過去からの挑戦者(1)―舞&由衣破壊騒動記―

今回は予告通り自作SS「過去からの挑戦者」の1話目を公開します。……最初に謝っておきます。調子に乗りすぎてしまいました(笑)。自分で考えたネタというのはやはり書きやすいものだと改めて実感しました。
というわけで、今回は完全に趣味に走ってしまいましたが、和風な巨大美少女の大破壊をお楽しみください。

……
「うーむ……。面妖なものだ。ここしばらくゆっくりしてたら世の中ここまで変わってるとは。ついていけぬ」
「久しいのう、将門公。厳しいご面相で何を考えておられるのだ?」
「これはこれは崇徳院殿。いやなに、しばらくの間眠りについていたら世の中がすっかり変わってて驚いてたのじゃ」
「かれこれ三十年だからのう。確か、大河ドラマのお陰で明神様として復帰してから忙しくなって疲れたと申してたではないか」
「うむ。これでも体力には自信があったのじゃがな。しかし、ここまで変わってしまうと我々の存在すら忘れてしまうのではないか」
「お主は問題なかろう。関東を守護する怨霊として有名になっているではないか」
「拙者はそのつもりではなかったのだがな。ただ、なんにせよ忘れられるのは不快ではないか?」
「まあ、私は仕方ないからのう……。そんなつもりはなかったのに怨霊にされてしまったのではなあ」
「拙者もそんなつもりではなかったのだが、社まで建造して祀られると何かせぬとな。しかし、さすがに寝起きではちょっと策が思いつかぬ」
「何を悩んでおられる、お二方」
「おお、道真公。久しいな」
「話は聞かせてもらったぞ。怨霊は暴れてこそ怨霊。祟り神である我々の役割は暴れること。さて、久々に派手にやってみようではないか」
「いつも熱心じゃのう、道真公は」
「いやなに。インターネットを利用してたら面白いものを見つけたのだ。我々も進化しなくてはならぬ。これからは怨霊2.0の時代だ」
「怨霊……」
「2.0?」

関東地方の一角、太平洋に面したとある大きな街。
その街は別名「災厄の街」とも呼ばれていた。なぜなら……。
「お姉ちゃん、この記事酷いと思わない? まるであたしが悪者じゃない!」
ドアが壊れそうな勢いで飛び込んできたのは、ショートにした髪にややつり目な少女……由衣だった。すっきりとした顔立ちや飾り気一つ無い服装から周囲の同性にモテる少女である。もっとも、まだ小学六年生なので幼さは隠しようがなかった。
「ん……。半分ぐらいは事実じゃないの?」
気の乗らない様子で姉の舞が振り向く。由衣より3歳年上で、妹とは対照的にポニテにした長い髪と愛嬌のある顔立ちが目立つ少女である。
よく言われるのだが、同じ血を分けた姉妹とは思えないほど似ていない。例えるならば、ドリームジャーニーとオルフェーヴルの兄弟ぐらいに似ていない。
閑話休題。
「怪獣退治と言いながら盛大に街を壊してたじゃない。中心街付近なんかぜーんぶ由衣が壊したんでしょう?」
「だって邪魔だったんだもん。あたしって小さいから邪魔な建物があると大変なの」
「だからって壊さなくたっていいじゃない。怪獣より壊してたんじゃないの?」
「まさか。せいぜい同じぐらい。これでもセーブしたんだから」
「……。セーブしたのにどうして遊園地とかまで壊滅するの? ほら、この写真見なさいよ」
「わー……。あたし観覧車持ち上げてる。やっぱり凄い力つくんだ。よく撮れてるじゃん」
「よく撮れてる……じゃないの! よく見たら笑ってるじゃない」
「あ、それは……。ほら、ちょっとだけ楽しかったから♪」
舞は大きな溜息をついただけだった。最近、巨大化能力に目覚めた由衣は「災厄の街」をしょっちゅう襲撃する怪獣退治に駆り出されるようになっていた。
今まで怪獣と戦ってきた舞が高校受験という名の怪獣と巨大化せずに戦わなくてはならなくなったからだったが……。
由衣にバトンタッチしてからは確実に<被害>は増えていた。
「街を元に戻すおじさんたちの苦労も分かってやりなさいよ。一晩で戻すのは大変なんだから」
「だから毎回派手に壊せるんだ。今度会ったらお礼言っておくね。でも、どうやって元に戻してるの? あたしが暴れたら瓦礫しか残らないし、爆発炎上も毎回なのに」
「そういうメタな発言はここでは無し」
自分自身がメタな発言をしている自覚もないまま、舞は体の向きを変えた。
高校受験という名の怪獣は強敵だった。今まで戦っては葬り去ってきた怪獣たちと比べればはるかに。
あーあ。わたしも大暴れしたーい! 邪魔なビルなんかぜーんぶ蹴散らして車をめちゃめちゃに踏み潰しまくって、電車を掴み上げて武器の代わりにしてしまって……。
かつて<破壊の女神>と影で言われていた時の事を思い出しながら、妹を部屋の外に出そうとした時だった。
携帯が鳴った。慌てて自分のそれを手にした舞だったが、すぐに由衣が携帯を耳に当てていることに気づく。
「はい。……え? また出動? こんなに早く……え、大丈夫大丈夫! いつでも駆けつけるから! で、相手は……へ? お米がどうかしたの?」

「うむうむ。大成功! モデルがよかったな」
「道真公……。あれはなんじゃ? 年端いかぬ小娘が何十倍にも大きくなっただけではないか」
「しかし、美しい娘だのう。子供とはいえ、もう少しすれば引く手もあまたではないか。しかも壺装束姿とは懐かしい……」
「最近の若い者の服装など分からぬからとりあえず私たちに合わせただけだ。似合ってるではないか」
「それはそうだが……。あの娘、どこで見つけてきた?」
「なに、少し心に邪なものがあったから憂さを晴らす手伝いをしようと申し出ただけだ。なにせ私は学問の神様ということになっている。意外と簡単に信じてくれたぞ」
「道真公……。そなた、詐欺師の素質もあったのか?」
「藤氏と戦わなくては何もできなかったからな。贅沢は言ってられぬ。ほら、始まるぞ。怨霊の新たな戦い方、見るといい!」
「道真公が趣味に走ってるだけように思えるのは拙者だけか……?」

高校受験を来年に控え、少女の気持ちは鬱屈していた。
親も教師も塾の講師もみんなうるさかった。
それなのに、根がおとなしい少女は何も言えずにいた。言いたいことは無数にあるのに、口を突くのは「はい」という返事だけ。このままではストレスで頭がおかしくなりそうだった。
天神様。どうか、どうか私を高校に合格させてください。何でもしますから!
困った時の神頼みというわけではないが、通学路に面した天神様に思わず祈ってしまった時だった。
<今、なんでもすると申したな? よいだろう。そなたの願い、学問の神様である私が叶えて進ぜよう。その代わり、少しだけ私に付き合ってもらいたい。なに、ただの憂さ晴らしだ。気にすることはないぞ>
渋みのあるダンディな声が心に響き渡った。
<本当ですか!?>
<天神に二言はない。さて、決まりならばさっそく付き合ってもらうぞ。せいぜい楽しむがいい!>
<え、ち、ちょっと待って……。何をするの……!?>

その日、「災厄の街」に新たな災厄が降り注いだ。
街のやや外れ付近に、身長50メートルはあろうかという巨大な着物姿の少女が現れたのだ。壺装束に市女笠、そして半身を覆う被衣。とあるお米のパッケージに描かれた和風美少女そのものだった。
「……。どうなってるの、これ?」
自分の姿を確かめて、巨大化した少女……三佳(みか)は呆然としてつぶやいた。長い黒髪に漆黒の瞳といういかにもなルックスに合う衣装はさておき、怪獣のようになるとは思いもよらなかった。
<よいよい。よく似合ってるぞ。さっそく大暴れするのだ。この街を全て滅ぼしてしまうのだ>
心の中に天神様?の声が響き渡る。
<ちなみに動き易いように着物にはスリットが入ってるし、笠も邪魔なら脱いでもよい。今のおぬしは何をされても痛みも熱さも感じない存在だから好きに暴れて憂さを晴らすといい>
「……。暴れたら、高校に合格させてくれる?」
<もちろんだ。おぬしが努力していることは私も知っている。それに報いて進ぜよう>
三佳の形のいい唇に笑みが浮かんだ。願いが叶うならば何をしてもいいとさえ思い詰めていた。
何か知らないけど、怪獣になれるのは本当みたい。じゃ、さっそく……。
日常のように怪獣が襲撃してくるだけあって、既に周囲にいた人間は全員避難を完了している。好きなだけ破壊活動が出来ると判断して、三佳はついに大暴れを始めた。
最初に破壊したのは目の前に広がる住宅地だった。黒塗りの草履と白足袋に包まれた足で踏みつけただけで、次々に瓦礫になっていく。
気持ちいいかも……。思ったよりずっと楽しいじゃない。怪獣になるとこんな気分がいいなんて思わなかった。えいっ!
心の中の掛け声と同時に、巨大化した三佳は立ち塞がったマンションに蹴りを入れた。草履に包まれた足は正確に中央部を直撃し、大穴を開ける。それでもまだ建物が無事だったので、スリットから伸びるすらりとした足を振り上げて思い切り踏み潰してしまった。
やっちゃった……。もう取り返しなんかつかないわね。こうなったら好きなだけ暴れてやるから!
瓦礫と化したマンションを踏みつけながら、三佳は生まれて初めて感じる快感に酔っていた。躊躇いは愉悦によって退けられ、次第に本能的な破壊衝動が全身を満たしていく。
にしても、この格好で暴れるのも面白いわね。昔の格好だけど、結構可愛いし。でも……。こんなことをしたりして。
無邪気に笑って、巨大着物少女はゆっくりと歩き始めた。足元の道路は陥没し、踏み潰された車などが爆発炎上していたが、それらを背景にしながら悠然と歩いて行く。両手で半透明の被衣を軽くたくし上げ、和風美少女らしくポーズを決めていたが、足元では想像を絶するような破壊劇が続いていた。
立ち塞がった建物は全て足だけで破壊されて瓦礫となり、そこに蹴飛ばされた車やトラックが突っ込んで爆発する。
電線が切れて火花を散らし、倒れた電柱が無残な姿を晒す。
住宅もビルもまとめて蹴散らされ、挙句の果てに炎上してさらに無傷の建物を巻き込んでいく。
それでも、三佳はまったく平気だった。
「あ、面白そうなもの見つけた♪」
一通り周囲を破壊した巨大少女が新たに目をつけたのは、自分の背丈の半分以上の高さのある高圧電線塔だった。足元の建物を蹴散らして駆け寄ると、力を込めて両手で掴む。
「……あ、簡単に抜けそう。えいっ!」
次の瞬間、切れた電線からまとめて火花が散って、三佳は驚きのあまりその場に尻もちをついてしまった。着物に包まれた形のいいピップがさらに住宅などを潰したが、両手では地面から引きぬいた高圧電線塔を持ったままだった。
「これを武器にするのが怪獣映画のお約束。もっともっと壊してしまうんだから!」
 それでも、巨大化した少女はすぐに立ち上がった。着物についた瓦礫やスクラップを払い、両手に持った電線塔を握りしめて近くにあったマンション群に狙いを定める。十数棟の建物が緑地帯の中に立ち並んでいたが、三佳にしてみればただの獲物だった。
緑地帯すらも足だけで蹴散らしながら突き進んでくると、高圧電線塔を武器にして建物を真っ二つにしたり、蹴飛ばしたり、両手をついて押し潰したりやりたい放題だったからである。
「あ、電線塔壊れちゃった……。弱いんだから、もう」
気がつくと、両手で持っていた電線塔はただの鉄くずになっていた。すっかり破壊活動に酔っていた三佳は役に立たなくなったそれを手だけでねじ曲げてしまうと、壊したばかりの建物に叩きつける。無残としか言いようがない破壊劇だったが、本人は気持ちよくて仕方なかった。
「あーあ。全部めちゃめちゃにしちゃった♪」
マンション群とその周囲の住宅などもまとめて壊滅させて、三佳は満足そうに笑った。スリットが入っているので着物姿でも暴れやすかったし、何よりも綺麗な姿で怪獣のように暴れる背徳感がぞくぞくする程気持ちよかった。
そろそろもっと大きな建物を壊してしまうのもいいわね。中心部を全部壊してしまってそれから……。
そんな事を考えながら、足元の瓦礫を蹴散らしながら歩き始めた時だった。
「待ちなさい! これ以上街を壊すのは許さないから!」
強気ながらも幼さを残した少女の声が耳に届いた。

……
巨大着物少女・三佳のコスチュームはお米のパッケージに描かれたイラストそのものです。壺装束といって平安時代の高貴な女性の外出姿だったので、道真たちが知っているのはある意味当然です。もっとも、そのままでは動きづらいので着物にはスリットを入れてみました。にしても、切れ目からすらりとした足がのぞくのは別のフェチを刺激しそうですね。その足が白足袋と草履に包まれていると尚更……。
第2話はいよいよ破壊大好き巨大女子小学生・由衣と巨大着物少女・三佳の対決です。もうこうなると街は無事では済みません(笑)。さて、どちらが勝つのか……。お楽しみに!

次回の更新はいつものようにイラストですので、来週には更新したいと思っています。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

怨霊であり神様な方たち

皆さん、最初は怨霊扱いだったのに今では神様ですからね……。特に道真公。

崇徳院「私は怨霊だなんて御大層なものではないのだが。ただ、都には帰りたかったのう……」

将門「拙者は色々あって戦っただけのことだというのに関東を守護する怨霊などと言われるとな。まあ、帝都物語で有名になってしまったから仕方ないかも知れぬ」

道真「これでも受験生たちの願いを叶えてやるのは大変なのだぞ。少しぐらい憂さ晴らししてもいいではないか。……何やら無邪気で強烈な<力>を感じるが、はて誰なのやら?」
プロフィール

小笠原智広

Author:小笠原智広
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード