不思議の国の少女(3)-そして破壊劇は始まる-

というわけで、SSシリーズ第3話です。ようやく破壊シーンの連続になります。それにしても、亜梨子はどんな制服姿のままで巨大化してしまったのか? 制服好きな作者としてはちょっと気になります。個人的にはかの有名な神戸松○高校の制服(レプリカも市販されているワンピース制服)当たりを思い浮かべてしまいますが、読者の皆様はどうでしょうか? よろしければ聞かせて下さい(笑)。

……

亜梨子が追いかけっこの始まりまでを回想し終えたのは、戦場に指定された遊園地の駐車場まで来た時だった。
躊躇い無く足を踏み入れて停まっていた車を蹴散らすと、足場を作って立ち止まる。
「ここから始めてみる?」
少年のように笑いながら、真夜が声をかけてくる。
彼女もまた当たり前のように周囲の車を踏み潰し、高圧電線塔を片手で構えていた。
背景には観覧車やジェットコースター、そして色々な施設が立ち並ぶ遊園地があったが、後30分もしない内に完全に壊滅するはずだった。
「いいわよ。きっと勝って見せるから」
「そう言いながら一度も勝ってないじゃない。私はただ逃げてるのに捕まえられないし」
「あんなに素早いのに捕まえられるわけないじゃない!」
「そうかしら? これでも手加減したつもりよ」
「もう……許さない。絶対に勝ってやるから。今までの分全部お返ししてあげる!」
「本当に勝てると思ってるんだ。まあいいけどね。もう一度思い返してみるといいよ。どうして君が私を捕まえられないのか」
真夜が言い切るのと同時に。
亜梨子は追いかけっこを始めてからの事を思い浮かべていた。

