天狗たちの破壊遊び(前編)

更新が遅れて申し訳ありません。ネタは決まったのですが、なかなか気持ちが乗らず、ここまで引きずってしまいました。前に書いた「東方」の天狗たちの物語の続編です。今回は椛がメインです!

……
「……。文さん、本当にいいんですか?」
我慢しきれなくなったかのように、犬走椛は口を開いた。朴訥とした雰囲気を持つ白狼天狗の少女は、約50倍サイズに巨大化して「外の世界」の街の中央に立っていた。
周囲には自分の身長よりも低いビルが立ち並び、道路には車がぎっしりと並んでいたが、なんとか壊さずに足場を作っていた。
「当然じゃない。この街は紫さんが用意した架空の街なんだから。幾ら壊してもなーんの被害も出ないから大丈夫」
両手を腰に当てて射命丸文が答える。彼女もまた巨大化して、椛のすぐ近くに立っていた。一本歯下駄が車を数台踏み潰していることに気づいて、白狼天狗の少女は声を上げそうになる。
「本当、なんですか? まあ、こんなことを出来るのは八雲様しかいないと思いますけど」
「当然じゃない。交渉したらすぐにオーケーを出してくれたんだから。それでわざわざ椛を呼んだんじゃない」
「なんで私なんです?」
「決まってるじゃない。面白そうに決まってるじゃない」
平然と言い切られて、椛は肩を落として溜息をついた。この鴉天狗のブン屋は何を考えているのか、未だによくわからない。
「さあ、ちゃんと取材してあげるから大暴れして。本当に好きにしてもいいんだから。何をしても痛くないし、爆発してもまったく平気だし」
「知ってます。文さんが書いたはたてさんの大暴れの記事は読みましたから」
「嬉しいわね。面白かったでしょう?」
「面白い……ですか?」
少しだけ、椛は言いよどんだ。言下に否定するのは簡単だったが、そうすることはなぜかできなかった。
面白いわけなんかありません。ここにある建造物を全部壊してしまうなんて。私は物を守ることはあっても破壊することは……。
「ふーん。だったらいいわ。言う通りにしたらこれ上げようと思ってたのに」
「えっ……。そ、それは……」
「昨日香霖堂に入荷したばかりの外の世界の将棋セットよ。面白いわね、これ。どこでも将棋が出来るように駒に全部磁石が入ってるんだから」
「うっ……」
「これがあれば将棋を中断しても駒が飛ぶのを心配しなくてもいいわね~。せっかくこれ上げようと思ったのに」
「……。分かりました。やればいいんですね、やれば」
「さすが椛は物分かりがいいわね。そういうこと。取材もさせてもらうわよ」
我が意を得て、文はにんまりと笑った。世の中要領のいいものが勝つ。改めてその原則を確認するかのような笑い方だった。

