荒事始末人ユリアの仕事(4)

やっと完結編です。お待たせして申し訳ないです。

……

一方その頃。当の謙吾はカメラを回す反対の手で電話に出ていた。動画を中継するスマホとは別のスマホに着信があったからだった。
「だからなんでこんな時に電話してくんだクソ親父! 最高のチャンス逃すだろ!?」
電話してきたのは海外にいる父親だった。余程電波事情の悪い辺鄙な場所にいるのか、いまいち聞き取りづらい。
「……え? 男なら見てないで助けろ? どーやれっていうんだ!
巨大女ふたりにビオランテもどきまでいるんだぜ!」
「へ? 護符? 今持ってるけど……。それがあれば大丈夫? 一度だけなら願いは叶う? マジかよ……」
どうやら父親の横には別の誰かがいるらしい。年老いた女性の訛りの酷いフランス語と父親の話す日本語訛りのフランス語の会話が交じるので話の筋すらよく分からない。
親父またアフリカの奥地にでも行ってるんだな。フランス語が通じる場所にいるということは……。
「なに? その護符さえあれば助けられるって呪術師のばーさんが言ってる? どんな魔法も平気だから決断次第だ? んな事言われても……」
ユリアの劣勢は明らかだった。街を盛大に破壊しながらも、一方的に嬲られ、時には痴態すらも晒していたからである。
「そろそろ本番いってみる? 世界中に中継するのも面白いわね~」
破壊されつつある大型の駅を足場に、ヘイゼルはにんまりと笑った。
「この実験体にはね、色々な性技も教えてあるのよ♪ その実験を兼ねるのも悪くないわね。うふっ♪」
「そ、そんな……」
ユリアは駅前の大型ビルを背中で破壊したまま、大通りの上に座り込んでいた。体力も魔力も消耗して、動きたくても動けなかった。格闘も得意な魔法使いといえど、両方を失っては最早無力な少女でしかなかった。
「さあ、やっておしまい!」
まるで悪の女幹部のようなヘイゼルの台詞に合わせて、実験体が触手をくゆらせながら動き始めた。自由に動けることを悟ったのだろうか? その動きは喜びに満ちているようにさえ見えた。
「駄目! 来ないで! こんな所で公開処刑なんて真っ平ごめんなんだから……って、ああっ!」
通りを破壊しながら伸ばしていた足に触手が再び絡みついてきて、ユリアは恐怖のあまり声を上げた。今度こそ犯される! そう思うと抵抗することすら出来ない。
駄目……。もうどうにもならない。任務に失敗するどころか大事なものまで失ってしまう……。あたしって、こんなに非力だったの……?
思わず閉じた目に、涙が浮かんだ時だった。
「何をしてるんだ! ユリア! 立ち上がれ!」
突然、謙吾の声が耳元に届いた。
「この護符があれば力はすべて戻る! お前が全力を出せば勝てる相手だろ!」
「謙吾……」
「この護符、お前にやるぜ。大事に使えよ! それっ!」
体格差も忘れて投げられた小さな小さな護符を、ユリアは何とか右手で受け止めた。ゴマ粒以下の大きさだったが、なぜか力が戻ってくるのを感じる。
これは……。こっちの世界の魔法? まさか……。
複数の触手がユリアのスカートの奥へと迫る。あまり気持ち悪さに身悶えしながらも、少女魔法使いは少しずつ戦う気力を取り戻していく。
「ちなみに今、中継は切ってるぜ。これ以上痴態を晒させるわけにはいかないからな」
「……いいの?」
「話は後だ。仕事だろ、荒事始末人・ユリア!」
「……。うんっ! ありがとう! 謙吾!」
大きく頷いたユリアの笑顔は無邪気そのものだった。一瞬、謙吾は胸が高鳴るのを感じたが、すぐにその場から離れる。応援はしたかったが、巨大化した少女の巻き添えだけは御免だった。
これでいいんだ、これで。後は任せたぜ、ユリア。
中継再開の準備をしながら謙吾は心の中だけでつぶやいた。
一方、力を取り戻したユリアはすぐに反撃に出た。ヘイゼルが油断しきっているのを確かめながら、足に絡む触手を魔力で一気に叩き潰す。無属性の純粋な魔力は強力な物理攻撃に相当することもあって、意外とあっさりと軛は無くなる。
「え?」
ヘイゼルが異変に気づいた時には遅かった。立ち上がったユリアがビオランテもどきの実験体へと正面から戦いを挑んでいたからだった。
「えーいっ!」