亜梨子が最初の一歩を踏み出したのは、決意を固めた直後の事だった。
そっとローファーに包まれた足を上げると、足元の車の上に下ろしたからだった。
「あっ……」
多少は抵抗があるかと思ったが、実際はあっけないものだった。
犠牲になった車はおもちゃよりも簡単に潰れてしまったからだった。
「そんなにちまちまと壊さないでもっと壊してみたら? 私みたいに」
すかさず、真夜が挑発してくる。
ボーイッシュな巨大兎少女は、自分で壊滅させた住宅街を足場に仁王立ちになっていた。
周囲では火災すらも発生していたが、気にしている風では無かった。
「でも、こんなに建物があるのに……」
「大丈夫。そこまで巨大化すると幾らでも壊せるから。それにその制服姿で大暴れすると魅力的だと思うわ」
「そんなの理由になってないじゃない」
「私にとってみれば立派な理由よ」
相変わらす馬耳東風な真夜に、亜梨子は少しずつ腹が立ってきた。
あの澄ました顔を困らせてやりたい。
そんな衝動が生まれるのと同時に、制服姿のまま巨大化した少女は躊躇いを捨てて歩き始めた。
最初に犠牲になったのは、道路を跨いで張られていた電線だった。
白いソックスに包まれた足によって断ち切られ、火花を散らしたからである。
同時に何本か電柱も倒れて、無傷だった車や住宅を巻き込む。
そこに襲いかかってきたのは、巨大な黒のローファーだった。
あえて何も考えずに突き進んできた亜梨子の怒りが乗り移っていたこともあって、呆気なく全て壊されたからである。
本当に簡単に壊れるのね。楽じゃない。
片っ端から道路上の車を壊滅させながら、亜梨子は今まで経験した事が無い不思議な感情が芽生えていくのを感じていた。
それは……破壊衝動だった。
わたしは怪獣。可愛い制服を着てるけど、この街を壊滅させる事も出来る怪獣。何をしても許されるんだから!
ためらいを消す為に、心の中で自分に言い聞かせると、壊したばかりの車を盛大に蹴り上げる。
ふわりとスカートが翻り、スクラップと化した車は住宅街に落下して新たな破壊を演出する。
「さあ、その調子で私を追いかけてみて」
ようやく亜梨子が本気を出してきたのに気づいて、真夜は笑いながら挑発した。
そのまま、まだ壊していない大通りに出て車などを踏みつける。
「行くわよ。絶対捕まえてやるんだから」
言い切った瞬間、亜梨子はついに方向を変えて住宅街へと足を踏み入れた。
立ち並ぶ建物をソックスとローファーに包まれた足だけで蹴散らしながら突き進み、一気に真夜との距離を詰める。
足元で瓦礫になっていく住宅は気にならなかった。
ただ、邪魔でたまらなかった。
「いい感じいい感じ。可愛い顔をしてるのに躊躇わずに壊すところは最高ね」
「からかうのもいい加減にして。えいっ!」
行く手をマンションが塞いでも、亜梨子は止まらなかった。
なんとスカートにも構わず蹴りを浴びせて、中央部から分断してしまったからだった。
巨大な少女の攻撃によって、建物は無残な姿を晒す事になったが、亜梨子は容赦せずに踏み潰して歩き続ける。
その背後には巨大な足跡や、瓦礫となった建物が散らばって、少女の破壊力を物語っていた。
そろそろ捕まえられるわね。簡単じゃない。逃げようともしないし。
悠然と立っている真夜の姿を目の前に捕らえて、亜梨子は勝利を確信した。
邪魔な建物を蹴り壊し、一気に間を詰めたその時だった。
「はい残念でした」
余裕に満ちた言葉と同時に、巨大なボーイッシュ少女の姿が視野から消えた。
慌てた時には遅く、バランスを崩した亜梨子は飛び込むようにして大通りに転がってしまった。
綺麗な制服の下敷きになって車やバス、トラックがまとめて破壊されていく。
とっさに伸ばした手は周囲の住宅を壊滅させただけでは済まず、通りに面していたビルのガラスを粉々に砕く。
「そんな正面からの攻撃、誰だって避けられるわ。単純なのね」
半回転しながら、亜梨子は体を起こした。
痛くなかったのは幸いだったが、ちょっと動いただけでさらに建造物が破壊され、制服からは瓦礫が落ちる。
両足は大通りに投げ出され、壊された車が陥没した道路に落ち込んでいる始末だった。
「卑怯じゃない、逃げるなんて!」
「私は逃げるわよ。そうじゃないとゲームにならないから。でも絵になるわね。制服姿のまま巨大化して瓦礫の上に座り込む女の子って。やっぱりあなたを呼んで正解だったわね」
「うるさいわね……」
ゆっくりと亜梨子は立ち上がった。
怒りに満ちた視線を真夜に向けると、瓦礫を蹴散らしながら飛びかかる。
しかし、それを予想していた兎少女は簡単に避けると、軽く足払いをかけた。
「えっ……きゃっ!」
女の子らしい悲鳴を上げたものの、結果は最悪だった。
亜梨子はなんと、通りに面していたマンションに体当たりしてしまったからである。
一瞬の内に建物は崩壊し、その瓦礫が周囲をさらに壊滅させる。
想像を絶するような破壊劇だったが、亜梨子は気にしていなかった。
両腕でマンションの残骸を壊しながら立ち上がると、真夜を睨みつけたからである。
「恐い恐い。というわけで私は逃げるわね」
「待ちなさい!」
こうなると、後は衝動しか残らなかった。
逃げる真夜を追いかけて、亜梨子は破壊活動を続けたからである。
飛びかかろうとして失敗して、住宅街を瓦礫に変える。
通りからトラックやバスを掴み上げて投げつける。
ガスタンクをボールに見立てて叩きつけ、周囲を大爆発させる。
歩道橋を引き抜いて投げつけ、無理やり足止めする。
それでも、真夜はまったく捕まらなかった。
「もう疲れたの? お嬢様みたいな外見だからやっぱり体力無いのかしら」
 相変わらず澄ました顔と声で、真夜が声をかけてきたのは、街の四分の一が壊滅した時だった……。

……
ここで物語は第1話につながります。よって、次の第4話は遊園地戦場編です。観覧車やらジェットコースターすらも<武器>にしてしまう二人の巨大少女たちの大暴れに乞ご期待!

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