哨戒天狗としての地味な衣装に身を包んだ椛が、ゆっくりと歩き始めたのはそれからすぐのことだった。本当は、車すらも踏み潰したくなかったのだが、文から無言の圧力を感じてはそういうわけにもいかなかった。
「あっ……」
草履に包まれた足の下で、複数の車が潰れた瞬間、椛は思わず小さな声を上げた。あまりにあっけなくてほとんど気づかなかった程だった。
「どう? 簡単でしょう? 少し歩いたら思い切り蹴飛ばしてみて」
「蹴飛ばす……? そんな……」
「だったらこの将棋セットはいらないのね。私が貰っちゃうから」
「わう……」
白狼なのにも関わらず、可愛い犬のような声を漏らした椛だったが、やがて意を決すると思い切り右足を振り上げて壊したばかりの車をまとめて蹴飛ばした。草履の先が凶器となって道路上の車を全て薙ぎ払い、簡単に宙に舞う。一部は周囲の建物を巻き込み、爆発炎上するものもあったが、開き直った巨大少女は真面目な表情を崩さずに突き進む。袴がふわりと揺れて、通りに面した建物の看板などを落としたが、それすらも踏み潰して交差点の中央に立つ。
「うーん……。壊し方はいいんだけど、表情が固いわね。もっとスマイルスマイル!」
「そんな事を言われても困ります」
「楽しくないの? 幾らでも壊せるのに」
カメラのファインダーから目を離して、文は心底不思議そうな顔をしていた。かつて紫に誘われた時にははたてと大げんかしながら派手に街を壊したのだが、不思議と楽しかったからだった。
「まあいいか。それより、その周囲の建物を完全に壊して。色々な手を使って欲しいわね。特に胸でやっちゃうのはお約束だから」
「む、胸って……」
「椛だって十分に大きいじゃない。服が白いから鏡餅みたいってよく言われてるじゃない。美味しそう♪ 鏡餅、鏡餅……」
「それを言わないで下さい!」
頭に血が上った瞬間、椛は自分が巨大化しているのを忘れた。白狼天狗の仲間内でもからかわれている言葉を連呼する文に向かって、飛びかかろうしたからだったが……。目の前には建物が当然のように建っていた。
次の瞬間、轟音が辺りを支配して、何が起きたか悟った文はにんまりとしてカメラを構え直した。
ファインダーの中では、白い袖に包まれた腕でさらに周囲の建物を壊しながら、巨大化した椛が瓦礫の上に座り込んでいた。本人はきょとんとするだけだったが、かつて存在していたビルなどは全て崩壊し、交差点も瓦礫だらけになっていた。
「ほら、やれば出来るじゃない」
「これは……。私が?」
「当然じゃない。うん、その調子その調子」
「……」
何も言わずに、椛は立ち上がった。肩がわずかに触れて、辛うじて原形を留めていた建物が崩れてきたが、構わずに立ち上がる。自分で起こした破壊の規模が信じられないようだった。
「文さん」
「ん、なに?」
「この街、本当に全部壊していいんですよね?」
「当然じゃない。全部壊したらご褒美にさっきの将棋セットを上げるわよ」
「その約束、忘れないで下さいね」
文が小さく頷くのと同時に、ついに巨大化した椛は本格的に破壊活動を始めた。まずは交差点の周囲の建物を、袴に包まれた足だけで全て破壊する。それでも物足りなかったので、瓦礫を踏みつけながらかなり大きなマンションに肘打ちを食らわせると、両手で屋上部分を掴んで引きちぎる。これで建物は上半分が椛の手に握られる形になったが、それをさらに建物に叩きつけて崩壊させる。派手な土煙が上がり、瓦礫が周囲に飛び散ったが、巨大な白狼天狗は気にしている様子を見せなかった。
「いい破壊ぶりね……。椛って真面目だから一度火がつくと凄いわね」
「こんな力がつくなんて思いませんでした。それに、全然痛くないですからね」
そう言いながら、椛はまたもやビルを両手で掴み上げていた。それを無造作にまだ壊していない地区に叩きつけると、そこ目掛けて豪快なスライディングを敢行する。本気になった巨大少女の凶行によって、多くの建物が成すすべなく破壊されていく。
「これだけ壊してもまだ無事な場所がこんなにあるなんて……。もっとやっていいんですよね?」
「当然じゃない。私は撮影しかしないから」
椛が頷いた瞬間、その口元に笑みが浮かんだのを文は見逃さなかった。さらになる破壊劇を文が期待するのと同時に。椛は己の本能に忠実に行動した。
まだ壊していなかった住宅街に向かってゆっくりと転がったからだった。鏡餅のように立派で柔らかい胸が建物を押し潰していく感覚は、真面目な性格の少女の秘められた部分を刺激したが、構ったりせずに一回転して身体を起こす。巨体からは破片などがばらばらと落ちてきたが、軽く振り払うとすぐに立ち上がる。
「武器があると面白いですね……たとえば、こういうのとか」
内心考えていることを口に出しながら、椛は無造作に建物や車などを蹴散らして歩く。その先にあったのは、鉄道の高架線だった。
「いいものに目をつけたわね。はたてもそれで散々遊んでたし」
「これで遊んだんですね……意外と軽い」
高架線にあった電車を無造作に掴み上げて、椛は少しびっくりした。遊ぶにはちょうどいい大きさだったが、<強度>が少し足りないような気がした。
「でも、この程度ならこんな事もできますね。えいっ」
小さな掛け声と同時に、電車は簡単に編成の中程から引きちぎられた。切り離された部分は落下して高架線を破壊したが、椛はそれすらも草履に包まれた足の下で踏み潰すと、なんとふっくらとした胸で挟み込んで簡単に壊してしまった。
「椛って意外と大胆……」
「はたてさんもやってたじゃないですか。真似しただけです」
「そういう問題じゃないと思うけど」
なぜか、文の心の片隅に暗雲が立ち込めてきたのはその時だった。もしかすると、自分はとんでもないことをしてしまったのではないか。そんな気がしたからだったが……。
文の気持ちに気づかないまま、椛は大暴れを続けた。電車を胸だけで壊してしまうと、今度は袴に包まれたヒップで高架線を派手に壊してしまったからだった。その上に足を伸ばし、気持ちよさそうな表情を見せると、ゆっくりと立ち上がる。
「そろそろ派手にいきたいですね。だったら……」
興奮しているのか、狼の白い尻尾を揺らしながら今度は目についた大型の工場に襲いかかる。正門などは簡単に蹴散らし、邪魔な建物は足だけで壊すと、中央付近にあった化学プラント目掛けて壊した建物から引きぬいた屋根を叩きつける。
次の瞬間、今までの中で最大級の爆発が起こり、さすがの文もびっくりして髪を抑えた。工場は爆発によって派手に炎上し、その周囲も爆風によって壊滅していたが、炎の中央で。巨大化した椛は悠然と立っていた。
「こんな感じでどうですか? 文さん」
「い、いいと思うけど……」
椛ってもしかすると、一度破壊を始めると止まらないかも……。
そんな考えがちらっとよぎった時だった。
「あー! なんで文に椛が遊んでるのよ!」
すっかり聞き慣れたライバルの少女の声が耳を貫いた。

……
私が書く椛は、かつてシナリオの一部を手がけた同人ゲーム「逆転東方」に出てくる椛がベースです。男の娘のように中性的ながらも、気配り上手で苦労人というイメージです。あと、文の性格もやはりゲームの影響を受けているのかもしれません(何作か関わりましたからね。苦労も多かったのですが、面白かったです)。
次回の更新はイラストですので、来週にはアップしたいと思います。その後に今回のSSの後編を掲載したいと思います。その後は……おそらく夏コミ明けの更新となると思います。


おまけ。
別のところにもアップしたのですが、自作の巨大娘イラストです。「月華の剣士」の一条あかりを巨大化させてみました。
街破壊巨大少女幻想61
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No title

更新お疲れ様です。

爆乳椛の破壊劇!いいですね!
その胸に挟み潰されたい

「逆転東方」購入してましたよー!
真ふくめて1~3そろえてました。

次の爆乳3天狗の胸での破壊も楽しみにしてます!

いつもありがとうございます!

>契音様
ありがとうございます。やっぱり胸ネタは欠かせないと思って入れました。どうしても椛の胸は鏡餅に
見えてしまって困ります(笑)。

「逆転東方」買っていただきありがとうございます。私は「2」「3」の2話を担当しました(他には号外版などの
単発シナリオ)が、色々と好き放題にやったような気がしてなりませんw

後編もお楽しみに!

逆転東方の新作が出ないが今か今か待ってます。

夏の祭典まで一月はもう切りましたね。
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