反逆の従者-箱庭世界の巨大剣闘士-(2)

先週更新したばかりですが、今週は「反逆の従者」第2話をアップします。少しずつ描いたり(書いたり)して何とかまとめました。まずは先週触れたように、薫の主人(マスター)であり、吸血鬼である烏丸黒羽のイラストとプロフィールを公表します。

街破壊巨大少女幻想56

-死を呼ぶ黒き蝶-
烏丸黒羽(からすま・くろは)
能力:箱庭を操る程度の能力
危険度:極高
人間友好度:極低

日本土着の吸血鬼の中でも名門といわれる烏丸家の現当主。一見すると黒髪の令嬢であるが、人間を「餌」程度にしか思っていないので非常に危険である。彼女が相手にする人間は自ら血を吸って半分吸血鬼に仕立てた者(闇の眷属と呼ばれる)のみ。彼らは黒羽の命令に従い、烏丸家の資産を運用したり身の回りの世話をしている。
実力は「東方」で言うならば6ボス級、レミリア・スカーレットとほぼ互角と言われている。得意の戦法は自ら操る「箱庭」世界に相手を引き込み、叩きのめすこと。最近、その能力を生かして新たなゲームを開発し、楽しんでいるらしい。
近習に仕えるメイドは藤間薫。ゲームでは「巨大剣闘士」となり、黒羽の為に戦う。彼女については元吸血鬼ハンターという噂もあるが、真偽は不明である。


こんなところです。ちなみにここだけの話、黒羽は異世界の吸血鬼姉妹であるミアキス・ロッテ&リオンとは知り合い同士で、ロッテとは仲のいい友人同士です。この設定はいずれ意味を持ってきます(笑)。
それでは、物語をどうぞ。

