反逆の従者-箱庭世界の巨大剣闘士-(3)(完)

遅くっなってしまい済みませんでした。例大祭にサークル参加した関係でその準備に追われていたので更新どころではありませんでした。そのかわり、当初は入れる予定はなかったイラストを入れました(笑)。本当は薫と黒羽の絡みが描いてみたかったので……。

……
吸血鬼と、彼女を仕留めようとするハンターの戦いは、実在の街を戦場にしてなおも続いた。ふたりの巨大少女が組み合い、相手を投げ飛ばしたり転がるたびに建物は破壊されていき、道路上の車は潰されて派手に炎上する。気がついた時には大きな街はほとんどが破壊されるか炎上するかの状態になっていたが、それでも決着はつかなかった。
いや、正確に言うならば決着は先延ばしにされていた。
よく見ると攻撃を続けているのは黒羽だけで、薫はそれを防ぎながら逃げ回っていたからだった。
「あーあ。酷いわね。街がめちゃめちゃじゃない。あんたが逃げるたびに破壊が進んでいる自覚はあるのかしら?」
壊滅させたばかりの住宅街を足場に、黒羽は両手を腰に当てて溜め息をついたが、口元には微笑が浮かんでいる。穏やかな雰囲気の美少女が街を解決させながら逃げまわる様を眺めるのは、その血を吸うより楽しかった。
「そ、それは……」
薫はまだ壊されていない遊園地を背景にして駐車場に座り込んでいた。スカートから伸びる足は車を潰し、アスファルトを陥没させていたが、当の本人は混乱する心を鎮めようと必死だった。
刀が、見つからない……。あれが無いとわたしどころか響でも勝てるわけがないのに。でもいったいどこに……。
「わたしの質問に答えて欲しいわね、藤間薫!」
「誰が……お前の質問なんかに……」
「ふーん。まだ無駄口を叩く余裕はあるみたいね。あんたの狙いはこれじゃないかしら?」
言い切った瞬間。魔法のように黒羽の手に黒塗りの鞘を持つ刀が現れた。それが目に入った瞬間、薫の理性は一時的に吹き飛んだ。
飛び跳ねるように立ち上がると、足元にまだ壊していない車があるのにも関わらず、黒羽に飛びかかったからだった。
「ばか。もう何も見えないのね」
吸血鬼ハンターの少女の愚行は、吸血鬼の反撃によって断ち切られた。少し力を込めてキックを食らわせると、そのまま遊園地の正面ゲートを破壊しながら転がる羽目になったからだった。強烈な痛みに薫の意識がまたも薄れそうになる。
「今度は遊園地も壊してしまう気ね。もう、幾らなんでも壊しすぎじゃない。怪獣じゃないんだから」
「くっ……」
「でも、あんたを怪獣にできたら楽しいわね。その衣装はよく似合ってるし、ルックスも人間にしては悪くないし。やっぱり手元に置いておきたいわね」
「何を……何を言ってるの?」
「そろそろ種明かしをしてもいいわね」
自分が操る箱庭の中にいる為か、簡単に手に持っていた刀を消し去って、黒羽は愉悦の笑みを浮かべた。プレゼントを大好きな相手に渡す時のような口ぶりて説明を始める。
「なぜ私があんたの妹を殺さなかったか分かるかしら?」
「え?」
「その気になれば殺すことは十分にできたのよ。でも、私はあえて呪いをかけただけであえて送り返した。私にしては寛大過ぎると思わない? 藤間響のお姉さん」
「何を言ってるのか……わからないわ」
ようやく薫が体を起こした。壊滅した遊園地の正面ゲートを足場に黒羽を見据える。その瞳に光はほとんど残っていなかった。
「それはね、あんたを私の前に引っ張りだす為よ!」
言葉の意味を理解できず、ぼんやりする薫を黒羽は見逃さなかった。すかさず間合いを詰めると、その巨体を遊園地の中央部に投げ飛ばしたからだった。
「あっ……!」
「うわーよく壊れるわね。観覧車もジェットコースターも巻き込んでしまったじゃない。みんなめちゃめちゃ。この遊園地はあんたは妹とよく遊んだのじゃないかしら?」
「……」
「図星だったようね。でも、そんな場所を自分で壊すのは快感じゃないかしら? 特別な背徳感があるんじゃないの?」
「……」
「そうみたいね。あんたは可愛い顔をしてとんでもない破壊衝動の持ち主なんだから。小さい時から密かに怪獣に憧れてたことぐらい知ってるのよ」
薫の目が大きく見開かれた。妹すら知らない事実を、目の前の吸血鬼は知っている……。
一撃で根本から倒してしまった観覧車の上に置いていた手をきつく握りしめたが、抵抗する力は残っていなかった。
「しかも、ルックスも性格も私の好み。こうなると欲しくてたまらなくなるのよね。今の私には<下僕>はいるけど、<従者>はいないから」
「それが、どうしたのよ……。お前は人間を餌程度に思ってるんじゃないの?」
「そうだけど、たまには役に立つ人間や好みに合う人間がいるじゃない。そういう人間は別。血を吸って闇の眷属にしてしまうの。そうすればただの餌から下僕まで昇格するわ」
「……まさか」
「そのまさかよ。藤間薫。私はあんたを従者にして、手元に置いておきたいの。あんたは私のテストに合格したのよ」
本能的な危機を感じて、薫はへっぴり腰のまま後さずった。すらりとした足がジェットコースターのレールをさらに破壊し、両手は施設を無造作に潰したが、恐怖に支配された少女に構っている余裕は無かった。
「栄光に思いなさい。従者というのは下僕よりさらに上の階級……普通の人間に与える最高の地位なんだから。従者になったらあんたの人間性も特別に認めてあげる」
「嫌……。絶対に嫌!」
「思い上がるのもいい加減にして欲しいわね。人間は吸血鬼よりはるかに下等な存在。わざわざ対等に近い立場にしてあげようっていうのにそれを嫌がるなんて」
「わたしは……。わたしは吸血鬼ハンターなのよ! あんたの従者になるぐらいなら死んでやるから!」
「だったら妹はどうでもいいのね」
「あっ……」
熱くなっていた心は一瞬の内に冷えきった。戦いが苦手な自分がわざわざ刀を握ったのは……。
「あんたが死んだら誰が妹さんを復活させるのかしら? 私が調べた限りではあんたの家には優秀な吸血鬼ハンターはいないわね。妹より弱いとはいえあんたが切札だったから!」
無造作に近づいてきた黒羽が、薫の手を掴んだ。無理やり立ち上がらせると、まだ壊していない地区目掛けて投げ飛ばす。もはや罪悪感すらも消えていた薫は施設を破壊して踏み留まる。
「卑怯者……」
「卑怯? 違うわ。これが作戦よ。あんたを手に入れるためのね。さあ、今度はこの遊園地を壊してしまいなさい! 」
その言葉を合図にするかのように、黒羽は攻撃を再開した。呆然とする薫の巨体自体を武器にして、遊園地の残っていた部分すらも破壊してしまったからだった。
そんな……。どうしたらいいの? このままだと私は闇の眷属にされてしまう。でも、ここで死んだら響もいずれ……。
最悪の二者択一だった。闇の眷属になれば吸血鬼ハンターとしての心構えは完全に消えてしまうだろう。しかし、ここで命を投げ出したとしても……。
「ついにこの街も壊滅したわね。いい破壊力ね。闇の眷属にしたら暇な時は街を壊して遊んでもらうのもいいわね」
「……」
「じゃ、そろそろ儀式を始めるわよ。念の為に動けなくした方がいいわね。血を吸う時に動かれると服が汚れて嫌なのよ」
笑いながら言うのと同時に。薫は全身が突然硬直するのを感じた。驚いて体のあちこちに力を込めたものの、まったく反応がない。
「慌てなくてもいいわ。大して時間はかからないから。私が血を吸えばあんたは生まれ変わる。楽しみね」
駄目……。このままだと私は吸血鬼になってしまう……。そうしたら誰も響を助ける事ができなくなる。せめて相打ちに持ち込みたかったのに……。
涙腺が熱くなったが、涙すらもこぼれない。まるで周囲の空気が実体化して全身を縛りつけてくるかのようだった。
これで終わり、なのかしら……。私も響も……。

街破壊巨大少女幻想58

背後から黒羽の両手が回された。今までと違って、人形を愛でるかのような柔らかな手つきだった。
「あんたって意外と胸が小さいのね。ま、いいわ。とっても可愛い顔をしてるし、実力もほどほどにあるから従者には最適ね」
まさか……。本当に気に入っている? 吸血鬼が、人間を……? でもどうにもならな……え?
ほんの一瞬、リボンと束ね髪に隠れたうなじで何かが脈打った。そこにあるのは確か……。
小さい時に彫られた護符? 確か万一の時は役に立つと聞いたけどその効果は……。
護符の役割を思い出した瞬間。
首筋に注射の時のような痛みが走り、吸血鬼の令嬢・黒羽の牙が突き立ったのを感じた。そこから一筋の血が流れた時、吸血鬼ハンターの少女は吸血鬼の従者となったのだった……。

長い回想を終えて、薫は小さな溜息を漏らした。吸血鬼ハンターになった時はまさか自分が吸血鬼の従者となるとは思わなかった。
でも、これしか方法は無かったわ。あそこで命を落としてたら誰も響を助けられなかったんだから。それにわたしも……。
今の薫は、日本で一番有力な吸血鬼・烏丸黒羽に仕えるメイドであり、従者だった。待遇は想像していたよりもずっとよく、今ではその立場を楽しむ余裕すらある程だった。
しかし。
薫は完全に吸血鬼に隷属したわけではなかった。
うなじに彫られた護符のお陰で、ほんの僅かながらも吸血鬼ハンターとしての<心>は残っていたからだった。
黒羽様は油断して気づいていないわ。今の私は黒羽様の従者だけど、時が来れば反撃に出る<反逆の従者>であることに……。
轟音と共に、巨大化した薫と向かい合うように巨大化したもう一人の少女が大通りの車を蹴散らして降り立った。
箱庭世界を舞台にした巨大剣闘士(グラディアトル)同士の対戦。今日の相手は黒羽の友人の吸血鬼に仕えるメイドが主人の命令で勝負を挑んできたのだった。
既に何度も戦っているので、お互い手の内はよく知ってる。
「これまでの対戦成績は2勝2敗。互角ね」
普段は仲のいい友人でもある対戦相手に、薫は気軽に声をかける。
「ええ。今日は負けません。特訓してきましたから」
「元吸血鬼ハンターのわたしに勝てるかしら?」
「やってみなくてはわかりません。さあ、今日も盛大に街を壊しながら勝負を楽しみませんか?」
「もちろん!」
吸血鬼としての従者としての立場を一時的に忘れて、薫は頷いた。
いつか主人に反逆の一撃を食らわせるためにも、この勝負は負けるわけにはいかなかった。

……

今回は残念なお知らせもあります。夏コミですが私のサークル「木蘭優駿」が落選してしまい、スペースが取れませんでした。夏コミで出す予定だった「箱庭世界の巨大剣闘士」の小説本の発行予定は現在ところ未定となっています。ただ、冬コミでも2冊目を出す予定でいるので、何とか夏には出したいと思っています。どういう方法にするかは未定ですが、幸い無料配布作品でもあるのでダウンロード配布という手もあるかなと現在検討中です。どうしても出したい作品ので手は尽くします。
ちなみにもう一冊夏コミで出す予定だった「東方」の秘封倶楽部が主人公の二次創作小説本「思い出の夏」(完全版)は3日目にサークル「すいかやさん」に委託させてもらうことになりした。今回の完全版の表紙はすいかやさんでもお馴染みの絵師・榊水夏さんが描いてくれることになりました(喜)。それでも無料配布ですので、興味のある方はお気軽にどうぞ!

次回は来週更新する予定です。久しぶりにイラストをアップしたいと思います。
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コメント

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吉報とは・・・

吉報とは・・・ならずか・・・

冬への挑戦を期待してますぞ。

知ってる巨大少女関連サーさん2件落選・・・今年は厳しいな・・・

☆夏に出す予定だったもう一冊は、是非ともなんらかの手段で手に入れたいです。

ただ出来たら配送系が良いな・・

ロッテ[私の様子を他の皆様にお披露目出来ないのが悔しいけれど・・]

リオン[お姉様、また冬コミと言うイベントがあるらしいよ]

申し訳ないです

>神風様
やっぱりコミケは激戦区ですから仕方ないです……。うっかり不備でもあると駄目ですからね。ちなみに冬コミは「東方」でスペースを取る予定ですので……最悪また落選もありえるかもしれません。

ロッテ「そんなことをしてたらいつまでも出せないんじゃないの?」
リオン「もう、手際が悪いんだから……」
ナターシャ「配送では料金も時間もかかりますから、最悪の場合はホームページからダウンロードでもしてもらうように頼みましょう」
ロッテ「任せるわ、ナターシャ」

……実はこれがメイド長ナターシャの初登場だったりしますが(笑)。

ダウンロード・・・・

仮にダウンロード形式になったら、うちダウンロード出来るか不安です。

ロッテ[もしかしたら、サー改名が良くなかったのかしら・・・サー改名で管理官達にあんまり認識して貰えなかったのかしら??]

リオン[もしかしたら、単にくじ引き抽選で漏れた形とか??・・でも私達の活躍の披露が延期ね・・]

ヒナ[最悪の最悪は、希望者にメール送信かしら・・・労力が半端じゃあないけどね]

ヒナはあちらのパチュリーに相当
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