無意識の迷宮(1)―古明地こいしの場合―

今回は前回の予告した通り、SSです。ガリクソンさんからリクエストに応えて、「東方地霊殿」の古明地姉妹にまつわるお話を連載していきます。まずは第1回目は妹のこいしにまつわるお話です。

……
 幻想郷の片隅にある道具屋・香霖堂。
 その店には、時々不思議な物が持ち込まれる。
 それらを鑑定して、売り物とするのは店主である霖之助の得意とするところだったが、この日持ち込まれたのは……。
「ふむ。この箱の名前は<超次元の箱庭>。用途はこの中に好きな<世界>を再現すること、だな」
 カウンターに置かれた古い木箱の鑑定を終えて、霖之助は顔を上げた。目の前にいるのは、黄色の上着と緑色のスカートがよく似合う少女。名前は確か……。
「好きな世界を再現できるの? この箱の中に?」
 さっきまでは光の無かった瞳を輝かせながら、少女……古明地こいしが問いかけてくる。箱を持って店の中に入ってきた時とは別人のような態度だったが、霖之助は眼鏡を上げながら淡々と答える。
「ああ。ただ、僕の能力ではその方法は分からない。どこで拾ったんだい?」
「無縁塚。ふらふら歩いてたら落ちてたの」
「あそこか……。外の世界から流れてきたようには見えないんだがな。これは幻想郷の中で作られたものだ」
 無縁塚と聞いて、霖之助はわずかに眉をひそめた。てっきり外の世界の技術で作られた物だと思い込んでいたからだった。
「ふーん。でも使い方が分からないんじゃ意味ないじゃない」
「それは仕方ない。どうしても使いたかったら自分で何とかして欲しい。もし不要だったら僕が買い取ろう」
「うーん……。いいや。自分で何とかするから」
「何とか?」
 そんなことが出来るのか?
 霖之助の問いかけは、言葉にならずに終わった。
 ついさっきまで少女のいた場所には誰もおらず、薔薇の花びらが数枚、舞っていただけだった。
「……。取り込まれたのか? さて、どうしたものか」
 つぶやいたものの、妙案も方策もあるわけなかった。
 意味もなく眼鏡を上げると、何もなかったかのように読みかけの本に神経を集中させたからだった。
 
心地よい風が柔らかな髪を揺らして、こいしは目を開けた。
「え……?」
 目の前に広がっていたのは、見たこともない景色だった。無機質な材料で作られたようにしか見えない無数の建物、硬くて冷たそうな道路、そこに置かれた色々な物体。
 いずれも小さなおもちゃのようにしか見えなかった。
「ここは……どこ?」
 つぶやいたものの、答えを期待したわけではなかった。無意識の内に行動する少女・こいしは気がつくとまったく知らない場所にいることがたびたびあったからだった。
「もしかして、街なの? 外の世界の……」
 小さな胸に手を当てて、自分なりに答えを見つけ出す。どこかで読んだ本の中に、似たような光景の絵があったような気がしたからだった。
 でもどうしてこんなに小さいの? あ、もしかして私がおっきくなったのかも。よく分からないけど……。
 しばし考えた後。
 こいしの口元に笑みが浮かんだ。瞳に浮かんだのは、恐れを全く知らない無邪気な光。小さな街と巨大な自分を対比した瞬間、あることを思いついたのだった。
「これ……全部めちゃめちゃにしたらとっても楽しそう。私の方がずっと大きいんだし、簡単だよね♪」
 なぜこんな結論に至ったのか、本人もきっと分からないままだろう。それでもこいしは行動を開始した。
 まずは目の前に広がる住宅街をローファーで蹂躙しながら歩く。小さな建物を破壊するのが快感で、こいしは楽しげな声を上げる。

