不思議の国の少女(1)-二人の巨大少女-

 またどこかで新たな爆発が発生したようだった。
 さっき追いかけっこの舞台となった大通りの車が爆発したのだろうか。
 また黒煙と炎が上がった事に気づいて、お洒落な制服姿の亜梨子(ありす)はいよいよ取り返しがつかなくなった事に気づく。
 最悪の状態ね。わたしは元の世界に戻りたいだけなのに、街はめちゃめちゃになっていくだけ。今だって瓦礫を踏みつけているし。
 そう思いながら自分の立つ位置を確かめる。
 かつてはビルが幾つか立ち並んでいたはずだったが、気がつくと全て崩壊していて、わずかに残された土台も黒のローファーで踏みつけられている。
 言うまでもなく、身長48メートルに巨大化した亜梨子が蹴散らしたのだった。
 でも仕方ないわよ。どうしても邪魔だったんだから。そうじゃないと追いつけそうになかったんだから。
 思わず、少し先に悠然と立つ追いかけっこの相手を睨みつける。
 短い髪に少年のような顔だち、Tシャツに黒のジーンズ生地のジャンパー、半ズボンにソックスとスニーカー、そして白い兎の耳と尻尾を持つ少女……真夜(まよ)は大通りの車を踏み潰したまま、悠然と立っていた。身長47.4メートルの巨大兎少女だったが、彼女のせいで亜梨子は不本意ながらも街を破壊しながらの追いかけっこをやらされたのだった。
 「もう疲れたの? お嬢様みたいな外見だからやっぱり体力無いのかしら」
 相変わらず澄ました顔と声で、真夜と名乗った少女が言葉を投げかけてくる。
 「私に追いつけないといつまでたっても戻れないわよ。それでもいいの?」
 「良くないじゃない。でもあなたが逃げるから……!」
 挑発に感情が爆発して、亜梨子は丈の長いスカートを翻して瓦礫を蹴った。
 半壊したマンションをすらりとした足だけで破壊し、通りの車をスクラップに変えながら真夜に飛び掛かろうとする。
 しかし、それを読んでいた兎少女が簡単によけたので、亜梨子は両手を前にして無傷だった住宅街に飛び込んでしまった。
 白を基調とした瀟洒な制服の下で建物が次々に瓦礫となっていき、スカートから伸びる足もまた、背の低いマンションにぶつかってその正面を粉々にする。
 潰された車が爆発して黒煙を吹き上げ、倒れた電柱に絡む電線が火花を上げたが、亜梨子自身は無傷のままだった。    
 「また壊しちゃった。酷い事するわね。私を捕まえる為に街を壊すなんて」
 「あなたが逃げるからじゃない。あなたが……」
  全身で住宅街を潰していた亜梨子が体を起こした。瓦礫の上に座り込んだまま髪をかき上げ、真夜を睨みつける。既に制服は埃まみれになっていたが、最早気にしている余裕もなかった。
 「私は無理強いはしてないわ。私を三回捕まえれば元の世界に返して上げるって言ってるじゃない。  でもまだ一回も捕まえていない。それだけの話」
 「無理よ。本物の兎みたいに素早いんだから」
 「当然でしょ? 私はこのゲームを司る<破壊兎>。もっと壊してくれないと面白くないじゃない。せ   めてこの街全部は瓦礫にしてくれないと困るわね」
 何も言わずに、亜梨子は立ち上がった。制服から落ちる小さな瓦礫にも構わず、ローファーで壊した建物を踏み潰しながら辺りを見回す。
 気がつくと、かなり大きな都市の一部は完全に壊滅していた。
 「酷い……。こんなにしちゃうなんて」
 「巨大化してるから当たり前じゃない。さてと、ここでちょっと提案。今から私と直接戦って勝ったら、  私を一回捕まえた事にして上げる。どう?」
 「戦って勝てばいいの? だったらそれでいいわ」
 「ふーん。勝てると思ってるんだ。とにかく、舞台はあそこよ」
 「え? 遊園地……?」
 「そ。大きいでしょう? あそこの敷地をリングにして戦うの。武器も自由に選んでいいわ。私はそう   ね、これにしようっと」
 少年のように快活に笑って、真夜は瓦礫の中に残っていた高圧電線塔を軽々と引き抜いた。根元をねじ曲げて持ち易くすると構えて見せる。
 信じられない物を平然と武器にする少女が内心恐ろしくなっていた亜梨子だったが、無理やり押さえ込むと、自分も高圧電線塔を引き抜いて両手に持つ。
 武器無しでは勝てる相手は到底思えなかった。
 「絵になるわね。赤白の電線塔を手に持ったまま巨大化した制服少女って。遊び甲斐があって面白  いわね」
 「それより、勝負よ! 勝負!」
 「はいはい」
 平然と受け流しながら、真夜が歩き始めたので、亜梨子もそれに続いた。
 その先には、<戦場>に指定された大型の遊園地が破壊される瞬間を待っていたのだった。

……
突然お騒がせしています(笑)。いつも利用している神社モドキに登録された途端にアクセスが急増して、非常に喜んでいる戦国銀です。前のブログでも触れているように、この業界?では少し珍しい路線なので受けるのかどうか心配だったのですが、これで一安心です。
というわけで、前から予告していたSSシリーズもスタートします。今回の作品は趣味に走りまくりました。身長50メートル近い少女たちの織りなす大破壊劇で、建造物を蹴散らしながら追いかけっこをしたり、色々な物を武器にして戦ってしまったりします。また、最後の方ではもう一段階巨大化する予定です。こびとさんネタは……今後に期待して下さい(笑)。ただ、申し訳ありませんが、18禁は苦手なのでその手の作品は予定していません。上手な方が幾らでもいらっしゃいますし(笑)。

このSSの第2回は、少し時間を戻して亜梨子が真夜と追いかけっこを始める話になります。ためらいながらも壊してしまう亜梨子の様子を描いていくつもりです。
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