ。本当にいいの!?」
「荒事始末に犠牲はつきものよ」
言い切って、ユリアは目線を外した。「見捨てられた」と思った謙吾は絶望のあまり、意識が遠くなる。
「ちょっと、なんでそうなるのよ! 絶対に犠牲を出さないのがあなたのポリシーでしょう!? それなのに……」
「犠牲は出すわ。……但し、それは罪を犯した者のみ!」
ユリアの言葉を謙吾が全て理解するよりも早く。少女魔法使いが風のような速さでタックルしてきた。衝撃で謙吾は空中に投げ出されたが、すぐにやわらかなクッションに受け止められる。
「えっ……?」
「もう大丈夫。安心して♪」
謙吾を受け止めたクッションの正体は巨大化したユリアの両手だった。そのまま、胸元まで引き寄せられる。程よくふくらんだ胸を目の前で見る形となり、謙吾は自分が天国にいるのか地獄にいるのか一瞬わからなくなる。
「どうしてもヘイゼル様の気を逸らす必要があったのよ。実験体の制御を乗っ取るなんて大魔法、発動まで時間がかかるから」
「え? ヘイゼルは……?」
「決まってるじゃない。罰を受けてるわよ。ほら」
ユリアに言われるまま、その方向を見た謙吾だったが、次の瞬間唖然とした。実験体の生みの親であるヘイゼルが、当の実験体に好き勝手に嬲られていたからだった。
「ああっ……! 駄目! もうっ……巨大化してるのにイキそう! 誰か止めて! ……止めなくてもいいわっ! このまま! このまま!」
「……」
「どうする? 全世界に中継するなら手伝うわよ♪」
「俺のアカウントが永久に停止されるから止めておく」

こうして。異世界から来た謎の巨大生物と魔法使いによる大騒動は、荒事始末人・ユリアの活躍によって解決した。
ヘイゼルは散々痴態を晒した後に実験体と共に元の世界に送還され、破壊された街はユリアの魔法によって完璧に復元された。
「お前、凄いんだな」
元に戻った街並みをユリアの肩から眺めながら、謙吾は大きく息をついた。
「だから荒事始末人が出来るのよ。ま、当然よね」
「大変じゃないのか?」
「大変に決まってるじゃない。でも……」
「でも?」
「こー見えても楽しいのよ。この仕事♪ 今回は巨大化して大暴れ出来たから楽しかった~。またやろうかな♪」
「遊びで街を壊滅させるな!」
「終わったら元に戻すからいいじゃない。あ、だったら今から遊んでいこうっと。日没までには元に戻すからいいでしょう?」
「馬鹿、止めろ!」
謙吾の制止も虚しく、大きな街が巨大化したユリアの大暴れによって再び壊滅したのはわずか一時間後のことだった。
ちなみにその模様も全世界に中継されており、世界中のその手の趣味の人たちを喜ばせたのは言うまでもない。

……
次に書く話は未定です。リクエストがあけば受けますが、間隔が空くと忘れてしまうので受け付けるのは「先着一名様」とさせてもらいます。また、破壊系巨大娘のお話に限定させてもらいますのでその点もご了承願います。

次回は来週更新します。久しぶりにイラストを掲載しますのでお楽しみに。

荒事始末人ユリアの仕事(3)