街破壊巨大少女幻想71

「簡単簡単。幾らでもめちゃめちゃに出来るじゃない」
 足に絡んできた電線を軽く振り払い、こいしは笑った。
「全部こうしてしまうんだから。この街は私のおもちゃなんだし」
 そう言いながら、巨大化したこいしはさらに歩き回ってみせる。立ち塞がったマンションは軽く蹴りを入れて崩壊させ、高圧電線は全身を使って断ち切る。派手に火花が散ったのでちょっとだけびっくりしたが、自分より背丈の低い電線塔に手を掛けると、引き抜いてしまう。
「こういうのを使うのも面白そう♪ えいっ」
 掛け声は可愛らしかったが、行動は残酷そのものだった。電線等は巨大化した少女の武器となって、周囲のマンションやビなどを破壊していったからだった。すぐに電線塔は原形を失い、周囲に鋼材を飛び散らせたが、こいしはそれを手だけでねじ曲げてしまうと、まだ壊していなかった地区に叩きつけてしまった。
「今度はあそこを壊そっと♪」
 自分の周囲が瓦礫だらけになったのを確かめて、こいしは新たな<遊び場> に向かった。瓦礫を蹴散らしながら、車がぎっしりと停まった大通りに足を踏み入れたからだった。
 まずはローファーに包まれた足で車を全部破壊する。大量のスクラップだけが後に残り、一部は爆発炎上したが、その黒煙をかき分けながらちょこんと座り込む。
「これ知ってる。確か車……だったかな? でもちっちゃいから壊すのなんて簡単♪」
 楽しそうに言い切ると、周囲の車を両手でかき集めて自分の体で押し潰す。壊された車がぼろぼろとスカートの上に落ちていったが、今度は大通りの上に無造作に横になる。
「このまま転がってみたりして。こーやって……」
 言葉と行動が同時だった。約50倍サイズまで巨大化したこいしは周囲の建物にも構わず転がってしまった。スカートがまくれて太ももがむき出しになり、その奥には縞模様がわずかに見えたが、羞恥心を持ち合わせていない少女はまったく気にせずに全身を使って建物を壊し尽くす。
「あーあ。めちゃめちゃにしちゃった」
 散々建物や車を壊してから、こいしは体を起こした。全身についた瓦礫やスクラップを手で払うと立ち上がる。
「でももっと壊しちゃうの。こーすると、どうなるかな?」
 思いつきを実行に移すまで、時間はかからなかった。息を吸い込んで、こいしは思い切りジャンプしたからだった。そのまま、まだ壊していない中心街付近に着地する。ふわりとスカートが大きく広がり、下着が丸見えになったが、足場にされた建物は一瞬の内に原形を残さず崩壊する。周囲の建物もまた巨大な少女の起こした地震によって土台から倒れていく。地面には巨大なひび割れが発生し、車や壊された建物がその中に落ちていったが、こいしの瞳には喜色さえ浮かんでいた。
「凄い……。幾らでも壊せるんだ。もっとめちゃめちゃにしてしまうのも面白そう」
 それからはこいしの独壇場だった。
 中心街付近のビルをまとめて、手足を使って破壊する。
 かなり背の高いビルを振り上げた足で潰してしまう。
 挙句の果てにはガスタンク基地を見つけると、タンクを思い切り蹴飛ばして大爆発させる。
 それでも、こいしには傷一つつかなかった。
「まだまだ幾らでも壊せそう♪ 私は無敵なんだから」
 街の三分の一を破壊しても、こいしの暴走は止まりそうになかった。まだ壊していない地区を見つけると、嬉々とした笑みを浮かべて襲いかかっていったからだった。

「紫様、ここに置いておいた例の箱ですが、橙が勝手に持ちだしてその……」
「無縁塚で落としてしまったのね。慌てて探しに行ったら既に持ち去られた後だった……と言いたいの?」
「全てお見通しなのですね。申し訳ありません」
「いいのよ。箱なら今、香霖堂にあるから。面白いことになってるわ。ふふ。姉の方も向かってるみたいね。これからどうなるのかしら? 楽しみね♪」

……
今回はここまでです。第2回は姉のさとり編をお送りします。

次回は2週間後の更新を予定しています(来週はコミティア参加の為、休ませてもらいます)。次回はイラストを更新しますのでお楽しみに!

【連絡】
ホームページ「木蘭優駿」では、オリジナル巨大娘長編小説「箱庭世界の巨大少女剣士」の連載を続けています。こちらもよろしく!
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コメント

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待ってました古明地姉妹編。いつもと違う始まり方でもやっぱりスキマ妖怪が関わるのは最早お約束ですねwこいしちゃんの無邪気さからの大暴れは悪意ある侵略者より恐ろしいですがそれがいい!次回はさとりんの大暴れかキャッキャウフフかいずれにしろ今から楽しみです。古明地!俺だ踏んでくれ

裏でなにかしら絡んでる隙間様・・

再度リクエストしてみても良いかしら?

No title

にとりの巨大娘のssも読んでみたいです

はじめまして。
いつもブログ、楽しく拝見させていただいてます。

今回のお話も、無邪気に街を派手に破壊してて、とても良かったですw
遊び場と化した街で、建物をローファーで蹴散らしたり、ガスタンクで火の海にする等、中々の傍若無人ぶり・・・
次回の更新が非常に楽しみです。

それから先日、小笠原様のを参考に、OMCで絵をオーダーして、出来上がった絵を紹介するブログを作成しました。
よろしければ小笠原様のブログのリンクを張りたいと思っているのですが、よろしいでしょうか・・・?

コメント遅れて申し訳ありません

別の記事でも触れているように、右手首を脱臼骨折してしまった関係でコメント返しが大幅に遅れてしまいました。済みません……。

>ガリクソン様
私もすっかり楽しみながら書いている古明地姉妹編開幕です。こいしちゃんは無邪気かつ無意識なので決して容赦はしないと思います。とすれば、姉の方はどうなるんでしょうねえ……(笑)。その答えを次回更新で明らかにしてみせますのでお楽しみに!

>神風様
スキマ妖怪の関与はお約束です(笑)。リクはしばらく待ってくださいねー。

>ジョン様
にとりの巨大化も面白そうですね~。下手すると道具まで持ち出しかねませんからね。まだ書いたことが無いキャラですし、単発物でよければ挑戦してみます。

>ふずき様
こちらこそ初めまして。楽しんでいただきありがとうございます。ブログへのリンクは大歓迎です。私からもリンクさせてもらっていいでしょうか? OMC依頼組の新規参入は嬉しい限りです。

No title

>>戦国銀様
こちらも、ブログへのリンク大歓迎です。
今後とも、よろしくお願いします。

No title

>>戦国銀様
単発でもいいのでお願いしますー
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小笠原智広

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