異郷の吸血鬼は幻想郷の夢をみる(完結編)


更新間隔が長く開いてしまい申し訳ありません。9月に入ってから所属しているサークルのノベルゲームの制作に関わっていて、時間が取れませんでした。ちなみにそのゲームは今日開催されている「東方紅楼夢」で発売されています(笑)。

まあ。それはさておいて今回は異郷の吸血鬼姉妹の物語の完結編を送ります。ロッテ・リオン姉妹のイラストも改めて描きました。

街破壊巨大少女幻想47

リオンのキャラデザが大きく変わってしまいました(笑)。実際は髪型を変えただけなのですが、画風も違うので別人のようになってしまいました。それにしても、二人揃うと意外と絵になるものですね。
それでは、SSを送ります。

……

 このままでは駄目。力の差があるから負けてしまう……。
 全身で住宅や道路上の車を壊しながら、ロッテは唇を噛んだ。
 私たちに敵意は無いのに……。むしろ、友好的にいきたいだけなのに相手は勘違いしている。こんな時はどうすれば……。
 一瞬、隠された姿である<黒紅の吸血鬼>に変身することも考えたが、すぐに否定した。それで勝ったとしても、レミリアという吸血鬼は自分を決して許さないだろう。
 吸血鬼がプライドの高い種族であることは自分自身が百も承知だった。
「ふーん……。何もしてこないなんて意外ね。私よりずっと格下だからま、当然ね」
「違うわ。私は……」
「私は……何かしら?」
 白いワンピースからぼろぼろと瓦礫や住宅の成れの果てを落としながら立ち上がったロッテだったが、近づいてきたレミリアに胸ぐらをつかまれて言葉を失った。そのまま、あっと思う間もなく思い切り投げ飛ばされる。その先にあったのは……海に面した大型の遊園地だった。
 駐車場の車はロッテのブーツによって蹴散らされ、一部が爆発炎上する。その炎を受け止めながらも体勢を立て直そうとしたロッテだったが、遊園地の敷地に入った瞬間転んでしまった。
「あっ……」
余程勢いがついていたのだろうか。半ば<もの>と化したロッテの巨体はジェットコースターのレールを飴細工用のようにねじ曲げ、破壊しながら転がり、広場の施設を全て下敷きにしてようやく止まった。
周囲には破壊されたレールが散らばり、ブーツに包まれた足は別の遊具を壊している始末だった。
「フランは遊ばせておけばいいわね。私も貴方で遊んであげる」
 妹と同じような表情を浮かべながら、レミリアが遊園地に足を踏み入れてきた。足元の施設などを無造作に蹴散らしながら、まだまったく壊されていない観覧車の前に立つと……両手を使って地面から引き抜いてしまった。
 今度はそれを使って攻撃してくる……。
 ロッテにはすぐに分かったが、何度も続けて攻撃を受けたダメージは大きく、かろうじて動く指がカラフルなタイル張りの地面をむしり取るだけだった。
「さあ、巨大化した私の攻撃、どこまで耐えられるかしら?」
 一方のレミリアはすっかり気分を高揚させていた。いろいろな物を武器にしてしまう自分に酔いながら、地面に横になったままのロッテに両手で持った観覧車を思い切り叩きつける。たった一撃でゴンドラの半分以上が吹き飛び、支柱も大きくねじ曲がったが、構わずに何度も叩きつける。
 その後は巨大化したレミリアの独壇場だった。
 なんとかその場から逃れようとするロッテに対して、遊園地全てを巻き込みながら攻撃を続けたからである。
 ロッテが壊したジェットコースターのレールを巨体に巻きつけてみたり、遊園地の象徴である西洋風のお城に叩きつけて崩壊させたり、遊覧池に浮かんでいた帆船を胸の上に置いて、思い切り足で踏み潰したりやりたい放題だった。
「これで少しは分かったかしら? ミアキス家かなんか知らないけど、吸血鬼はスカーレット家だけで十分なのよ」
 完全に瓦礫の山と化した遊園地の中央で、レミリアが高らかに宣言する。
 対するロッテは両膝をついて座り込んでいたが、気力が残っているのは瞳の光だけで、もはや言葉すらも返せなかった。
 駄目……。私では勝てない。彼女は強い。口だけじゃなくて自信を持ってる。勝つにはリオンが動けないと……。
 一瞬、その方向を見る。
 最愛の妹は、なおも半壊した造船所のドッグをベッド代わりにしてフランからの虐待と愛撫を受け続けていた。自分より丈夫で力もあるので簡単には屈しないだろうが、動けなくては意味が無い。
 ……。機会は今だけ。ここでカードを切らないと。
 レミリアは得意げにしているだけで、ロッテを警戒していなかった。直接攻撃は無意味だと分かっているので当然だったが、一つだけ重大な事実を見落としていた。
 ロッテは純粋な力は弱くても、知恵はよく回るという事実を。
「星よ、導き給え。我に力を」
 レミリアの隙を突いて、ついにロッテは<星を詠んだ>。使える回数は限られているが、生み出す効果は下手なスペルカードより大きいロッテの得意技だった。
 レミリアはさすがに驚いて身構えたが、その直後にそれこそ目を見開く羽目になった。
 巨大化した少女たちより二回りぐらい小さいクマのぬいぐるみがレミリアとロッテの間に落ちてきたからである。
「な、なんの真似よ! そんなもので私に勝てると思ってるの?」
 内心の動揺を隠しながらレミリアは叫んだ。一瞬、この空間を作った妖怪の賢者の介入を疑ったが、すぐに否定した。
 ただのぬいぐるみで自分に勝てるわけがなかったからだった。
「ぬいぐるみなら妖精でも勝てるわ。そんなものでどうやって勝つか見せてもらいたいものね」
「……。だったら、見せてあげる」
「え?」
 嬲っていた相手の言葉にレミリアが自分の耳を疑った瞬間。
 ロッテは残っていた力を振り絞ってクマのぬいぐるみを投げつけた。その先にいたのは……リオンとフランだった。
「あっ……。クマのぬいぐるみ! 欲しかったんだ♪ これ」
 フランの関心が、リオンからぬいぐるみに移ったのはまさにその時だった。
 まるで古いおもちゃを投げ捨てるようにリオンから離れると、まだ壊していない工場を盛大に破壊しながらぬいぐるみに飛びついたからである。
「リオン!」
「あっ……。お姉さま!」
 形勢は一瞬の内に逆転した。
 フランの<遊び相手>になっていたのにも係わらず大したダメージを受けていなかったリオンは、姉がぼろぼろになっているのを見ると、一瞬の内に戦闘モードに突入したからである。
 その相手は……もちろんレミリアだった。
「そんな……!」
 リオンの第一撃が直撃するまでにレミリアが発することができたのはこの一言だけだった。後は一方的に攻撃を受け止めるはめになり、それこそロッテ以上にぼろぼろにされてしまったからである。
 ちなみに。
 姉のピンチに気づきながらも、フランはぬいぐるみと遊ぶだけで助けたりしなかった。
「大好きなお姉さまを虐めるなんて。許さないから!」
気がついた時には、仮想空間上の街はほとんどが破壊されていた。それでもリオンはかつて大型の駅があった場所で、ずだぼろになったレミリアをパンプスに包まれた足で踏みつけていた。
「なんか言ったらどう? ほら、また蹴られたいの?」
「うー……。ごめんなさいごめんなさい! 許して!」
「は……?」
「もう二度としないから! 貴方たちには手を出したりしなから! 虐めないで! うーうーうー」
「どうなってるの……?」
 突然、両手で頭を抱えて許しを請い始めたレミリアに、ロッテは首を傾げた。俗にいう<カリスマ崩壊>状態だったのだが、経験のない異郷の吸血鬼には見当もつかない。
「なに馬鹿なことをしてるの? もっともっといたぶられたいの?」
「止めなさい、リオン。嫌がってる相手にまで攻撃するのは恥よ」
「お姉さま……」
「また助けられたわね」
「ううん。お姉さまが無事ならそれでいいの。お姉さま、大好き」
「リオン……。本当に、ありがとうね」
 自然と異郷の吸血鬼姉妹は抱き合っていた。
 ようやくリオンからの圧力が消えたことを感じたレミリアはその光景を一瞬だけ見て……すぐに目を背けた。
 二重の意味で自分は<負けた>という事実をどうしても受け入れることができなかったからだった。

「お姉さま、お姉さま! どうしてあんなに卑屈になるの! あいつには勝ったのに!」
 幻想郷に近い異郷<アヴァロンファンタジー>のほぼ中心にある吸血鬼の館に、リオンの大声が響き渡る。
「もっともっと強気に出ればいいじゃない! お姉さまのばか」
「聞き分けなさい、リオン。私たちは勝ってないの。力では完全に負けてたじゃない。だから私はレミリアに敬意を表したの」
「でも……」
「そうしたら凄く満足してたじゃない。今度幻想郷に客人として招待してくれるそうよ」
「……本当に?」
「名誉は幾らでもあげればいいわ。私たちは幻想郷に友人が欲しかっただけなんだから」
 これが<負けて勝つ>ということよ。
 いつものように抱きついてきたリオンの体温を感じながら、ロッテは心の中で付け加えた。
 おそらく、妖怪の賢者・八雲紫は最初からそのつもりで自分たちを誘ったのだろう。この結末を見越した上で。
 手強いわね……。さすが<賢者>というわけね。あの時、クマのぬいぐるみを投げ入れたのもきっと……。
 リオンが一段と力を込めて甘えてきた。
 それに笑顔で答えながらも、ロッテは幻想郷に招待される日を楽しみにしているのだった。

……

次回は来週更新します。もちろん次はOMCに依頼した巨大娘イラストですのでお楽しみに!
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負けて勝つ

負けて勝つ・・戦後の首相の吉田氏を表した言葉ですね・・

今度は友人として招かれたミアキス姉妹の幻想郷ライフを見てみたいです

負けて勝つのも作戦の内です

>神風様
時間はかかってしまいましたが、お陰で無事完結することができました。ミアキス姉妹の話はいずれまた書いてみたいと思います!
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小笠原智広

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