……
最初に仕掛けたのは、黒羽の方だった。
下ろしただけの黒髪を大きく翻し、やや体を低くして突進してくる。足元の道路は陥没して大穴が空き、巻き込まれた車が爆発したりスクラップになったが、薫は冷静さを取り戻していた。
疾い……。でもこれなら勝てる!
刀の柄に手をかけると、全神経を集中させる。襲い掛かってくる瞬間を狙って、対吸血鬼用に鍛えられた刀を抜き払って斬りつければさすがの黒羽でも無事では済まない。そう読みきった。
あと一完歩まで迫った瞬間。
黒羽が右に変化した。立ち並ぶビルをブーツの底で蹴りつけて壊すと、そこを足場に斜め前から飛びかかってくる。
しかし、それすらも薫は読んでいた。
「はっ!」
裂帛の気合と共に、刀が鞘から抜かれた。人間とは思えない程の疾さで、黒羽の巨体を横薙ぎに払う。手応えを感じて、薫はわずかに笑みを浮かべたが……。
余裕はすぐに焦りに転じた。
腹部を両断されたはずの黒羽の姿が視野から消えたかと思うと、その後ろに崩壊してゆくデパートが見えたからだった。しかも、ナイフを入れたケーキのように真横に両断されて。
「えっ……まさか……」
自分の刀がよく行っていた駅前のデパートを両断したと気づいた途端、今までの何倍もの罪悪感が襲ってきた。慌てて刀を収めたものの、建物はすぐ横の商店街のアーケードを押し潰して派手に埃を巻き上げる。どう考えてもかなりの被害だった。
「そんな……」
その時、薫は吸血鬼ハンターではなく、ただの高校生に戻っていた。周囲を全く警戒するわけでもなくただ呆然としていたが……。
「甘いわね!」
上から黒羽の声が聞こえた瞬間、ようやく自覚が戻った。気配を感じて、多少の被害は覚悟の上で前に転がって逃れようとしたが、無駄な努力に終わった。
「くっ……」
背骨が折れるかのような痛撃が、30倍サイズに巨大化した身体を襲った。幻影を残して宙に舞った黒羽が降下しながら、得意のキックを放ったのだった。まったく受け身も取れず、薫は自分が壊したデパートを抱きかかえるようにして倒れ、思い切り転がる。
綺麗な衣装に包まれた全身がデパートの周囲に立ち並ぶ建物をまとめて薙ぎ払い、駅前の商業地区を半壊状態に追い込む。すらりとした足は大通りに投げ出され、車をまとめて破壊する。
「あーあ。めちゃめちゃにしてるわね。あんたが住んでる街なのに自分で壊してしまうなんて」
わざわざ壊していない地区に着地して、黒羽は愉悦に満ちた笑みを浮かべた。
「そんなあんたには少しお仕置きが必要なようね。こーやって!」
足元の建物をブーツに包まれた足で壊しながら、黒羽は目についた建物……電話局に襲いかかった。簡単に建物を破壊すると、屋上にあった大型のアンテナを両手で引き抜いて両手で持つ。
「さあ、私に逆らったことを後悔しなさい! たかが人間の分際で!」
その宣言を、薫はぼんやりとした意識の中で聞いた。蹴られた背中が恐ろしく痛む。骨が折れたのではないかと危惧したが、全身に力を込めるとなんとか身体を起こすことができた。
駄目……。このままでは。駅前が、もうめちゃめちゃ……。もし現実とリンクしてたら今頃どうなってるか……。
優秀な吸血鬼ハンターだった妹の響が負けた理由がはっきりと分かったような気がした。もし、同じ罠に落ちたら……。
不意に、肩に強い痛みを感じた。目の前に白と赤の棒が複数飛び散り、瓦礫の上に落ちていく。
「そんなにお仕置きされたいの? 嬉しいわね。あんたは顔が可愛いから苛めがいがあるわ!」
一撃は、黒羽が振り下ろした電話局の鉄塔によるものだった。飛び散ったのが鉄塔を構成していた鉄骨だと理解した途端、自分が巨大化していることを改めて認識する。
再び振り下ろされた鉄塔を、薫は後先考えない前転で回避した。無傷だった建物が巻き込まれて崩壊していったが、構っていられなかった。駅前を犠牲にしてでも黒羽を仕留めよう。そう決意したからだった。
「とうとう自分で建物を壊し始めたわね。楽しいでしょう? 無敵の怪獣みたいで」
「そんなわけ……ないっ!」
ようやく背中の痛みがひいてきた。しかし、薫はそれを相手に悟られぬようにしながら、ゆっくりと立ち上がる。ブーツに包まれた足でかつてはビルだった部分を踏みつけて身構える。
「その瞳……いいわね。諦めを知らない愚か者の瞳。とっても好きよ、そういうのは!」
原型を失いつつある鉄塔を両手で持って、黒羽が襲いかかってきた。また変化があると思った薫だったが、正面から狙ってきたこともあって見切ることができた。
振り下ろされた鉄塔を、左腕でガードしながら、がら空きになった腹部に膝蹴りを叩き込む。巨大吸血鬼が驚いた表情を浮かべたのを見逃さず、すかさず右手で鉄塔を掴む。
「あっ!」
「これさえ奪ってしまえば勝ち!」
隙を突かれたのか、黒羽は簡単に鉄塔を奪われてしまった。二人の身長の半分近くはある鉄骨製の塔は、吸血鬼ハンターの少女の手に渡り、今度は吸血鬼に対する武器となる。
最初に、横から顔を殴りつける。派手に鉄骨が散らばり、塔の大きさが半分になったが、薫はここぞとばかりにブラウスに包まれたみぞおち付近に塔の残りを突き刺した。瀟洒なブラウスが破れ、皮膚に浅い傷が生じる。
「よくも……餌の分際で!」
黒羽の色白な肌が、屈辱で赤く染まった。プライドの塊である吸血鬼は些細でも傷付けられると我を失うことがある。そうなると、力は強くても攻撃パターンは単調になる。
薫の狙いは見事に当たった。
一度距離を取り直した黒羽だったが、今度は正面から狙ってきたからだった。それに対して薫は、塔の残りを投げ捨てると、蹴りからのコンビネーションで反撃した。刀は帯に差していたが、下手に抜くと冷静さを取り戻させる危険があった。
その狙いは、当たった。
薫のキックやパンチを受け止めて、黒羽はよろけるようにまだ無事だった駅の方へと後退していったからだった。通りの車は巻き込まれて潰れていったが、薫もまた建物を破壊しながら追い打ちをかける。相手の構えにわずかな隙を見つけると、相撲のように姿勢を低くしたタックルをぶちかましたからだった。
「うっ……!」
ダメージが確実に浸透しているのを、薫は黒羽の表情で悟った。それでも駅前のロータリーや建物を全て巻き込みながら、少しずつダメージを食らわせていく。それでも相手が怯まないのを見ると、一気に間合いを詰めて右足を取る。
「あっ……!」
「吸血鬼のくせにいい下着を身に着けてるわね」
「ば、馬鹿にした……あっ!」
吸血鬼ハンターにスカートの奥まで見られる形となって、黒羽の理性は半分吹き飛んだようだった。まるで子供のように身体をよじりながら薫から逃れようとしたが、無駄な努力に終わった。そのまま、背中から駅に叩きつけられたからだった。停まっていた列車がまとめて破壊され、建物自体も駅ビルを巻き込んで崩壊していく。それでも薫は邪魔な建物を蹴りだけで壊しながら、足を踏み入れる。
そこからは薫の独壇場だった。
壊された電車を鞭のように振り回して叩きつける。
駅ビルの一部を引きぬいてぶつける。
挙げ句の果てには、崩壊した駅の反対側目掛けて思い切り投げ飛ばし、ビルに背中から叩きつけるとすかさず豪快なタックルを食らわせて周囲の建物ごと壊滅させる。
「これで少しは懲りたかしら? さすがの吸血鬼も参ったようね」
破壊したばかりの建物を足場に、薫は笑って言い切った。これで黒羽を倒せば、妹の響は眠りから覚めるはずだった。
「でも思ったより派手に壊してしまったわね。面白かった……ってそれどころじゃない!」
一瞬、心の奥に隠しておいた本音が漏れてしまったので、薫は慌てて止めを刺す準備に入った。黒羽が大型ビルに磔になっている内に倒してしおうと思ったのだが……。
帯に差していたはずの刀は無かった。
「えっ……」
「愚かね。本当に、どうにもならない程愚かな生き物ね!」
黒羽の口元に笑みが浮かんだ。自分の背丈より大きなビルから背中を引き抜き、そのまま崩壊させながら無防備な薫の胸ぐらを掴む。
「この私が、烏丸家の当主でもある私が隙を見せると思ったのかしら? だとしたらおめでたくて涙が出るわ」
「ま、まさか……」
「絶望は、一度浮かれてからの方が何倍も深いのよ。しかも、命の次に大事な武器をどこにやっちゃったとなるとさらに増幅されるわね。吸血鬼ハンターの藤間薫さん!」
「……」
「ついでに言うと、あんたの破壊ぶりも堪能させてもらったわ。おとなしい顔をしてえげつないのね。どう見ても街を壊したくて仕方ないようにしか見えなかったわ」
「ち、違うわ。わたしは……」
「あら、いいのよ。あんたみたいな清楚で綺麗な顔をした少女が怪獣になるなんて夢の様な光景だったんだから。だから……」
黒羽の顔に、無邪気としか表現の仕様がない笑みが浮かんだ。しかし、瞳の奥にはまったく光は浮かんでいなかった。
「絶対に殺したりしないから!」
胸ぐらをつかんだ右腕に力を込めただけで、薫は無傷の地区を盛大に破壊しながら投げ飛ばされた。意識が遠くなりかけたが、何とかつなぎ留める。
そんな……。武器なしで勝てる相手じゃないのに……。それに、殺さないっていったい……。
綺麗な衣装の下で盛大に建物を壊しながら、薫は物のように転がっていた。余裕からか、黒羽は第二撃を仕掛けてくる様子はない。
しかも、わたしが街を破壊するのを<楽しんでいた>のまで見抜かれるなんて……。でも、どうしても衝動を止められなかった。もし、ここが本当に箱庭の世界だとすれば幾ら暴れても問題ないはずだから。……こうなったら……。
決意を固めるのと同時に、痛みが弱くなったのを感じた。吸血鬼ハンターはたとえ刺し違えてでも相手を倒さなくてはならない。妹の為にも、遠慮はしていられなかった。
しかし、その決意に邪なものが混じりつつあることに、薫自身気づいていなかったのだった。


……

次週は来週更新予定で、イラストの更新です。更新間隔が短いですが、5月は色々とあるので少し長めに休ませてもらうからです。「反逆の従者」完結編はGWに掲載予定です(あ、さすがにイラストはありません。あしからず)。
ちなみに新しいイラストの発注もしていますので、ご安心下さい!
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コメント

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ロッテが烏丸と何が切っ掛けで仲良くなったのか不思議ね。

出会った当初は主義・主張が反発しあってたはずよね・・

人間と仲良く共存主義のロッテと、人間は僕[餌]主義の烏丸・・・

もしかしたら、烏丸の能力にヒントがあるのかしら・・・

☆ミアキス姉妹と烏丸&薫の絡みが書かれるのが楽しみ・・み~

只今検討中

>神風様
ロッテと黒羽が仲良くなった理由については一応考えていますが、そんなに複雑なものではないかもしれませんw
ロッテはそんなに好戦的な性格ではありませんし……(黒羽は非常に好戦的ですが)。
解き明かされるとすれば、書き下ろしストーリーを掲載する夏コミの新刊でのことになると思います(ロッテたちもここで登場しますよ~)。

おお!!夏コミで!!

夏コミでの新刊予定に、提案オリ姉妹のミアキス姉妹らがゲスト出演するのですね☆

絶対に買わねば!!

ロッテは、補佐的地位が向いてるかもですね。

妹のリオンは、力の制御及び姉の主義・主張が理解?出来たら次期ミアキス家当主も。

No title

作者さんは東方がお好きなんですか?^^

危険度 極高
人間友好度 極低

これを聞くと、魔界出身の妖怪を思い出しますね

物語も楽しめました!

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