というわけで、「荒事始末人ユリア」の第3話です。今回は「巨大ヒロインピンチ」編です。まあ、そんなに過激な内容ではないんですけどね……。それではどうぞ。

……
その攻撃を、ユリアはまったく予想していなかった。とっさに防御はしたものの衝撃自体は打ち消せず、破壊された大通りに尻もちをつく。
「痛ーい! なんで魔法弾が飛んでくるのよ……」
「私が攻撃したからに決まってるじゃない」
「えっ……?」
聞き慣れてはいるものの、思ってもみなかった声にユリアは慌てて立ち上がった。
駅前広場のロータリーを足場にして、白と青のローブに身を包んだ魔法使いのヘイゼル・エルマークが悠然とポーズを決めていた。
「エルマーク様? どうして貴方がここに……」
「決まってるじゃない。貴方を苛める為よ♪」
ヘイゼルが口元に手を当てて楽しそうに言い切るのと同時に、ユリアの両足に実験体の触手が巻きついた。
さっきよりも格段にスピードと威力が上がっている。
判断しながらも何とか触手を振り払おうとしたが、まったく効果がない。むちゃくちゃに両手を振り回したので、さらに道路の両側の建物が破壊されただけだった。
「あらあら。パンツ丸見えじゃない。はしたないわね。しかも道路上の車もぜーン部潰しちゃってるし。悪い子にはお仕置きが必要ね♪」
嬉々とした声でエルマークが言うのと同時に。両足に絡んだ触手がスカートの奥へと向かって突撃した。純白の下着越しにその先端が秘部に接触し、ユリアは思わず喘ぎ声を上げる。
「エ、エルマーク様……何を……」
「言ったじゃない。貴方を苛めるって」
触手の一本が何度も何度も下着越しに責めたてる。悪夢としか表現のしようがない快感が全身を貫き、ユリアは我慢できずに何度も声を上げる。
「うあっ……。ち、ちょっと止めて! 世界中に見られてるのにこんな事をするなんて……ああっ!」
「見られている」と思うと、到底我慢できる状態ではなかった。しかし、その背徳感すらも快楽に転じて、ユリアの大事な部分を濡らしていく。
たまりかねて、巨大化したユリアは思い切り転がった。スカートが思い切りまくれた状態のままで周囲ビルや住宅を思い切り破壊する。断ち切られた電線が火花を散らし、巻き込まれた車が爆発炎上する。それでもユリアは女としての本能に逆らえず、喘いでいた。
「もう止めて……。めちゃめちゃになっちゃう……。ただでさえ感じ易いのに。あっ……くっ……凄い……このままイキそう……」
既に下着はぐしょ濡れだった。羞恥心と快楽が無い混ぜになった想像もつかない精神状態に陥った巨大少女は、立ち上がることすら出来ずもがき続ける。
「いいざまね。何度も私の邪魔をした報いよ」
瓦礫を踏み潰しながら、巨大化したヘイゼルが歩いてきた。空中にいる謙吾の姿には気づいたようだったが、無視してユリアに話しかける。
「邪魔……?」
「私の作った可愛い試作体を何度も破壊してくれたじゃない。どれだけ悔しかったか、分かる?」
「それは……。エルマーク様が悪いんじゃないですか! 作っては暴走させるから始末しただけです!」
「失敗は科学の進歩につきものよ。私にしてみれば我が子みたいなものなんだから」
「そんな勝手な理屈、通りません!」
「貴方はどうやら今の立場が分かってないようね。まだまだお仕置きしてあげる♪」
突然、触手が全て離れた。一瞬、安堵の息を漏らしたユリアだったが、逃げる余裕はなかった。今度はヘイゼルに両手を掴まれて無理やり起こされたからである。
「私より小さいくせに胸とかは大きいんだから妬けるわね。抱くんだったら貴方の方がいいってみんな言ってるのよ」
「そ、そんな事言われても……」
「問答無用!」
自分から言っておいて「問答無用」も何もあったものではないが、ヘイゼルはユリアを近くにあった高層マンションに思い切り叩きつけた。瓦礫を増やしながら踏み留まろうとしたユリアだったが敵わず、背中で建物を破壊させてしまう。そこに正面から蹴りが飛んできたので、両腕でガードしたが……。まったくの無駄に終わり、その衝撃でマンションを崩壊させながら、まだ壊していない鉄道の高架線の上に倒れてしまった。高架線が両断され、電車も巻き込まれて派手に破壊される。
「どうなってるの……?」
もやしのように細いヘイゼルの力が増している事に気づいて、ユリアは混乱していた。もしかすると、一時的に肉体を魔法で強化しているのかもしれない。それならば時間切れまで逃げるしか方法は無かったが……。
立ち上がろうとした瞬間に触手が足に絡みつき、再び高架線の上に倒されてしまった。
「実験体が健在なのを忘れたかしら? らしくないわね」
住宅やマンションを派手に壊しながらヘイゼルが悠然と歩いてきた。彼女もまた破壊行為を楽しんでいるのか、無傷だった周囲はめちゃめちゃになっている始末だった。
「くっ……。負けないから!」
「そんな顔をされるとどうしても苛めたくなるわね。絶対に許さないんだから♪」
ヘイゼルの顔に歪んだ笑みが浮かんだ。その笑みにユリアは恐怖を覚えたが、触手に足を掴まれては何も出来ない。
「な、何をする気!」
「とってもいいこと。これを使って遊んであげる♪」
そう言いながらヘイゼルが掴み上げたのはも高架線から脱線して道路に叩きつけられた電車の一部だった。何をするのかすぐに想像がついたユリアは慌てて逃れようとしたが、かえってスカートがまくれ上がってしまう。ぐっしょりと濡れたパンツが丸見えになってしまったが、ヘイゼルはそこに電車を押し当てる。
「あっ……! 止めて止めて!」
「止めないわよ。すごーく面白そうだから♪」
「だから、世界中に見られてるのにどうして……ああ! 駄目! 十分に感じてるのにそんな……恥ずかしい……」
「また濡れてきたわね。さすがに若いわね♪ 幾らでも出てきそう。瓦礫の上にまでこぼれそう」
「なんで、なんでこんな目に遭わないといけないのよ……」
「ヒロインはピンチに陥るのがお約束よ♪」
「そんなの知るわけないじゃ……うっ! そんなに中まで挿れないでよ! 妊娠しちゃう……」
初めて経験するような愉悦と背徳感から、ユリアの心は完全に乱れていた。唇から紡がれるのは最早喘ぎ声が中心で、戦うどころではなかった。
それでも、何とか抵抗しようと体をよじったり腕を振り回したりしているものの、巨大化しているため周囲の建物が派手に破壊されだけで何の効果もなかった。
「どんな気分? 巨大化してこんな事をしてると」
「とっても気持ちいい……わけないじゃない!」
「でも盛大に建物を壊して、こんなに恥ずかしい姿を見せびらかして……。楽しいでしょう? ほら、これでどう?」
「ああっ!た、楽しいわけ……ないじゃない! 壊したら元に戻さないといけないのよ」
「貴方なら魔法で一発でしょう?」
そう言いながら、ヘイゼルは壊された電車でユリアの下半身を徹底的にいたぶる。漏れ出た愛液が電車すらも汚し始めたが、ユリア自身は止めることすら出来ない。
電車の高架線をベッドの代わりにして、ただ羞恥に耐えるだけだった。
い、嫌……。こんなの。でもこのままではどうにもならないし。せめて謙吾がどうにかしてくれれば……。
何も口を挟んでこない少年のことを恨みながらも、ヘイゼルに嬲られ続けるのだった。

