荒事始末人ユリアの仕事(2)

更新間隔が飛びまくってすみません……。ずーっと博麗神社例大祭合わせで「幻想郷文々。日和」を制作していました。シナリオとスクリプトを同時に担当したので大変でした……。
でもまあ何とか完成したので、SSの第2話いきます。

……
意外と厄介そうね……。エルマーク様特製の試作体だから一筋縄ではいかないと思うけど。
巨大なパンプスで通りのアスファルトを陥没させながら、ユリアは気を引き締めた。
だいたいどーしてただの植物がこんな怪物になるのよ、ったくもう。巨大化能力と次元跳躍能力を持つなんて勘弁してほしいわね。
一見すると巨大試作体は毒々しい植物を生物にしたような不気味な形をしていた。触手代わりの蔓を十本以上自在に揺らし、次々に建物を壊滅させている。頭部に当たる部分には薔薇に似た巨大な花があり、意志を持つかのように周囲の様子を伺っていた。
こっちの存在にも気づいてるわね。とりあえずどうやって攻める?エルマーク様の作品だから迂闊に手を出すと……。
一瞬、空気を切り裂く音が耳に届いた。その意味を判断するよりも早く、ユリアの両足に触手が絡みつき、思い切り引きずり倒されていた。
「あっ……!」
悲鳴を上げる間すらも無かった。巨大化した少女魔法使いは背中から地面に倒され、大通りにあった車などをまとめて潰してしまった。伸ばした腕もまた周囲の建物を簡単に破壊し、派手に埃が舞い上がる。
それでも試作体の攻撃は続いた。掴まえた<獲物>を弱体化させるかのように左右に振り回し始めたからだった。ユリアの体重1000トンを超える巨体が軽々と宙に舞っては叩きつけられ、そのたびに激しい振動が戦場となった街を揺さぶる。
「ち、ちょっと何するのよ!」
魔法のお陰で痛くないとはいえ、自分の身体で街を破壊してしまう罪悪感は隠せるものではなかった。気が付くと周囲は瓦礫の山と化しており、スカートの下ではマンションのなれの果てを思い切り潰している始末だった。
「おーい! 大丈夫か~?」
反撃手段を考えるよりも早く、謙吾の脳天気な声が耳に届く。
「世界中が心配してるぞ。弱過ぎるってさ」
「馬鹿言わないでよ。まだ全然本気出してないんだから。ちょっと油断しただけじゃない」
「それより地面が揺れて揺れて駄目だ。何とかしてくれ!」
「うっさいわね。これならどう!?」
ユリアが軽く指を動かすのと同時に。謙吾の身体はふわりと宙に浮いた。突然地面が無くなり、さすがの少年も非常に慌てたが、落ちるようなことはなかった。
「ど、どーなってるんだよ! これ……」
地上20メートルぐらいまでの高さまで運ばれたところで、謙吾はようやく声を上げた。巨大化したまま地面に座り込むユリアを正面から見る形となる。
「面倒だからちょっとした魔法を使っただけ。感謝しなさいよ」
「落ちたりしないよな?」
「魔法の力を使ってるから平気♪」
「お前凄いんだな……」
「荒事始末人だから当然よ。あ、今の状態のまま自由に動けるから好きに中継していいわよ」
「ああ。……好きにね、好きに……」
正面に回り込んでいることもあり、ユリアのスカートの奥をスマホのカメラ越しにガン見していた謙吾だったが、少しだけ反省した。巨大化した少女のパンチラは絶景以外何物でも無かったのだが。
「さてと、ここから本気でいくわよ! これでどーかしら!」
謙吾の相手を済ませて、ユリアはようやく反撃に転じた。試作体が動きを止めたのをいいことに、その本体目掛けて火炎魔法を放つ。植物ならば炎に弱い。お約束の攻撃に思えたのだが……。
炎は試作体に吸収されて消えた。
「え?」
一瞬、両足に絡んだ蔓が緩んだのですかさず脱出したものの、炎を吸収されては困惑するしかなかった。
「おいおい。どーなってるんだ?」
「魔力を吸収する能力まであるみたい。こーなったら肉弾戦しかないわね」
「大丈夫かよ」
「肉体は最後の武器ってよく言うじゃない!」
立ち上がりながら言い切ると、すぐにマントを翻して新たな行動に出る。足元の瓦礫やまだ破壊されていない建物をまとめて蹴散らしながら走り出すと、高圧電線塔に両手をかけたからである。
「これいい武器になりそう。えーいっ!」
平然と言いながら一気に引き抜く。電線がまとめて千切れて派手に火花を散らし、ユリアはびっくりしたような表情を浮かべる。
「おい! 大丈夫か!?」
「へーきよ。ちょっとびっくりしただけ! これ借りるから!」
「電線塔は借り物じゃねえ!」
謙吾の突っ込みを無視して、ユリアは電線塔を両手で持った。
もはや手段を選んでいる場合ではなかった。
でも、こうやって壊してしまうのって少しだけ楽しいかも。どーせ魔法で元に戻せるんだから……。
そんなことを思いながら、電線塔を武器に試作体に逆襲していく。足元で派手に住宅地を蹴散らしながら間合いを詰めると、蔓による攻撃をかわしながら電線塔で殴りつける。少し怯んだのを見ると、ミニスカートを豪快に翻して蹴りを浴びせ、さらに拳を叩き込む。
