黒姉妹の街壊し遊び(後編)


前回の予告通り、リクエストSS第1弾の後編を掲載します。
……済みません。ネタが面白過ぎて完全に調子に乗りました(笑)。いつになく長くなっています。

……
その攻撃を、彩音はまったく予想していなかった。思い切り正面から受け止めてしまい、電車を壊したばかりの高架線の上にしりもちをついてしまったからだった。お洒落な制服の下で鉄筋コンクリート製の高架線が架線ごと破壊されていく。彩音が手にしていた電車も地上に落下して、初音のローファーに踏み潰される。
「ち、ちょっと何するのよ!」
「決まってるじゃない! 大嫌いなお姉様をめちゃめちゃにしてやるんだから! 今日こそ壊して上げる!」
姉を高架線の上に組み伏せながら、初音は近くにあったビルを片手だけで引き抜くと思い切り叩きつけた。仮想空間上なので痛みは感じないとはいえ、ビルは無数の破片と化して周囲に飛び散る。
それでもヤンデレな妹の攻撃は始まったばかりだった。すぐに立ち上がると呆然として動けずにいる彩音の両足を掴むとそのまま思い切り転がしたからだった。その先にあったのは住宅街だったが、身長80メートル近い巨大少女の全身が襲いかかってきてはひとたまりも無かった。一瞬の内に全ての建物が瓦礫と化していき、切れた電線が火花を散らす。転がる度に制服から瓦礫の一部がこぼれるのが壮絶だったが、初音は少しずつ自分の心が満たされていくのを感じていた。
これよこれ! 大嫌い……ううん、大好きなお姉様をめちゃめちゃにしながら街もめちゃめちゃにしてしまうの。これがあるから止められない……。
住宅街を壊滅させたところで、初音は手を止めた。車を潰し、頭を振りながら大通りに体を起こした姉を見下ろして得意そうな表情を浮かべていたが、やがて近くに面白いものを見つけると建物を壊しながら駆け寄る。それは大型のガスタンク基地だった。
「お姉様、ボール遊びしない?」
「ボール遊び? まさか……」
「もちろんこれで遊んでしまうの! 別名爆発遊び! えいっ!」
彩音が言葉の意味を飲み込んだ時には遅かった。ガスタンク基地を足を踏み入れた初音は手近なタンクを地面から引き抜くと、いきなり姉目掛けて投げつけたからだった。びっくりした彩音はとっさに手で振り払ってしまったのでタンクは地面に叩きつけられて……大爆発した。
派手な爆風によって周囲は簡単に火の海と化し、大通りの車も巻き込まれて爆発と炎上を繰り返したが、二人の巨大制服少女にしてみればちょっと風が吹いた程度にしか感じなかった。
「ち、ちょっと何を……あっ!」
「油断大敵!」
タンクを手にした初音が近づいている事に気づいた時には遅かった。薄緑色のガスタンクをふっくらとした胸の谷間に押しつけられたまま半壊したビルの上に座り込んでしまったからだった。スカートの下で建物が派手に崩壊していったが、初音は悪魔のように笑いながらガスタンクを姉に叩きつける。
今度は二人の巨大少女を中心にして大爆発が巻き起こり、一度目の爆発で半壊した建物が止めを刺されたが、初音はスカートにも構わずキックを食らわせる。その一撃で、炎を吹き上げる瓦礫の上に、埃だらけの制服姿のまま彩音は転がってしまう。
「お姉様……大好き! だから苛めてしまうの!」
矛盾した事を言っているという自覚は存在しなかった。相反する感情に突き動かされながらも、初音は彩音をとことんまで苛めた。
初音が電車をめちゃめちゃにした事を言葉でも責めたてながら電車を叩きつける。
無傷のビルを引き抜いて叩きつけ、その上から踏みつける。
挙げ句の果てには危険物だらけの化学プラント目掛けて投げ飛ばして、またもや大爆発を発生させる。
全て「大嫌いで大好きな姉に捧げる」苛めだった。
「さすがにこれでお姉様も懲りたはずね。もう立ち直れないんじゃないかしら?」
足元で工場の建物を踏み潰し、ツインテールにした髪をふわりと揺らしながら、初音は勝ち誇ったように宣言した。無限の力を全て出し切って、かつて無い程の満足感が心を支配していたのだが……。
「……さてと、そろそろ私の番ね。ここまでやっといて逃げるという選択肢は無いわよ」
化学プラントを壊滅させながら、ゆっくりと彩音が立ち上がったのはその時だった。その口許に歪んだ笑みが浮かんでいるのに気づくと、初音は全身が震えた。
妹がヤンデレなら、姉はSだった。それも、Mになりきってその屈辱を全てSとしての力に変えられる程の……。
「あ、あのお姉様……ちょっと待って……」
「倍返し程度では済まないわよ。二乗、三乗にして返してあげるから……。ふふ、覚悟して♪」
「ち、ちょっと調子に乗っただけなのに……」
瓦礫を蹴散らしながら逃げようとしたが遅かった。制服に包まれた腕を掴まれると、いきなり貨物列車の留置されているヤード目掛けて投げ飛ばされてしまったからだった。そこにはコンテナ車や石油のタンク車などが大量にあったのだが、身長80メートル弱の巨体を受け止めて一瞬の内に全て壊滅してしまった。さらに一部の車両が爆発して炎を吹き上げ始めたが、まったく熱くなかった。
しかし、正直それどころでは無かった。喜悦に満ちた笑みを浮かべた彩音が破壊された車両を踏み潰しながら近づいてくると乱暴に起こしたからだった。
「今日はフルコースでいいわね。その覚悟があるから私に攻撃したんでしょう?」
「ち、違うわ……。ちょっと調子に乗っただけで……」
「言い訳はそれだけ? もっと聞きたいわね。絶望という名の言い訳を!」
「ま、待って……」