……
やっぱりユリアのように強気な女の子は虐めると楽しいですね。ついでに街は壊しまくりですけどね。

次の更新は当初の予定通り来週です。久しぶりに依頼したイラストを掲載しますのでお楽しみに。

荒事始末人ユリアの仕事(2)

更新間隔が飛びまくってすみません……。ずーっと博麗神社例大祭合わせで「幻想郷文々。日和」を制作していました。シナリオとスクリプトを同時に担当したので大変でした……。
でもまあ何とか完成したので、SSの第2話いきます。

……
意外と厄介そうね……。エルマーク様特製の試作体だから一筋縄ではいかないと思うけど。
巨大なパンプスで通りのアスファルトを陥没させながら、ユリアは気を引き締めた。
だいたいどーしてただの植物がこんな怪物になるのよ、ったくもう。巨大化能力と次元跳躍能力を持つなんて勘弁してほしいわね。
一見すると巨大試作体は毒々しい植物を生物にしたような不気味な形をしていた。触手代わりの蔓を十本以上自在に揺らし、次々に建物を壊滅させている。頭部に当たる部分には薔薇に似た巨大な花があり、意志を持つかのように周囲の様子を伺っていた。
こっちの存在にも気づいてるわね。とりあえずどうやって攻める?エルマーク様の作品だから迂闊に手を出すと……。
一瞬、空気を切り裂く音が耳に届いた。その意味を判断するよりも早く、ユリアの両足に触手が絡みつき、思い切り引きずり倒されていた。
「あっ……!」
悲鳴を上げる間すらも無かった。巨大化した少女魔法使いは背中から地面に倒され、大通りにあった車などをまとめて潰してしまった。伸ばした腕もまた周囲の建物を簡単に破壊し、派手に埃が舞い上がる。
それでも試作体の攻撃は続いた。掴まえた<獲物>を弱体化させるかのように左右に振り回し始めたからだった。ユリアの体重1000トンを超える巨体が軽々と宙に舞っては叩きつけられ、そのたびに激しい振動が戦場となった街を揺さぶる。
「ち、ちょっと何するのよ!」
魔法のお陰で痛くないとはいえ、自分の身体で街を破壊してしまう罪悪感は隠せるものではなかった。気が付くと周囲は瓦礫の山と化しており、スカートの下ではマンションのなれの果てを思い切り潰している始末だった。
「おーい! 大丈夫か~?」
反撃手段を考えるよりも早く、謙吾の脳天気な声が耳に届く。
「世界中が心配してるぞ。弱過ぎるってさ」
「馬鹿言わないでよ。まだ全然本気出してないんだから。ちょっと油断しただけじゃない」
「それより地面が揺れて揺れて駄目だ。何とかしてくれ!」
「うっさいわね。これならどう!?」
ユリアが軽く指を動かすのと同時に。謙吾の身体はふわりと宙に浮いた。突然地面が無くなり、さすがの少年も非常に慌てたが、落ちるようなことはなかった。
「ど、どーなってるんだよ! これ……」
地上20メートルぐらいまでの高さまで運ばれたところで、謙吾はようやく声を上げた。巨大化したまま地面に座り込むユリアを正面から見る形となる。
「面倒だからちょっとした魔法を使っただけ。感謝しなさいよ」
「落ちたりしないよな?」
「魔法の力を使ってるから平気♪」
「お前凄いんだな……」
「荒事始末人だから当然よ。あ、今の状態のまま自由に動けるから好きに中継していいわよ」
「ああ。……好きにね、好きに……」
正面に回り込んでいることもあり、ユリアのスカートの奥をスマホのカメラ越しにガン見していた謙吾だったが、少しだけ反省した。巨大化した少女のパンチラは絶景以外何物でも無かったのだが。
「さてと、ここから本気でいくわよ! これでどーかしら!」
謙吾の相手を済ませて、ユリアはようやく反撃に転じた。試作体が動きを止めたのをいいことに、その本体目掛けて火炎魔法を放つ。植物ならば炎に弱い。お約束の攻撃に思えたのだが……。
炎は試作体に吸収されて消えた。
「え?」
一瞬、両足に絡んだ蔓が緩んだのですかさず脱出したものの、炎を吸収されては困惑するしかなかった。
「おいおい。どーなってるんだ?」
「魔力を吸収する能力まであるみたい。こーなったら肉弾戦しかないわね」
「大丈夫かよ」
「肉体は最後の武器ってよく言うじゃない!」
立ち上がりながら言い切ると、すぐにマントを翻して新たな行動に出る。足元の瓦礫やまだ破壊されていない建物をまとめて蹴散らしながら走り出すと、高圧電線塔に両手をかけたからである。
「これいい武器になりそう。えーいっ!」
平然と言いながら一気に引き抜く。電線がまとめて千切れて派手に火花を散らし、ユリアはびっくりしたような表情を浮かべる。