掛け声と共に、ミニスカートを豪快に翻してキックを浴びせる。純粋な魔力が込められた一撃に、実験体が大きく揺らぐ。それでもユリアは何度もキックを食らわせると、巨大化しているのをいいことに手近にあったビルを引き抜いた。撮影を再開した謙吾があっと言う間もなく、実験体に叩きつけて簡単にバラバラにしてしまった。
「えげつないな……。幾らなんでも」
「仕方ないでしょう。それに巨大化してるんだから利用しないと損じゃない」
「そういう問題か……?」
空中の謙吾は改めて辺りを見回した。巨大化したユリアとヘイゼル、そして実験体の大暴れによって街並みは原型を留めないほどに壊滅し、所々から黒煙が吹き上がり火災まで発生している始末だった。
それでも、ユリアは大暴れを止めなかった。
まだ無傷で残っていた建物を巻き込みながら実験体を投げ飛ばしたり、ビルなどを叩きつけたからである。全ての攻撃に魔力が込められていることもあり、さすがのビオランテもどきも確実に弱っていく。
「くっ……。こうなったら……」
完全に追い込んだはずのユリアの逆襲に、魔法使いのヘイゼルは打つ手が見つけられないでいるようだった。実験体はユリアの攻撃に耐えられるはずだったが、大量の魔力を吸収しきれずオーバーフローを起こしかけている。このままでは討ち取られるのは確実だった。
となると打つ手は一つ……。
「なっ……」
突然、巨大化したヘイゼルがこちらに向かってくることに気づいて謙吾は慌てた。何を狙っているのかは分からないが、逃げる方法が思いつかない。頼みの綱のユリアはこっちに気づいていない……。
何もできないまま、謙吾はヘイゼルの巨大な手の中に握られる形となった。力は込められていなかったが、状況は最悪だった。
「ユリア、これを見なさい! あなたを助けた男の子は私の手の中にあるわよ! 大人しくしなさい!」
すっかり弱った実験体に止めを刺そうとしていたユリアの動きが止まった。鋭い視線でヘイゼルを見つめると、両手をだらりと下げる。
「そう、それでいいのよ。それで。迂闊ね。この子の存在を忘れるなんて」
ユリアは無言だった。上空の風に綺麗な髪を揺らしながら、ヘイゼルを見つめるだけだった。
「条件は簡単。あなたが負けを認めて元の世界に戻ること♪ そうしたら解放してあげる」
「もし拒否したら?」
ようやくユリアが口を開いた。低く、感情のこもらない別人のような声だった。
「そうね。この子を食べてあげる♪ 今なら簡単じゃない」
「そう。勝手にするといいわ」
「なっ……!」
言葉に詰まったのはヘイゼルだけではなかった。捕らえられた謙吾もまた、ユリアの言葉に顔色を失った。
「どうせさっき会ったばかりの他人なんだから。どうぞご勝手に」
「本当にそれでいいの? 私が食べたらこの子は間違いなく死ぬわよ。本当にいいの!?」
「荒事始末に犠牲はつきものよ」
言い切って、ユリアは目線を外した。「見捨てられた」と思った謙吾は絶望のあまり、意識が遠くなる。
「ちょっと、なんでそうなるのよ! 絶対に犠牲を出さないのがあなたのポリシーでしょう!? それなのに……」
「犠牲は出すわ。……但し、それは罪を犯した者のみ!」
ユリアの言葉を謙吾が全て理解するよりも早く。少女魔法使いが風のような速さでタックルしてきた。衝撃で謙吾は空中に投げ出されたが、すぐにやわらかなクッションに受け止められる。
「えっ……?」
「もう大丈夫。安心して♪」
謙吾を受け止めたクッションの正体は巨大化したユリアの両手だった。そのまま、胸元まで引き寄せられる。程よくふくらんだ胸を目の前で見る形となり、謙吾は自分が天国にいるのか地獄にいるのか一瞬わからなくなる。
「どうしてもヘイゼル様の気を逸らす必要があったのよ。実験体の制御を乗っ取るなんて大魔法、発動まで時間がかかるから」
「え? ヘイゼルは……?」
「決まってるじゃない。罰を受けてるわよ。ほら」
ユリアに言われるまま、その方向を見た謙吾だったが、次の瞬間唖然とした。実験体の生みの親であるヘイゼルが、当の実験体に好き勝手に嬲られていたからだった。
「ああっ……! 駄目! もうっ……巨大化してるのにイキそう! 誰か止めて! ……止めなくてもいいわっ! このまま! このまま!」
「……」
「どうする? 全世界に中継するなら手伝うわよ♪」
「俺のアカウントが永久に停止されるから止めておく」