「でも処刑するのが先ね。面白い場所があるから」
姉より優れた妹はやはり存在しなかった。楯突く意思を失った初音は、彩音に腕を引っ張られて……<処刑場>に引っ張られていったからだった。そこは最近出来たばかりの建物が建ち並ぶ瀟洒な地区だった。
「まずは磔(はりつけ)にしてあげる! えいっ!」
処刑という名の破壊活動は、制服姿の初音が高さ100メートルはある大型ビルに背中から叩きつけられて始まった。正面のガラスが全て砕け散り、陽光を反射しながら地面に落ちていったが、彩音は足元の小さな建物や車を全て壊しながら近づいてくると、二度三度と押しつけて……最後にビルごと押し倒してしまった。
「これじゃ磔にならないじゃない。まったく、弱いビルなんだから」
「力任せに叩きつけたら倒れるに決まってる……」
「うるさいわね。少しは黙ってて。貴方はあえいでいればいいの」
さらりと綺麗な黒髪を揺らしながら言い切ると、彩音は隣のビルを土台ごとを引き抜いて叩きつけた。すっかり汚れた制服がまた瓦礫だらけになったが、そのままローファーで踏みつけてしまう。
「さっきはよくもやってくれたわね。どう? 同じ事をされる気分は……。そろそろ気持ちよくなってきたんじゃないの?」
「そ、そんな事ない……」
「だったらまだお仕置きが足りないわね。もう一度磔の刑ね」
その後、初音は姉の手によって人形のように好きなだけ苛められた。
瀟洒な地区に建ち並ぶビルを全て壊しながら叩きつけられたり、足を掴まれて引きずり回されたりしたからである。
気がつくと、地区全体が壊滅していたが、ほとんどは初音の巨体による破壊劇だった。
「そろそろ楽しい遊び場に行かない?」
「え? まだやるの……」
「馬鹿。まだ始まったばかりじゃない。フルコースなんだから!」
壊滅したビルを足場に制服の埃を払っていた初音だったが、彩音の言葉に石のように固まってしまった。それを見て笑みを浮かべた姉は、無抵抗な妹を引っ張って新たな遊び場に引っ張って行った。
「さあ、今度はここで遊ぶわよ!」
「え、ここって遊園地……。壊したくない……」
「今更何を言ってるの? ほら壊すわよ!」
最初に壊されたのは、奇麗に飾られた正面ゲートだった。夢の国への入り口は初音のソックスとローファーに包まれた足によってあっと言う間に瓦礫になったからだった。
「ち、ちょっとここは止めない? こんなに楽しそうなのに」
「楽しそうだから壊してしまうの! ほらっ! 壊して!」
抵抗する妹に苛立ったかのように、彩音が初音を突き飛ばしたのはその時だった。必死になってバランスを取ろうとした初音だったが、為す術無く……観覧車に抱きつくようにして倒れてしまった。それだけで観覧車はゴンドラが殆ど落下して大きく傾いてしまう。
「壊しちゃった……」
「当たり前じゃない! ほら、もっと壊す壊す!」
初音が立ち上がる余裕も無かった。ツインテールにした髪や制服のスカートを大きく翻しながら、またもや突き飛ばされてしまったからだった。その先にあったのはジェットコースターのレールだったが、全て巨体で潰してしまう。
「あ、いいものを見つけた♪」
レールを壊しながら体を起こした妹を見た瞬間、彩音のSっ気はついに頂点に達した。足元の施設などを壊しながら近づくと、壊れたレールを掴み上げて……それで初音の制服に包まれた巨体を縛りつけてしまったからだった。
「こういう遊びは巨大化してないとできないわね。ジェットコースターのレールで縛りつけるなんて」
「酷い……」
「うるさい。貴方は大人しくなぶられてればいいの!」
そう言いながら、彩音は鉄製のレールを巻きつけられた初音に壊れた観覧車を叩きつける。ゴンドラが周囲に飛び散ったが、心が壊れた姉は満足に笑う。
……。
こうして。不用意に姉を苛めた妹は街が壊滅するまで仕返しをされた。それでも。最後に本心からこう言ったという。
「お姉様。大嫌いで……大好き!」
……

おかげさまで楽しく書かせてもらいました。やっぱりリクエストは募集してみるものですね! 自分だけではシチュレーションがワンパターンになってしまうので、これからも皆様のお力を借りたいと思います。
次回はイラストをアップさせてもらいますが、その後はリクエストSSの第2弾「魔理沙の街壊しゲーム入門(仮)」を書きたいと思っています。
スキマ妖怪・八雲紫の甘言に乗せられて「街壊しゲーム」に挑戦する事になった「普通の魔法使い」霧雨魔理沙。弾幕もスペルカードも使えないというルールに不満はあったものの、すぐにやんちゃな性格全開で大暴れしてしまう……そんな話になると思います。お楽しみに!
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コメント

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感無量

感無量に成る程、前後と楽しく読ませて頂きました。
リクの他の作品が楽しみです。

機会があればまたリクを出したいと思います。

No title

>神風様
私も大変楽しく書かせてもらいました! やっぱり新しい発想が加わると書いていても楽しかったです。次のSSも期待しててください!
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小笠原智広

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