「おい! 大丈夫か!?」
「へーきよ。ちょっとびっくりしただけ! これ借りるから!」
「電線塔は借り物じゃねえ!」
謙吾の突っ込みを無視して、ユリアは電線塔を両手で持った。
もはや手段を選んでいる場合ではなかった。
でも、こうやって壊してしまうのって少しだけ楽しいかも。どーせ魔法で元に戻せるんだから……。
そんなことを思いながら、電線塔を武器に試作体に逆襲していく。足元で派手に住宅地を蹴散らしながら間合いを詰めると、蔓による攻撃をかわしながら電線塔で殴りつける。少し怯んだのを見ると、ミニスカートを豪快に翻して蹴りを浴びせ、さらに拳を叩き込む。
「少しは効いてるようね」
属性魔法による攻撃は全て吸収されてしまう可能性が高かったが、さすがに物理攻撃まで耐えられるようではなかった。
「だったら……。これはどうかしら!?」
片手で持っていた電線塔を思い切り叩きつけて、ついにバラバラにしてしまうと、ユリアは試作体を両手で抱え込んだ。謙吾が驚くよりも早く、力まかせに思いきり投げ飛ばす。その先にあったのは……まだまったく壊されていない中心街だった。
「おい……」
次の瞬間、最大級の破壊劇が街の真ん中で発生した。全長50メートルはあるビオランテもどきが建物という建物を破壊しながら転がり、高層マンションを根本から倒してやっと止まったからである。大通りにあった車は全て破壊されて一部が爆発し、破壊された建物からも煙が上がり始める。まるで爆撃でも受けたかのような惨状だった。
「思い切り壊してるじゃねーか!」
「仕方ないじゃない。こんな化物相手に犠牲はつきものでしょう。だから住民は逃がしたんじゃない」
「だからといって街を破壊するな!」
「無茶言わないで!」
大声で反論しながら、ユリアもまた中心街に足を踏み入れた。邪魔な建物は無造作に足で蹴散らし、時には蹴飛ばして突き進む。
「障害物が多すぎるわね……。えいっ!」
車が全てスクラップになり、歩道橋も道路に落下した交差点に足場を置いていたユリアだったが、角に立つビルが邪魔だったこともあり、肘打ちだけで壊してしまった。標的となったビルは簡単に倒壊し、周囲の建物を思い切り巻き込む。
「お前、怪獣みたいだって世界中で大騒ぎになってるぜ。でも可愛いから許すってさ」
「あ、そう言ってもらえると嬉しいわね~」
「バカ言ってないでとっととビオランテもどきをどうにかしろ!」
「分かってるわよ! ……もっと壊したいのに」
物騒な本音を漏らした巨大少女魔法使いに、謙吾が返す言葉を見つけられないでいる内に。ユリアはマントを翻して試作体に攻撃を仕掛けた。蔓などを使って態勢を立て直そうとしているのを見ると力任せに殴りつけ、投げ飛ばしたからである。周囲の建物にも構わない猛攻だけに、さすがの試作体も少しは弱ってきたように見えたが、戦場となった街の惨状は目を覆わんばかりだった。
「意外と楽しいわね。こうやって壊しながら戦うのって」
「お前……。まさかわざとやってないか?」
「まさか。生命力が高いから少しずつ消耗させてるだけよ。こー見えても大変なんだから。えいっ!」
「だからビルを引き抜いて叩きつける奴がどこにいる!」
「武器がないんだから仕方ないじゃない。……あ、これいいかも」
謙吾の突っ込みを無視して、ユリアはさらにとんでもないものに手をかけた。それは大通りを跨ぐ鉄道の高架線だった。
「こんな乗り物に乗ってるのね……。ここの世界は。ちゃんと調べたいけど後回し。武器の代わり!」
「今度は電車かよ……」
もはや謙吾は突っ込む気にもなれなかったユリア自身は楽しそうだった。高架線を踏み潰したまま電車の編成を持ち上げると、まるで鞭のように振り回した挙句、試作体に叩きつけたからである。
「あーあ。簡単に壊れるじゃない……」
「当たり前だろ! とっとと決着つけろよ!」
「いいけど……。もっと遊んでから♪」
「本来の目的を見失ってるだろ?」
「でもあたしみたいな女の子が巨大化して大暴れしてる場面って絵になるでしょう?」
それは否定できなかった。というより、世界中にいる配信映像の受け手側も同意見だったからである。
「魔法で戻せるんだったいいんだけどな。しかし……」
「しかし?」
「うまい話には裏があるっていうのが、戦場カメラマンの親父の口癖なんだ」
「そう? 別に大したことない……」
ユリアがそこまで言った時だった。
いきなり、魔法による攻撃がユリアに命中した。