こうして。異世界から来た謎の巨大生物と魔法使いによる大騒動は、荒事始末人・ユリアの活躍によって解決した。
ヘイゼルは散々痴態を晒した後に実験体と共に元の世界に送還され、破壊された街はユリアの魔法によって完璧に復元された。
「お前、凄いんだな」
元に戻った街並みをユリアの肩から眺めながら、謙吾は大きく息をついた。
「だから荒事始末人が出来るのよ。ま、当然よね」
「大変じゃないのか?」
「大変に決まってるじゃない。でも……」
「でも?」
「こー見えても楽しいのよ。この仕事♪ 今回は巨大化して大暴れ出来たから楽しかった~。またやろうかな♪」
「遊びで街を壊滅させるな!」
「終わったら元に戻すからいいじゃない。あ、だったら今から遊んでいこうっと。日没までには元に戻すからいいでしょう?」
「馬鹿、止めろ!」
謙吾の制止も虚しく、大きな街が巨大化したユリアの大暴れによって再び壊滅したのはわずか一時間後のことだった。
ちなみにその模様も全世界に中継されており、世界中のその手の趣味の人たちを喜ばせたのは言うまでもない。

……
次に書く話は未定です。リクエストがあけば受けますが、間隔が空くと忘れてしまうので受け付けるのは「先着一名様」とさせてもらいます。また、破壊系巨大娘のお話に限定させてもらいますのでその点もご了承願います。

次回は来週更新します。久しぶりにイラストを掲載しますのでお楽しみに。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

久々に書き込みます。夏コミ、更新共にお疲れ様でした。折角ですのでハルカちゃんと水菜ちゃんによる靴下踏み潰し、太もも、お尻、胸による全身を使った破壊とキャッキャウフフの巻き添えによる破壊をリクエストします

No title

更新お疲れ様です~

コミケもお疲れ様でした!!
ご挨拶に行ったのですが、今回もお話しできず申し訳ありませんでした...


リクは先着か...間に合わなかった...
昨年のやつ待ってます!!

またお話しできることを楽しみにしてます~

怪獣遊戯3

バトル後に抜け目なく、自分だけの破壊遊戯をするユリアですね。

☆過去にメールにてリクエストした内容をリクエストしてみても良いですか?

コメントありがとうございます~

>皆様
こんなに早くコメントが来るとは思ってもいませんでした(笑)。

>ガリクソン様
確かにリクエストお受けしました。ハルカと水菜のコンビはずっと書いていなかったのでちょっと新鮮ですね。頑張ってみます。

>契音様
夏コミお疲れ様でした。東京でのイベントは10月の秋季例大祭に参加します(他には大阪ですが、東方紅楼夢にも参加します)。その時またお待ちしています! リクエスト受けられず申し訳ないです。

>神風様
お久しぶりです。コメントが無かったのでちょっとだけ心配していました。ユリアはすっかり破壊衝動に目覚めてしまったようで……(笑)。リクエスト次の機会にお待ちしています。

他のイベントは遠くてなかなか行く機会が…
でも、夏コミは暑さで朦朧としますからねぇ

過去のリクも一回クリアって感じですかねぇorz
次の機会はお話できる事を楽しみにしてます〜!

久々

久々のコメントになってしまってすみません。

次回こそは、リクエスト先着枠を。
プロフィール

Author:小笠原智広
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード