魔法少女たちの怪獣退治(前編)


遅れてしまいましたが、リクエストSSシリーズ最新作「魔法少女たちの怪獣退治(前編)」です。最近は魔法少女の定義も広くなってますから、下手すると歳がばれ……いや、なんでもありません(笑)。
それでは、どうぞ。

……
「知事! X市の沖合に怪獣が出現したそうです!」
県庁内の一角に設けられた怪獣災害対策本部にオペレーターを務める職員の声が響き渡った瞬間、知事は思わず顔をしかめた。
しかし、それも一瞬の事で、すぐに指示を出す。
「該当地区の住民に避難命令! <魔女>たちに出動命令!」
「また<魔女>ですか……」
<あんたはそれしか言えないのか>と言わんばかりの顔で副知事が横から口を挟む。
「何だね? 文句があるのかね?」
「いえ、ありません」
「<魔女>以外の連中に怪獣退治が出来るなら是非教えてもらいたいものだ」
「だから無いと言ってるんですよ! 防衛隊も在日米軍も国連軍も勝てないのに<魔女>なら勝てるなんて……馬鹿くさくてやってられませんよ」
「これが現実だよ、現実。<魔女>なら間違いなく怪獣を退治して平和にしてくれる」
「代償は大きいんですけどねえ」
「放っておけば市ばかりか県が壊滅するんだからな……」
二つの大きな溜息が重なった。
言うまでもなく、県知事と副知事が同時に発したものだった。

「お姉ちゃん、お姉ちゃん。今日の遊び場はここ?」
工場の建ち並ぶ地区まで来て、麻美は問いかけた。やや長めの髪をツインテールにしてリボンで束ねていて、年齢の割には少し幼く見える。小柄で可愛らしい顔だちもあって、どう見ても中学生には見えなかった。
「遊び場じゃないの。わたしたちは怪獣と戦うの。分かってるの?」
思わずたしなめたのは姉の留衣だった。ストレートヘアがよく似合う整った顔だちの少女なので、妹の麻美とは反対に、いつも少し年上に見られる。一見落ち着いた性格に見えるのだが……。
「ま、でも今回は遊びみたいなものね。相手の怪獣はサザエラス。例の光線を浴びたサザエの怪獣よ」
「弱そうだね」
「だからちゃっちゃと倒すわよ。その後で幾らでも遊んでいいから」
「うん。お姉ちゃん大好き」
「……抱きつかないでよ。これから巨大化変身するんだから」
留衣が言い切った瞬間、建物が破壊される轟音が耳に届いたかと思うと、地面が大きく揺れた。ついに怪獣・サザエラスが上陸したらしい。街を守る正義の魔女の出番だった。
「さあ、いくわよ!」
「うん! ……魔法の神様、麻美たちに力を! 変身!」
「同時に巨大化! 三十倍サイズ!」

港に面した工業地帯の一角、かなり大きな工場を前景にして二人の巨大化少女が出現したのはその直後のことだった。
「あれがサザエラスね。あーあ。もうかなり壊しちゃってる……」
呆れたように留衣がつぶやいた。白いブラウスにフリルを飾った黒のスカート、同じく黒のケープに三角帽子。古典的な魔女スタイルだったが、白いソックスとパンプスに包まれた足は道路を陥没させていた。
「ほんと。お仕置きしないと駄目だね」
すぐ隣に立つ麻美は姉とは対照的だった。まるでTVアニメから抜け出してきたような現代的な魔女っ子コスチュームに身を包んでいたからだったが、不思議と似合っていた。
「でも、いつも思うんだけど……どうして魔法少女なのに魔法使っちゃ駄目なの?」
「当たり前じゃない。私たちが魔法を使ったら一発で壊滅するじゃない。だから使用禁止と言われるんでしょう?」
「そうだったわね……。でも、壊す楽しみが無くなるから仕方ないわね」
「そういうこと」
妹の不謹慎な発言を姉は咎めなかった。住民は全て避難してるし、壊した街は魔法で元に戻せばいいのだ。
「さあ、始めるわよ。遠慮なんかしなくてもいいから!」
「もちろん! お姉ちゃんには負けないから! 今日は麻美がいっぱい壊すんだから!」
その言葉が合図となった。留衣が返事するよりも早く、麻美は歩き出したからだった。
最初に壊されたのは、目の前にあった工場だった。巨大化した魔法少女が笑いながら、建物を蹴散らし始めたからだった。30倍に巨大化しているので壊すのはあまりにも簡単だった。
「いきなり壊してるわね……」
「だって邪魔なんだもん」
「それもそうね。じゃ、私も♪」
麻美が目についた建物を屋根を引き剥がし、それを無傷の建物に叩きつけたのを見て、留衣も怪獣退治という名の破壊活動を始めた。敵であるサザエラスへの最短距離を通る為に、道路上の車を蹴散らして走り出したからだった。パンプスに包まれた足によって道路には足跡だけが残り、車はスクラップになって一部が爆発炎上する。
それでも留衣は、ふわりと黒いスカートを翻してジャンプした。
「サザエラス! 最初は私が相手するわよ!」
そう言いながら着地したのは……サザエラスが壊そうとしていたプラント工場の敷地内だった。着地した衝撃によって地震が発生し、周囲の建物が一部崩壊したが、その直後に発生したのは……化学プラントが破壊された事による大爆発だった。
「うわっ! やり過ぎちゃった……」
どんな大爆発も平気な巨大魔法少女といえど、爆風には驚いたのか思わずしりもちをついてしまう。スカートの下でさらに建物が破壊されていったが、サザエラスはその隙を見逃さなかった。
サザエに複数の触手が加わったような不気味な怪獣は、いきなり留衣の真上にのしかかったからである。
「えっ……? ち、ちょっと待って! どーしてこうなるの!」
盛大に建物を壊しながら転がった留衣だったが、触手に絡まれて身動きがとれなくなっていた。
「まさか……今までとタイプが違う?」
「お姉ちゃん! 今助けるから!」
大好きな姉の危機に、工場を壊して遊んでいた麻美が加勢した。めちゃめちゃに踏み潰して止めを刺すと、戦場と化しているプラント工場に足を踏み入れたからである。
「お姉ちゃんから離れて! スカートがまくれて恥ずかしいじゃない!」
「変な事言わないで! ちゃんとスパッツ穿いてるわよ!」
「どっちにしてもはしたないじゃない!」
息は合っているものの、珍妙なやりとりを繰り広げながら、現代的な衣装を着た巨大魔法少女はサザエラスに拳を振り下ろしたり、キックを食らわせる。しかし、びくともしない。
「武器がいるわね。あ、これがいいかも!」
爆発炎上したプラントをさらに蹴散らして、麻美はまだ壊していなかった大きな煙突を片手だけで引き抜いた。それを手で持つと、何度もサザエラスに叩きつける。効果があると思ったのだが……。
「あっ……麻美!」
留衣が警告した時には遅かった。麻美の身体に触手が巻きついたかと思うと、そのまま投げ飛ばされてしまったからだった。その先にあったのは……港に通じる貨物ヤードだったが、巨大化した少女が転がってきてはひとたまりもなかった。
大量のコンテナが宙に舞って、お洒落な衣装の上に降りそそぐ。潰されたタンクローリーが爆発して黒煙を吹き上げる。留衣の巨体によって貨物機関車や建物、レールや架線が全て破壊される。
悪夢のような大破壊だったが、全て一種の出来事だった。
「麻美! ええい! 邪魔!」
妹を気づかう姉の思いが、のしかかるサザエラスを弾き飛ばしたのはその時だった。飛ばされた怪獣は港を破壊して転がったが、留衣は構わずに貨物ヤードに足を踏み入れる。
「麻美! 大丈夫!?」
「お姉ちゃん……。うん、平気……」
「もう……許さないんだから!」
壊滅した貨物ヤードを足場に、黒と白の衣装でまとめた巨大魔法少女は仁王立ちになった。ここまできたら、本気で戦うしかなかった。
「たとえこの街を壊滅させても……倒してみせる!」
決意を固めると、まだ壊していない建物を蹴散らしながらサザエラスの方へと向かう。
まだ戦いは始まったばかりだった。

……

麻美ちゃんのコスチュームについては読者の皆様の想像にお任せします。作者は「CCさくら」当たりを思い浮かべますが、あれも巨大化ネタがありましたね(笑)。
続きは来週にでも掲載します。
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魔女姉妹

姉の衣装を妄想しながら、拝見しました。

街を破壊しながら、奇妙な会話のやりとりも良かったです。

次回も期待です。
プロフィール

Author:小笠原智広
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