……

このシリーズは次回で完結の予定です。あくまでも予定です(終わらなくなることが度々あるので)。
次回の更新は来週、イラストを更新します。久しぶりに外部に依頼したイラストを掲載しますのでお楽しみに。

荒事始末人ユリアの仕事(1)

本当は来週辺りに更新する予定だったのですが、何とかまとまったので今週更新します。
神風様より以前頂いた「巨大な魔術師少女の大暴れ」というリクエストを元に書いて(描いて)みました。今までと同じではちょっと味気ないので少しだけストーリー性を強くしています。というわけで、今回は巨大化シーンはあるのですが、破壊シーンはありません。ただ、ユリアのイメージイラストを途中に入れましたのでまあ、ご覧になって下さい。

……
「なにー!? 試作体が逃げた!?」
王都・ラントスの中央にそびえ建つ王立魔法研究所に大導師の大声が響き渡る。
石と魔法造りの建物すらも震わせるその大声に、研究員たちは手を止めて肩をすくめる。
「ちょーっとだけ失敗したのよ~。まさかあんなに知恵がついているなんて思わなかったわ」
大導師の馬鹿声に、ヘイゼル・エルマークは平然と答える。魔法をベースとした技術革新に打ち込む若き女性魔法使いであり、<王国開闢以来の天才>とも言われている。ただ、その分常識はどこかに忘れてきたようだったが。
「で、試作体はどこに行った!?」
「次元を跳躍して近くの別世界に逃げたみたいね。まさか次元跳躍能力まで取得するなんて意外意外」
「さすがはエルマーク女史。ただの植物をベースにした試作体にそのような能力を持たせるとは。大したものだ」
「ふふ。お褒めいただいて光栄ですわ~。ついでに巨大化能力も身につけたみたいだけど、ま、これはおまけね」
「ふむ。巨大化能力も取得したか。どれぐらいまで大きくなる?」
「おおよそ50ダル(メートルと同じ)ぐらいかしらね」
「50ダルか。大したことはないな。まあ、異世界で暴れたとしても大きな街が一つ壊滅する程度で済む」
「そうですわね。というわけで、失礼します」
「後で始末書を提出するように。書き慣れてると思うが」
「了解~」
一応頭を下げてから、ヘイゼルは部屋から出て行った。その背中を見送った大導師は溜息をついて事務処理に戻り、研究員たちもそれぞれの作業を再開する。
しばらくの沈黙。
「50ダルに巨大化出来る試作体が異世界に逃げただと!? 今すぐユリアを呼べっ! 大至急だ!」
先程の何倍もの大声が、魔法研究所を揺さぶった。