「少しは効いてるようね」
属性魔法による攻撃は全て吸収されてしまう可能性が高かったが、さすがに物理攻撃まで耐えられるようではなかった。
「だったら……。これはどうかしら!?」
片手で持っていた電線塔を思い切り叩きつけて、ついにバラバラにしてしまうと、ユリアは試作体を両手で抱え込んだ。謙吾が驚くよりも早く、力まかせに思いきり投げ飛ばす。その先にあったのは……まだまったく壊されていない中心街だった。
「おい……」
次の瞬間、最大級の破壊劇が街の真ん中で発生した。全長50メートルはあるビオランテもどきが建物という建物を破壊しながら転がり、高層マンションを根本から倒してやっと止まったからである。大通りにあった車は全て破壊されて一部が爆発し、破壊された建物からも煙が上がり始める。まるで爆撃でも受けたかのような惨状だった。
「思い切り壊してるじゃねーか!」
「仕方ないじゃない。こんな化物相手に犠牲はつきものでしょう。だから住民は逃がしたんじゃない」
「だからといって街を破壊するな!」
「無茶言わないで!」
大声で反論しながら、ユリアもまた中心街に足を踏み入れた。邪魔な建物は無造作に足で蹴散らし、時には蹴飛ばして突き進む。
「障害物が多すぎるわね……。えいっ!」
車が全てスクラップになり、歩道橋も道路に落下した交差点に足場を置いていたユリアだったが、角に立つビルが邪魔だったこともあり、肘打ちだけで壊してしまった。標的となったビルは簡単に倒壊し、周囲の建物を思い切り巻き込む。
「お前、怪獣みたいだって世界中で大騒ぎになってるぜ。でも可愛いから許すってさ」
「あ、そう言ってもらえると嬉しいわね~」
「バカ言ってないでとっととビオランテもどきをどうにかしろ!」
「分かってるわよ! ……もっと壊したいのに」
物騒な本音を漏らした巨大少女魔法使いに、謙吾が返す言葉を見つけられないでいる内に。ユリアはマントを翻して試作体に攻撃を仕掛けた。蔓などを使って態勢を立て直そうとしているのを見ると力任せに殴りつけ、投げ飛ばしたからである。周囲の建物にも構わない猛攻だけに、さすがの試作体も少しは弱ってきたように見えたが、戦場となった街の惨状は目を覆わんばかりだった。
「意外と楽しいわね。こうやって壊しながら戦うのって」
「お前……。まさかわざとやってないか?」
「まさか。生命力が高いから少しずつ消耗させてるだけよ。こー見えても大変なんだから。えいっ!」
「だからビルを引き抜いて叩きつける奴がどこにいる!」
「武器がないんだから仕方ないじゃない。……あ、これいいかも」
謙吾の突っ込みを無視して、ユリアはさらにとんでもないものに手をかけた。それは大通りを跨ぐ鉄道の高架線だった。
「こんな乗り物に乗ってるのね……。ここの世界は。ちゃんと調べたいけど後回し。武器の代わり!」
「今度は電車かよ……」
もはや謙吾は突っ込む気にもなれなかったユリア自身は楽しそうだった。高架線を踏み潰したまま電車の編成を持ち上げると、まるで鞭のように振り回した挙句、試作体に叩きつけたからである。
「あーあ。簡単に壊れるじゃない……」
「当たり前だろ! とっとと決着つけろよ!」
「いいけど……。もっと遊んでから♪」
「本来の目的を見失ってるだろ?」
「でもあたしみたいな女の子が巨大化して大暴れしてる場面って絵になるでしょう?」
それは否定できなかった。というより、世界中にいる配信映像の受け手側も同意見だったからである。
「魔法で戻せるんだったいいんだけどな。しかし……」
「しかし?」
「うまい話には裏があるっていうのが、戦場カメラマンの親父の口癖なんだ」
「そう? 別に大したことない……」
ユリアがそこまで言った時だった。
いきなり、魔法による攻撃がユリアに命中した。

……

このシリーズは次回で完結の予定です。あくまでも予定です(終わらなくなることが度々あるので)。
次回の更新は来週、イラストを更新します。久しぶりに外部に依頼したイラストを掲載しますのでお楽しみに。
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コメント

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怪獣遊技2

ボケとツッコミの関係みたいな2人ですね。

彼女にとっては、ビルも車も鉄道等も武器兼玩具ですね。

※時間があれば、またリクエストしたいなと。

No title

お疲れ様ですー

だんだんと破壊の楽しさに目覚めてますねー

いつもありがとうございます

>神風様
こういうやり取りは書いてて楽しいです。実はロッテとスノウのやり取りも書いてて楽しいんですよね~。
にしても、ユリアもやりたい放題です。

>契音様
やっぱり初めての巨大化の時はこのネタがお約束だと思います!
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