ある春の日の午後、平和な街に出現したのは植物を怪獣にしたような異様な生き物だった。町外れに突如現れたかと思うと、周囲の全ての建物を蹂躙しながら突き進み、住民たちを混乱と恐怖に陥れたのだが……。
「やっぱりおかしいな。俺しかいないみたいだ」
最新型のスマホで辺りを動画撮影しながら、田崎謙吾(けんご)は疑念が膨らみつつあるのを感じていた。
自宅でのんびりしていたところ、緊急速報で<怪獣>襲来を知ったのは今から30分前。千載一遇のチャンスとばかりに外に出て動画撮影を始めたのが25分前。それ以来、誰の姿も見ていなかった。
「おっかしいなあ。こんなに早く避難できるわけねえのに。でも……逆に言えば最高だよな、この状況」
普通の高校生である謙吾の最大の趣味は、動画による実況だった。といってもまさに趣味の域を出ず、視聴者はほとんどいなかった。しかしそれが今では……。
「世界中が見てるみたいだ。だよな。ビオランテみたいな怪獣が街に来てるんだからな。しかも……」
耳を澄ませばかすかに異様な音が聞こえてくる。大きな建物が破壊されるような音、不気味な重い音、そして植物に移動の自由を与えたかのような有機的な音。
植物のような怪獣は確実に近づいているようだった。
「とりあえず危なくなったら逃げればいいか。でも、それじゃ映像が撮れないし……」
率直に言って、危険はほとんど感じていなかった。たた、とにかく世界中を驚かせる映像が撮りたかった。
まずは近づいてみるか。ちゃんと姿を見たわけじゃないし……。
「あーっ! なんでまだ人がいるのよ!」
突然、背後から聞き覚えのない少女の大声が飛んできて、謙吾は首をすくめた。
「あたしの魔法が効かないなんておかしいじゃない。ちゃんと説明して!」
「お、お前……。誰だ……よ?」
振り向いて、スマホの液晶画面にその姿を映して、謙吾は新種の動物を見たかのように目を見開いた。
一見すると、ファンタジーRPGの世界などから抜け出してきたようにしか見えなかった。
白いブラウスに紺色と赤を基調とした上着とスカート、背中で揺れる同色のマントという姿は冗談としか思えなかったが、黒茶色の瞳と短めの髪が、ボーイッシュな印象を与えて中和していた。
やや背の高い謙吾から見ると小柄だったが、かといって華奢には見えず、不思議な存在感があった。
「質問の前に名乗るのが礼儀でしょう?」
少女の声はよく通った。両手を腰に当て、目と眉を吊り上げていたが、それでも魅力は損なわれていなかった。
「分かったよ。俺は田崎謙吾。で、お前は?」
「ユリア・サルウィウス。荒事始末人のユリアよ。……で、どーしてあんたがここにいるのよ。あたしの魔法で全員強制的に避難させたはずなのに」
「魔法? ……まさか、ビオランテもどきと関係あるのか?」
「びおらんて? ……試作体のことね。あるわよ。大あり。あたしはあの試作体を始末しに来たの」
「話が見えないな。……でも、お前とのやり取りは撮影させてもらってるぜ。どうやら世界中で見てるみたいだ」
「そんなのはどうでもいいの。……あ、分かったわ。あんた、何か変な物身に着けてるでしょう? 例えば古臭いお守りとか」
「よく分かったな。戦場カメラマンの親父が海外から送ってきたやつだ。よく効くお守りらしいぜ」
「はあ。それが原因であたしの魔法が効かなかったのね。お守りはあたしが預かるからあんたも逃げなさいよ。逃がしてあげる」
「断る。全世界が注目してるんだ」
「馬鹿。命あってのなんとやらでしょう?」
「そもそもお前、あのビオランテもどきどうやって始末するんだ? ……魔法を使うのか?」
「魔法も使うけど、戦うのもありね。こー見えてもあたし、ちょっとは強いの」
言い切って、ユリアは笑った。無邪気という言葉がよく似合う可愛らしい笑顔に、謙吾は心が大きく動くのを感じる。
「でも問題はそこじゃないの。あんたは逃がしてあげるからお守りを渡しなさい。それがあるとあたしの魔法は効かないの」
「嫌だね。絶対嫌だ。死んでも嫌だ」
「強情なんだから……」
眉を吊り上げ、ユリアがそこまで言った時だった。
さっきよりもはるかに近くから建物が崩壊する音が聞こえてきたかと思うと、細かい埃が派手に舞い上がった。
「あーもう。近くまで来てるじゃない。こーなったら戦うしかないわね。いいこと? あたしは試作体の相手をするから絶対に近づいたら駄目よ。いい?」
「戦うって……どうやって?」
「簡単よ。あたしも大きくなればいいんだから」
謙吾が目を丸くしている間に。
ユリアはふわりとマントを翻して走り出した。数十メートル先のやや大きな交差点まで来ると立ち止まる。
「今からここは戦場になるわ! とっとと逃げなさいよ!」
「おい、まさかここで戦うつもりか?」
「当たり前じゃない。住民たちを避難させたのはその為なんだから。さあ、いくわよ。荒事始末人・ユリアの仕事ぶり見せてあげるから!」
自分に気合を入れるかのように宣言するのと同時に。魔法使いの少女は一気に巨大化した。身長5メートル、10メートル、20メートル、40メートル……。

街破壊巨大少女幻想102

これでいいわね。試作体の同じサイズなら戦えるはずだし。
30倍サイズまで巨大化して、ユリアは魔法を止めた。辺りを見回して、眉をひそめる。既に街の一部は巨大化した試作体によって破壊されており、今も住宅が密集する地域が襲われていた。
あたしも戦ったら街が壊滅しそう。でも魔法で元に戻せるし、好き放題にやってもいいわね。問題は……。
「謙吾~。何度も言うけど逃げなさいよ。あんたまで守ってる余裕なんかないんだから」
「馬鹿言うな。俺は戦場カメラマンの息子だぜ。こんな美味しい場面逃せるかっていうんだ!」
簡単な魔法をかけたので、少年の声はよく聞こえた。しかし、逃げる気がまったくないことに思わず溜息をつきたくなる。
「別に美味しくなんかないわ。ただの荒事始末よ」
「まさかミニスカで巨大化するなんて思わな……あ」
「そっちの狙いもあったのね。……別に気にしてないけど」
ユリアの淡白な返事に、謙吾は驚きのあまりスマホを落としそうになった。巨大化していることもあって、ユリアのスカートの奥にある白いものまで丸見えだったからである。
「お前少しは気にしろよ!」
「別に。見えたって減るものじゃないし~。スカートじゃないと動きにくいの」
「これを言うと世界中を敵に回しそうだが……。せめてスパッツでも穿け!」
「隙を見せて油断させるのも戦法のうち♪」
どうやら確信犯らしい。内心ではアドバイスが通らなかったことにホッとしながらも、謙吾はスマホ越しに撮影を続ける。
全世界が注目する中で、巨大少女魔法使いと巨大魔法試作体の対決が始まろうとしていた。

……
ユリアのモデルは、「スターオーシャンセカンドストーリー」のヒロイン・レナです。外見だけでなく魔法使いながらなぜか殴り攻撃が得意という設定も好きで、参考にさせてもらいました。そんなわけで、ユリアも魔法使いながら格闘もやります。ここだけの話、キャラデザはとっても楽しかったです。気に入ってもらえれば何よりです。

次回の更新は来週を予定しています。久しぶりのイラストですのでお楽しみに。

続・過去からの挑戦者(4・完)

やっと完結編です。なんとか年内に間に合いました……。ちなみに冬コミは私自身は不参加ですので、ご了承願います。1/31のコミティアには参加するんですけどね。

……
その時、何が起きたのか舞にはまったく分からなかった。後で妹に確かめたところ、「とっても面白い顔芸」を披露していたというから、無意識の内に妹にファーストキスを奪われたことを認識していたのかもしれない。
「ゆ、由衣……?」
「あ、気がついた? お姉ちゃん巨大化したまま操られてたみたいだよ」
「操られ……あっ!」
「静かにして。操られてるふりをしてて。三佳さんを倒すには協力しないと無理だよ」
妹の言葉に、姉は沈黙のまま頷いた。ケンカは多いが、このあたりはさすがに姉妹というべきだろう。意思疎通を済ませて、舞は立ち上がる。
「お姉ちゃん、正気に戻って! あたしが分からないの!?」
すかさず由衣が声を上げる。本人にしてみればオスカー賞ものの演技だったが、実際は大根もいいところだった。それでも、すっかり油断していた三佳(とその中にいる鶴姫)はまったく気づかない。
<あーあ。悲劇のヒロインぶっちゃってる。勝てるわけないわね>
<ほんとほんと。このままレズらせて街を壊滅させるのも面白そうね♪>
巨大化した舞が、由衣の両肩を掴んだ。抵抗させることなく、力任せに半壊した高架駅に叩きつける。この一撃だけで残っていた部分も破壊され、電車は制服の下で全てスクラップと化したが、由衣はそのまま転がって今度は駅前広場まで潰してしまった。立体歩道やバスターミナルなどが潰れていく音が耳に届いて、由衣は破壊の快感に酔う。
このまま抵抗できないまま壊してしまうのもいいかも。どーせ後で全部壊すんだから……。でも、三佳さんが邪魔なのよね。
広場を陥没させながら、セーラー服姿の巨大少女・舞が歩いてきた。それこそ物でも扱うかのように由衣の巨体を持ち上げる。
楽しんでないで反撃いくわよ。
唇を動かしただけで告げられた姉の意図を全て理解するよりも早く。由衣は破壊された高架駅の反対側に立っていた三佳に向かって投げ飛ばされていた。足元では瓦礫を蹴散らしながら、思い切りラクロスのユニフォーム姿の巨大少女に体当りする。不意を突かれたのか三佳は無様に倒れてしまい、背中などでビルをまとめて薙ぎ倒す。
「ちょっと、なんでこっちに来るのよ!」
「知らないわよ! お姉ちゃんに言って!」
建前半分本心半分叫ぶと、ついでとばかりに周囲の破壊された建物の瓦礫を幾つか叩きつける。思いがけない事態に戸惑っているのがはっきりと分かって、由衣の闘志に火がつく。
「お姉ちゃん並にきれいなのが許せないっ! こーしてやるんだから!」
動けないでいる三佳をこのままにしておく道理は無かった。ブレザー制服姿のまま巨大化した少女は相手の巨体に飛びつくと、抱きついた状態のまま転がった。周囲の無傷だった建物がまとめて破壊されていき、盛大に埃が巻き上がったが、由衣はすかさず立ち上がると三佳の両足を掴むと、そのまま引っ張り始めてしまった。
「ち、ちょっと止めて! 恥ずかしい!」
「酷い目に遭わせておいてよく言うわね! お姉ちゃんにもお仕置きしてもらうから!」
「お姉ちゃん……? 操ってたのにまさか……」
「あっ、嘘嘘! あたしがどーにか……」
「馬鹿! 言ったら意味ないじゃない!」
いきなり、舞の飛び蹴りが由衣の背中に炸裂した。痛みを認識する間もなく由衣の巨体は三佳を押し潰し、下敷きになった少女は声にならない妙な声を上げる。
「もう間抜けなんだから! こーなったらあんたたちをまとめて始末してあげる!」
「お、お姉ちゃん……あたしも?」
「当たり前じゃない! ほらもっと押し潰す! ほらほら!」
三佳に覆い被さったままの妹の背中に、舞はパンプスに包まれた足を思い切り押し付けた。フラットな胸同士が密着し、なぜか由衣は親近感を覚える。
「やっぱり女の子同士が巨大化してレズってる光景は楽しいわね。ほらほらもっとちゃんとやる!」
「あーもう我慢できない! こーしてやる! ほらほら!」
「ち、ちょっとスカートをまくって何をするのよ……って、そんなところをこすりつけてこないで! か、感じちゃうじゃない!」
「由衣はわたしが言うのもなんだけど、レズっ気があるのよね。自分を男の子だと思ってるのかも」
「そんなことないわよ! でもこーしてこすり合わせてると……き、気持ちいい~♪ スパッツ同士がこすれて凄い……」
「や、やめてもう……。巨大化したまま恥ずかしいじゃない……」
「このまま建物を壊してしまうと楽しいわよ。イケナイことをしてさらに興奮するんだから」
舞が煽るのに合わせて、ふたりの巨大少女たちは抱き合ったまま街を壊していく。お互いの下半身をこすり合わせた状態で転がっては次々に建物を破壊し、押し潰していく。通りにあった車も巻き込まれて全てスクラップと化す。
「あ、いいものがあるじゃない! ほら、これを使ってみて♪」
少女たちの痴態を眺めて楽しんでいた舞だったが、破壊された高架駅に電車が落ちていることに気づいて、喜々として掴みあげた。力任せに2両だけを引きちぎると、そのまま由衣と三佳の間に挟めてしまった。もちろん、下半身同士が挟まるようにして。
「え……。ち、ちょっとなにをしたの!?」
「あ、この遊び久しぶり! 楽しいのよね~。電車で遊ぶのって。簡単に潰れちゃうけど……って言ってる側からぐちゃぐちゃ」
「な、なんか一段と興奮してきちゃった……。なにこの感覚」
「ね、楽しいでしょう? お姉ちゃんもっともっと!」
「本当に由衣はこういうのが好きなんだから。大人になったどうするのかしらねえ」
口ではそう言いながらも、舞もまた興奮を抑えきれなくなっていた。目の前でブレザー制服姿のボーイッシュな少女とラクロスのユニフォーム姿の少女が揃って巨大化してもつれ合っているのである。しかも下半身では電車を思いきり潰しながら……。
街は少女たちのレズ行為によって破壊されていくばかりだったが、最早誰も気にしていなかった。
「由衣! 代わって! もー我慢できない!」
「駄目駄目! お姉ちゃんは引っ込んでて!」
「何よその言い方! こーしてやるんだから!」
「ちょっとちょっと! 私の体の上で暴れないで!」
今度は制服姿の巨大姉妹がケンカを始めてしまった。巻き込まれた三佳は最早どうでも良くなって、ただ呆然と眺めるだけだった。
<……。何がどうなってるの?>
<お鶴ちゃん……。さあ>
<でも姉妹同士でもつれ合う光景って楽しいわね~。このまま見学しててもいいんじゃないの?>
<そうだけど……。復讐は?>
<そんなのどうでもいいじゃない♪>
それもそうね、と三佳は思った。セーラー服姿の姉とブレザー制服姿の妹が罵り合い、取っ組みあいながらも、仲良く街を破壊していく光景は見ているだけでも楽しかった。
<今度は私自身が巨大化して破壊してみようかな~。可愛い衣装も用意して♪ その時は協力してね>
<もちろん。舞たちが出てきたらこの街をリングに見立ててタッグマッチで戦うのもいいわね。めちゃめちゃになりそう♪>
もつれ合った状態のまま、舞と由衣の巨大化姉妹が三佳の方に転がってきた。軽くかわしながらも、三佳はどちらの味方をするか考えているのだった。

「ぐぬぬぬ……。お鶴まで役に立たないとは……。はあ、もう疲れた。一眠りするとするか。もうすぐ受験シーズンで忙しいからな。まったく、いつもこの時期になると忙しいのはどうにかならぬものか……」

……
やっぱり可愛い女の子が巨大化してあんな事やこんな事をしている光景は書いていても楽しいですね~。
次の更新は来週、新年早々を予定しています。その後はリクエストに応えていきたいと思っています。幾つも溜まってしまいましたからね。申し訳ないです。

ホームページ「木蘭優駿」ではオリジナル巨大娘長編小説「反逆の従者―箱庭世界の巨大少女剣士―」の連載を続けていますので是非ご覧になってください。 直近の更新分では箱庭内で巨大化しての戦闘シーンもありますよ~。

「木蘭優駿」ホームページ
プロフィール

小笠原智広

Author:小笠原智広
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード