天狗が羽根を広げたら(後編)

遅くなりましたが、SSの後編です。調子に乗って話を伸ばしたのにも関わらず待たせてしまって申し訳ないです。

……
二人の天狗はまだ壊されていなかった大型のコンベンションホールを見つけると、その駐車場に足場を作って向かい合った。
「ここから戦い始めるんですね♪」
椛は上機嫌そのものだった。もふもふの尻尾を大きく揺らし、上気した顔で辺りを見回していた。
「そーいうこと。そこのホールと近くにある車両ヤードを派手に巻き込んで戦うのも面白そうでしょう?」
「ええ。さ、かかってきてもいいわよ」
「……。だったらいきます!」
はたてから挑発されたような気がして、椛は一気に戦闘モードに入った。少し姿勢を低くして、正面から突撃したからだった。まだ構えていなかったはたてはとっさに受け止めてしまったが、圧力に負けて簡単にしりもちをついてしまう。スカートの下で車が派手に潰れ、一部が爆発炎上したが、椛は相手の腰に手を回すると勢いをつけて転がる。
「あ、ち、ちょっと待って!」
とっさに声を上げても無駄だった。巨大化した二人の少女の巨体によって、コンベンションホールの駐車場にあった車や施設はまとめて壊滅していったからだった。
「油断したら負けです。はたてさんは甘過ぎます」
駐車場どころかそこに面した大通りまで来たところで、椛はやっと体を起こした。
「そうだけど……いきなり本気にならないでよ」
「それが甘いんです!」
そう言いながら、思い切り蹴りを入れてくる。仮想空間の中にいる為か痛みは感じなかったが、衝撃だけは誤魔化せず、巨大なはたては壊滅した駐車場の中に転がってしまった。
やられっぱなしじゃない、もう……。
全身から車の成れの果てや瓦礫を落としながらはたてはゆっくりと体を起こした。そこから反撃しようとしたのだが、そこに生じた隙を見逃す椛ではなかった。すかさず飛びかかって、はたての巨体を瀟洒な作りをしたコンベンションホールに叩きつけてしまったからだった。
「あっ……!」
驚く間もなかった。はたての豊満な胸が銀色の屋根で覆わた建物の中央部を思い切り破壊し、そのまま真っ二つに分断してしまう。伸ばした手は周囲の施設を巻き込み、惨状を拡大する。
派手にやっちった……。でも、こうやって壊してしまうのって少しだけ気持ちいいかも♪ 胸だけでも壊せるのね。
思わず笑みを浮かべた途端、両肩を掴まれた。ぼろぼろと全身から瓦礫を落としながら身体を起こされたが、巨大化した少女はすかさず椛の無防備な足元目掛けて足払いをかける。
「しまっ……!」
形勢は一瞬の内に逆転した。椛の巨体ははたてにのしかかる形になり、豊かな胸が思い切り押し付けられる。その感覚を楽しながらもはたては椛の身体を掴んで転がった。分断されたコンベンションホールがさらに破壊され、残るのはわずか三分の一だけとなる。
「仕返しはまだ終わってないわよ!」
椛を駐車場の方に突き飛ばして、はたては悠然と立ち上がった。すぐにコンベンションホールの残った部分に手をかけると屋根を引きちぎって両手で持つ。
「残った部分は処分してもいいわね。えいっ!」
屋根を失った建物に蹴りを入れて壊滅に追い込むと、はたては屋根を構えたまま椛に反撃していく。体を起こしたものの、構えていないのを見ると笑いながら屋根を叩きつけたからだった。さすがに椛も腕で防戦したものの、衝撃は受けきれず、大通りの車や街灯を壊しながら転がってしまう。
「そんなんじゃ哨戒任務なんか出来ないわよ!」
「言わせておければ……!」
プライドを傷つけられたような気がして、椛は一段と熱くなった。はたてが油断しているのを見ると、姿勢を低くしたまま新たな戦場へと素早く移動する。それは壊滅したコンベンションポールに面した大型の車両ヤードだった。
武器さえ手に入れればこっちのもの。でも、これだけの施設を壊して戦うのも面白いですね。
架線と線路を踏み潰しながら、巨大化した椛は思わず微笑した。ヤードには数十編成の列車が留置されていて、壊される瞬間を待っていた。
ここが戦場になれば五分もすれば壊滅しますね。まずは……。
背後からはたてが近づいてくるのを感じながら、まずは手近な列車を中程から掴み上げる。思ったより軽いので戸惑ったが、半ば反射的に体を捻りながら列車を投げつける。
「あっ……!」
不意打ちしようとした瞬間、突然列車の編成が飛んできて、はたては慌てた。ぼろぼろになったコンベンションホールの屋根を落として受け流したものの、その時には椛に両肩を掴まれていた。
「馬鹿にした罰です!」
内心の本音を叫びながら、巨大な白狼天狗ははたてを思い切り投げ飛ばした。架線や線路を蹴散らしながら踏み止まろうとしたはたてだったが、バランスを崩して思い切り転がる。その真下にあった10編成ほどの列車がその一撃だけで破壊され、無残なスクラップとなる。架線が切れて派手に火花を散らし、投げ飛ばした椛も一瞬驚く。
「派手に壊してしまいましたね。めちゃくちゃじゃないですか」
はたてのスカートが半分まくれて縞パンまで見えているのを眺めながら、椛は興奮を抑えきれない様子でつぶやいた。壮絶な破壊劇だったが、罪悪感はまったく無かった。
「もう、突然投げ飛ばさないでよ……電車派手に壊しちゃったじゃない」
伸ばした手でさらに列車を壊しながら、はたては体を起こした。周囲の様子を確かめると楽しそうに笑う。
「油断してるのが悪いんです。いきます!」
大きく尻尾を揺らして、椛が正面から飛びかかってきた。忠実な白犬が飛びつくようにしか見えなかったが、はたては身をひねって回避する。目的を見失った椛はそのまま、車両工場の真上へとダイビングしてしまう。
次の瞬間、轟音が辺りを支配した。思い切り飛び込んでしまった椛の巨体によって工場は中にあった車両ごとほぼ全壊してしまったからだった。何かに引火したのか、爆発音と共に火柱が上がり、黒煙が視野を塞ぐ。
それでも椛はすぐに体を起こし、低い姿勢で反撃の構えになった。哨戒担当らしい俊敏さだったが、その過程で工場はさらに蹂躙されて原形を完全に失う。
はたてさんがいない? どこに……?
背後に回られたと気づいた時には遅かった。無防備になっていた背中に思い切り電車の編成を叩きつけられたからだった。
「これっていい武器になるわね~」
会心の一撃を食らわせたはたては満足そうだった。半分引きちぎられた電車を手に持って笑っている始末だった。
「しかも幾らでもあるし♪ ほらほらしばいてあげる!」
「止めて下さい! これ以上めちゃくちゃにしてどうするんです! 原形が残ってないじゃないですか……」
「何言ってるのよ今更。こうやって壊してしまうのに興奮してるんでしょう? だったらこうしてあげる!」
半分わざといい子ぶる椛に、はたては一段と派手に反撃した。隙を見て正面に回り込むと、そのまま押し倒したからだった。
「な、何をするんです!」
「もうわかってるでしょう? とってもいいこと♪」
はたての顔が愉悦に歪んだ瞬間、椛のふっくらとした胸の谷間に電車が押し込まれた。巨体の下で電車や工場をまとめて潰しているという罪悪感、電車で遊ばれているいう背徳感がない混ぜになって、心は新たなる絶頂へと昇っていく。
「あっ……や、止めてください! 恥ずかしいです……あ……い、イキそう……」
「幾らイッてもいいのよ。ここには私たちしかいないんだから。本当は私だってもうぐちょぐちょ……」
頬を真っ赤にしながら、はたては慣れた手つきで電車を上下に動かす。元々感じやすい部分を常識外れな<道具>で刺激されて、椛の下半身は一気に熱くなり、何かが漏れるのを感じる。
「う……あ……もう我慢でき……ません。最後まで、最後まで……イかせてください……」
「もちろんそのつもりよ♪」
我慢できなくなって、はたてはついに椛の巨体の上に覆いかぶさった。着衣越しに二人の下半身が結合すると、狂ったように腰を振る。
「うあ……。な、なんか凄いです! こんなの初めて……」
「着たままというのも一段と興奮するわね~。イケナイことをしてる感じがして……」
既にはたての縞パンは愛液でぐしょ濡れだったが、構うことなく椛に押し付け続ける。手は電車を動かし続けているので、椛は二重の悦楽に溺れる形になる。
「最高です……。好き勝手に壊しまくって興奮したところにこの仕打ち……はたてさんが相手で良かったです……」
「私も♪ 椛って素直だから可愛くて可愛くて」
「もっと……もっと好きにしてください」
後は言葉にならなかった。巨大化した二人の天狗は、欲望の赴くままに愛し合い、愛液を周囲にぶちまけながら車両ヤードとその周囲を破壊し尽くしたからだった。

その光景を全て、スキマ越しに見られているとも知らずに。

……

これにて完結ですので、久しぶりにSSのリクエストを受付します。ただ、先着順ですと不公平が生じるかもしれませんので、今回は1週間後……8/31(木)までリクエストを受け付けて、その後で私の方で書く順序を決めたいと思います。遅筆なので後の順番になるとかなりお待たせするとこになりますが、その点はご了承下さい。
内容はオリジナル(この場合はキャラやシチュエーションを少しでも具体的に提示してくださると大変助かります)、二次創作(「東方」だけでなく「艦これ」「FGO」もOKです。それ以外は要相談で)いずれもOKです。「東方」については来年SS小説本第2弾を出したいなーと漠然と思っているので新ネタ大歓迎です。
我儘ではありますが、頑張って書きますのでどうかよろしくお願いします。

次回の更新は今週末、8周年記念に合わせてイラストをアップします。
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天狗が羽根を広げたら(中編)

今回は先週も予告した通り、SSの更新です。ただSSだけを載せるのもつまらなかったので、今回はイラストも描いて添付しました。終わりの方にありますので見てみてください♪

……
最初に襲いかかったのは、小さな住宅が密集する地区だった。いきなり、高下駄に包まれた足で思い切り蹂躙し始めたからである。少し足を動かすだけで建物はまとめて破壊されていき、切れた電線が火花を散らし、一部が火災を引き起こす。それでも巨大化したはたては煙をかき分けながら全て破壊してしまう。
「やっぱり楽しいわね~。こんなに小さな建物を壊してしまうなんて♪」
瓦礫の中央に立って、はたては得意気にポーズを決めた。怪獣のように巨大になって大暴れする快感は、やはり何にも代えがたかった。
「次は……これがいいわね。えいっ!」
続いてはたてが襲いかかったのは、マンションが複数立ち並ぶ地区だった。瓦礫を蹴散らしながら歩み寄ると、まずはミニスカートを豪快に翻してキックを浴びせかける。建物の中央部が分断されたのを見ると今度はその上に足を下ろして踏み潰し、さらには手を使って残った部分も破壊してしまった。
「えーいっ! 全部壊すんだから!」
マンション一棟を一瞬の内に変えても、燃え上がる破壊衝動は止まらなかった。壊したばかりの建物の瓦礫を両手で持つと、それで周囲の建物を攻撃し始めたからだった。かつてはマンションの一部だった巨大な瓦礫が建物を一気に破壊し、原形を失わせていく。そこにツインテールを大きく揺らしたはたてが襲いかかってきて、足だけを使って壊滅させる。わずか一分間の出来事だった。
「はたてさんの壊し方も凄いですね……」
近くで別の地区を強襲していた椛が驚いたような声を上げる。
「とーぜんじゃない! こんなに巨大化してるんだから。椛だって派手にやってるじゃない」
「はたてさんには負けたくありませんからね」
口元だけで笑うと、椛は両手だけを使ってかなり背の高いビルを押し倒してしまった。轟音が響き渡り、派手に埃が舞い上がったが、椛はそれすらも踏み潰して得意そうにしてみせる。誰にも止められそうにない勢いだった。
「私だって負けないんだから……」
ぐっと拳を握りしめてつぶやくと、はたては瓦礫だらけになった住宅街から出て、大通りに出る。車がびっしりと道路を埋め尽くしていたが、高下駄で全て踏み潰しながら歩いてみせる。アスファルトにはくっきりと足跡が残り、そこにスクラップになった車が落ちていったが、今度は軽く足を振り上げて蹴飛ばす。その一撃だけでまとめて車が宙に舞い、道路に落ちてスクラップになったのを見ると満足そうに笑う。
「小さいものを壊してしまうのも楽しいじゃない♪」
平然と言い切ると、周囲の建物を巻き込みながら車壊しを楽しむ。蹴飛ばしてみたり、思い切り踏み潰してみたり、挙げ句の果てにはパンツ丸見えでしりもちをついてみたり、やりたい放題だった。
「次はこれね……。この辺りみーんな壊しちゃうんだから!」
スカートからスクラップを落としながら、はたては立ち上がった。気がつくと繁華街の目の前まで来ていたので、そこを標的とする。まずはアーケードに覆われた商店街を見つけるといきなり高下駄でアーケードを踏み潰す。その一撃で大穴が空いたのを確かめると、そこに手を入れてアーケードを引き剥がしてしまった。
「相変わらずやりたい放題ですね♪」
椛が笑いながら声をかけてくる。いつの間にか巨大化した白狼天狗の少女は海辺近くの工業地帯に襲いかかって、そこを火の海に変えていた。今も大型の煙突を手に持って瓦礫の中央に立っていた。
「当たり前じゃない。椛だって凄いじゃない」
「この程度なら当たり前ですよ。えいっ!」
言いながら、椛は手にしていた煙突をまだ壊していなかったプラントに叩きつけた。煙突が凶器と化してプラントを破壊し、再び大爆発が発生したが、それを見つめる椛は平然としていた。
やっぱり椛も本気にさせると怖いわね……。
とりとめなく考えながら、はたては両手で持ったアーケードを武器に商店街を壊滅させてしまった。そこを更に踏みつけながら今度は中型のビルを土台ごとを引き抜いてしまう。
「あ、これちょうど良さそう♪」
笑いながらつぶやくと、そのままぎゅっと抱きしめてしまった。ふっくらとした胸によってビルは一撃で潰れてしまい、瓦礫が地面に落ちていく。
こーいうのも面白いわね~。
自分でも立派だと思っているバストで簡単にビルが壊せることに気づいて、はたてはさらに調子に乗った。別のビルも土台ごとを引き抜くと、今度は胸の谷間に無理やり挟み込み始めたからだった。
「あ……。ちょっと気持ちいいかも。イキそう……」
ビルがこすれる感覚が脳天を直撃して、はたての破壊本能はほぼ全開状態になった。ビルが破壊されるまで何度も擦りつけて快感を味わうと、今度はまだ建物がまったく壊されていない地区へとダイビングしたからだった。中低層の建物が密集する地区だったが、巨大化した少女の胸によってまとめて破壊されていく。
「ああっ! これ気持ちいい~!」
思わず大声で叫びながら思い切り転がる。ツインテールにした髪が生き物のように広がって周囲の建物を巻き込む。思わず伸ばした手やスカートから伸びるニーソに包まれた足がビルや大通りの車を全て薙ぎ払う。そして、程よく膨らんだバストはビルをまとめて破壊していく。
「うわー気持ちよすぎ~。イキそう……駄目……」
いつの間にかはたての顔は上気し、瞳は潤んでいた。下着もぐしょぐしょに濡れていて、スカートがまくれる度に痴態が丸見えな状態だったが、まったく気にならない。それだけ、胸で建物や車を壊す快感に酔っていた。
はたてがようやく体を起こしたのは、それから十分ほど経ってからのことだった。瓦礫の上に無造作に座り込んだまま、辺りを見回す。
巨大化した少女が遅いかかった地区は悲惨な状態になっていた。建物という建物はすべて壊滅して瓦礫になり、一部は炎上している。それだけならまだしも、はたてが思わず漏らした愛液すらも所々にかかっている始末だった。
「あーあ。やっちゃった……。でも気持ちいいからいいか♪」
上気したままでつぶやく。スカートもその下も濡れていたが、それすらも気にしていないようだった。
「はたてさんもやりたい放題ですね」
笑いながら椛が声をかけてくる。手にはどこからか引き抜いた電線塔が握られている。これを武器の代わりにして暴れるつもりらしかった。
「とーぜんじゃない。あ、写真まだだったわね~」
ようやくはたてが立ち上がった。びっくりする椛に構わず、愛用の携帯で自撮りを始める。

街破壊巨大少女幻想124

「あの……恥ずかしくないんですか?」
「何が?」
「あちこち……ぐちゃぐちゃですから……」
「仕方ないじゃない♪ 椛だって同じでしょう?」
「そうですけど……」
反射的に肯定して、椛は恥ずかしさのあまり俯いた。しかし、はたては気にする様子を見せずに自撮りを続けている。怪獣になった自分に完全に酔っているようだった。
このまま壊すのも面白いですけど……。まだ刺激が足りませんね。はたてさんが相手なら……面白いかもしれません。
椛が顔を上げた。意を決して口を開く。
「はたてさん、提案があります。私とはたてさんで思い切り戦ってみませんか? 怪獣のように街を壊しながら」
「あ、面白そうね。いいわよ♪」
「あっさり承知しましたね」
「そーいうもやってみたかったのよ。それに椛が相手なら不足はないし。本気でいくわよ」
「私も本気でいきます」
これで話はまとまった。こうして、巨大化した椛とはたてはさらになる破壊劇のために対戦することにしたのだった。

……
というわけで、もう少しだけ続きます。仲のいい者同士の巨大キャットファイトというのも面白そうですからね~。

次回の更新は来週、OMC経由で依頼したイラストを掲載します。お楽しみに!

天狗が羽根を広げたら(前編)

今週の更新は2本立てです。
1本目はずーっとお待たせしていた契音様からのリクエストに応えて、「東方」の犬走椛と姫海棠はたてのコンビの大暴れのSSです。お待たせして本当に申し訳なかったです。
なお、作中の時間軸は「東方文々春新報」が発行中止になった直後のあたりです。

……
「しっかし頭にくるったらありしゃしないわね~。あそこまでやっといて発行中止? ジャーナリストの風上にも置けないわね」
お茶を一気に飲み干して、姫海棠はたてはまくし立てた。
「こっちはどれだけ恥ずかしい思いしたと思ってるのよ! 文はいいかもしれないけど、こっちの立場にもなってよね!」
「……一番ノリノリだったのはたてさんだったと思います」
ごく控えめな態度で椛が反論する。
そもそも色々と面白くなかった。
ようやく仕事を終えて家に帰ってきた途端、普段は引き籠もっているはずのはたてが押しかけてきて一方的に文句をぶちまけ始めたからである。
裏表のない正直者とはいえ、さすがに酷いとしか言いようがなかった。
「はたてさん胸を思い切り強調してたじゃないですか。しかもポーズを変えて数十回を撮らせるものだから文さんにまで文句言われてたじゃないですか」
「文なんかパンチラしてたじゃない、パンチラ! 袋綴じだからってそこまでしてもいいと思ってる?」
「いいとは思いませんけど……。私はあれが世に出なくて良かったと思ってます。対談なんか正体モロバレだったじないですか」
「上層部(うえ)にバレなきゃ問題ないわよ。……それより本当に見損なったわ。あそこまで作っておいて中止だなんて」
菓子入れの饅頭を手にして、はたてはうんざりしたようにつぶやいた。
「仕方ないじゃないですか。捏造してしまったんですから。出さなかっただけましです」
「あんたは文の肩を持つのね。あんなに嫌ってるのに」
「個人的な好き嫌いと仕事に対する矜持は別問題です。文さんの決断は正しいと思います」
「ま、あんたは記者じゃないから気楽かもしれないけど……。あの週刊誌で散々引き合いに出された私の立場にもなってよ~」
「それが本音ですね」
「決まってるじゃない! あそこまで馬鹿にされた挙句反論もできなくなったんだから。この憂さ、どこにぶつければいいのよ!」
「随分とお困りのようね」
突然、第三の声が小さな居間に響き渡った。反射的に椛は愛用の武器に手をかけたが、すぐに声の正体に気づく。
何もない空間から半身を乗り出した八雲紫だった。
「……いつも言ってますが、せめて玄関から入ってきてください」
「だって面倒なんだもの。こっちの方が楽だし♪」
「それより、何か用?」
「ふふ。憂さが溜まって困ってるようだから手助けしてあげようと思ったのよ」
「それってまさか……」
「そのまさかよ。はい、二名様ご案内~」
「あ、待って下さい! まだ何も……」

次に気がついた時、椛は見覚えのある空間の中にいた。
自分の背よりもずっと小さな建物が立ち並び、道路上には無数の車が密集するその場所は……<外の世界>の大きな街だった。
「またここに来ちゃったわね~。まさかと思ってたけど」
はたての呆れたような声が耳に届いて、椛は耳を揺らしながらその方向を見た。引き篭もりの鴉天狗は約五十倍サイズまで巨大化してすぐ隣の通りに立っていた。
その前にはやはり建物が立ち並んでいたが、はたてと比べると模型のようにしか見えなかった。
「また巨大化してしまいましたね。……壊さないと駄目なんでしょうか?」
「そうじゃないの? だってこの前だって全部壊したら勝手に戻されたじゃない」
「文さんに酷い目に遭いましたけどね」
「思い出させないでよ……。もう二度と文は怒らせないって決めたんだから」
トラウマになっているのか、はたては大げさに頭を抱えた。スカートが揺れて、裾がビルの屋上にもかかる。
「はたてさん」
「ん? なに?」
「この辺り……私が壊してもいいですか?」
「いいんじゃないの? どーせ紫が作った架空の街なんだから。何をしても平気よ、きっと」
「何をしても平気……。そうですよね」
珍しく、椛が口元だけで笑った。可愛らしいものの、どこか危険な香りのする微笑にはたては慌てて問いかける。
「まさか、本気で大暴れする気?」
「この前は途中で文さんに邪魔されてしまいましたからね。こんな街、私一人で全部壊してみせます」
「待って! 待って待って!」
「え?」
「写真撮ってあげる。後であげるから撮らせて」
一瞬、きょとんとした椛だったが、すぐに笑いながら大きく頷いた。はたてのことだから記事にするのと引き換えだろうがそれでも構わなかった。何よりも、自分の大暴れする姿を後で見てみたかった。
「じゃ、いきますよ!」
言い切るのと同時に、巨大化した椛は仮想空間上に再現された町並みに襲いかかっていった。

最初に狙ったのは、大通りにぎっしりと止まった車だった。口元に笑みを浮かべたまま、草履に包まれた足で蹴散らして歩き始めたからだった。
「こういう壊し方も楽しいですよね。道路も穴だらけですし」
「あんた意外とSっ気あるのね。受け専門みたいに見えるのに」
「私はそんなにやわではありません!」
そう言うなり、椛は思い切り足を振り上げた。はたてがあっと思うよりも早く、豪快な蹴りを放つ。その一撃で通りにあった車は全て宙に舞い上がり、そのまま落下して全てスクラップになる。一部は爆発炎上して黒煙を吹き上げ始めたが、椛はそれすらも踏み潰して突き進む。
「こんなに大きな建物もあるんですね。外の世界には」
巨大化した少女が立ち止まったのは、交差点まで来た時だった。足元では車や信号、歩道橋などを踏み潰しながら、角に面した大型のビルの屋上に手をかける。
「でも……。邪魔ですね。えいっ!」
掛け声と共に、椛は無造作に腕を振り下ろした。力の込められたその攻撃によってビルは正面から破壊され、階層までむき出しになる。瓦礫が落下して道路上のスクラップになった車を直撃する。それでも椛は二度三度と腕を振り下ろして原形を無くしてしまうと、蹴りを入れてついには崩壊させてしまった。瓦礫が周囲を巻き込み、派手に埃が舞い上がったが、それをかき分けながら椛は足を踏み入れると、そのまま建物を壊しながら歩き始めてしまった。袴に包まれた足が小型のビルなどを全て薙ぎ倒し、草履に包まれた足がその瓦礫を踏み潰していく。それでも椛は無邪気に笑っていた。
「楽しそうね、あんたも」
携帯で写真を撮りながら、はたては半分呆れていた。
「楽しいに決まってるじゃないですか。こんなに大きくなって派手に暴れてるんですから。ここなら無敵です」
そう言いながら椛はまだ壊していないビルを土台ごと引き抜いてしまった。腋が丸見えになるのも構わずに高く持ち上げると、まだ壊していない地区へと叩きつけてしまった。想像を絶するような攻撃を受け止めて全ての建物が原形を失うほど破壊され、切れた電線がショートして火災を発生させたが、巨大化した少女は容赦しなかった。瓦礫を蹴ってジャンプすると、その中央部に着地したからである。局地的な地震が発生し、不意を突かれたはたては派手にしりもちをしたが、椛は本能のままに破壊の限りを尽くした。
立ち並ぶ住宅をまとめて蹴散らす。
ビルの密集する場所に座り込んで壊滅させる。
建物を引き抜いて周囲に叩きつける。
それらを繰り返しただけで街の一部は壊滅状態になってしまった。
「やりたい放題ね。あんたも」
大通りの上にしりもちをついたまま、はたては正直な感想を漏らした。ミニスカートがまくれてパンツが丸見えとなり、その周囲には壊された車が散らばっている状態だったが、まったく気にしていなかった。
「どうですか? 私の暴れ方は?」
「最高よ、最高! やっぱり凄い破壊衝動が眠ってたのね~」
「はたてさんだって十分凄いですよ」
「まーね。でも今は椛の大暴れが見たいな~。なんて♪」
「いいですよ。幾らでも暴れてあげますから」
派手に暴れてすっかり気分が良くなったのか、椛は笑って言い切ると無残な姿となった地区から出た。車などを踏み潰しながら次の獲物に襲いかかる。今度の狙いはマンションや住宅が混在する地区だった。
「それっ!」
まずはいきなり走り出すと、そこ目掛けてヘッドスライディングを敢行する。豊かな膨らみを持つ胸に押し潰されて小さな住宅などがまとめて壊滅したが、さらに転がってみせる。巨大化した少女の全体重を受け止めて建物は瓦礫と化していき、着物や袴も埃まみれになったが、椛はまるではしゃぐ白犬のように暴れるのを止めなかった。
ふさふさの尻尾を揺らしながら中層のマンションに飛びかかって、それだけで中央部を分断してしまったからだった。
「意外と簡単に壊れてしまうんですね」
わざとらしく言いながら壊し残した部分を手だけで壊してしまうと、別の建物にも飛びつく。大きめの胸の下で建物が破壊されていのが妙に気持ちよくて、下半身が熱くなるのを感じる。
「胸で壊してしまうなんて面白いわね。椛って可愛い顔に似合わず胸が大きいから絵になるわね~」
正面に回りんだはたてが笑って言い切る。
「ま、まあ大きいのは認めます……。気持ちいいのも……」
「恥ずかしがらなくてもいいの♪ ここには私たちしかいないんだから。二人だけの秘密よ」
「この会話だけは記事にしないで下さいね。……写真ぐらいは許しますから」
「私だって恥をかきたくないから大丈夫♪」
「それもそうですね」
はたての言葉に嘘があるとは思えなかったこともあり、椛は胸や全身を使った破壊劇を続けた。気がつくと閑静な住宅街はただの瓦礫の山となっており、巨大化したふたりの天狗たちだけが悠然と座りんでいる始末だった。
「次は何を狙うの?」
「だったらあれを壊してみます」
ふさふさの尻尾を大きく揺らしながら、椛は立ち上がった。足元の瓦礫を蹴散らしながら新たな獲物に狙いを定める。それは鉄道の高架線だった。
「うわーいいもの見つけたわね。やっちゃっていいわよ♪」
「もちろんそのつもりです」
普段はほとんど意識しない下半身がさらに熱くなっていることを意識しながらも、椛は高架線の上に巨大な足を振り下ろす。無造作としか言いようがない行動だったが、それだけで高架線は両断され一部が完全に踏み潰される。それでも壊した部分に手を入れて、そのまま引きちぎってしまった。
「いい感じいい感じ! 怪獣みたいじゃない」
すぐ近くまで来て写真を撮りながら、はたてが親指を突き上げる。その足元に高架線にのっていた電車が落下してしてきたが、思わず踏み潰してしまう。一瞬驚いたような表情を見せたもののすぐに蹴飛ばしてさらに周囲の建物を破壊する。それでもお構いなしだった。
「そのものじゃないですか。こんな事をしてるんですから!」
そう言いながら椛は両手で持っていた高架線をまだ壊していない部分に叩きつけてしまった。轟音が響き渡り、鉄道の高架線が一度に破壊されたが、椛はその埃をかき分けながら半分が壊された電車を掴み上げてみせる。
「こういうのを見てると……遊びたくなるんですよね♪」
上気した表情で言い切ると、簡単に2両分だけを引きちぎる。何を始めるのか興味津々なはたての視線を感じながらその場に座り込むと……ふっくらとした胸の谷間に挟めてしまった。
「うわー大胆」
「はたてさんだってやってたじゃないですか」
「こうやって見ると凄くエロい光景ね」
「そう……ですけど……ね」
椛の息が激しくなり始めていた。それでも両手で持った電車で胸の谷間をこすりつけるのを止めることはできない。こすられるたびに電車は壊されていったが、自分が「いけないことをしている」という罪悪感が気持ちよくて仕方なかった。
「うっ……ふう……ああっ! 駄目です!」
悦楽が脳天を直撃して、椛は壊したばかりの高架線や周囲の住宅を巻き込んで転がってしまった。本能のままに手足を動かし、建物などを壊しながら転がり回る。
「……もしかして、イッちゃってる?」
さすがに撮影を中止して、はたては呆れていた。撮りたいのは山々だったが、越えてはいけない一線を越えそう気がした。
「そんなとこは……うふっ、き、気持ちよくて……ああ!」
「好きにしてもいいわよ。でも見てるだけで興奮してきそう」
思わず自分の下半身に目を落とす。破壊衝動を無理やり押さえているところに痴態を見せられて、もはや爆発寸前だった。
「もう我慢出来ない! 私も暴れるんだから!」
恍惚に溺れる椛に構わず、はたても大暴れを始めたのはその時だった。

……

前も言ったかもしれませんが、椛は真面目なだけに暴走すると止まらなそうですね~。
続きは例大祭の後にアップします。お楽しみに!

小さな破壊神VS巨大少女怪獣(後編)

何とか年内に間に合いました。後編はひたすら破壊しまくりになってしまいましたが、お楽しみ下さい。

……
気がつくと、工場が立ち並ぶ地区は全て壊滅していた。
建物は破壊し尽くされて黒煙や炎を盛大に吹き上げ、一部ではなおも爆発している。運河にかけられていた橋も落とされて無残な姿を晒し、道路上にはスクラップになった車が散乱している。その光景を眺めながら、巨大化したハルカは満足そうに笑っていた。
「あーあ。まためちゃめちゃに壊しちゃった♪ まともな建物なんて残ってないじゃない。ね、水奈」
親友の少女の返事は無かった。瓦礫の上に転がって目を閉じているだけだった。
「水奈も派手にやったわね。口では嫌がりながらどんどん壊していくんだから。やっぱり水奈と遊ぶのが一番楽しいわね。……楽しい?」
ハルカの表情が曇った。今更のように、自分が水奈を思い切り痛めつけた理由を思い出す。
「……水奈。大丈夫? ちょっとやり過ぎたかも」
返事は無かった。さすがに罪悪感を覚えたのか、ハルカは慌てて膝をついて親友の巨体を揺さぶる。
{ねえ、水奈。返事して。大丈夫? 水奈!」
「……ハルカ?」
「あ、やっと目を開けた……。大丈夫?」
「大丈夫なわけないじゃない。お返し」
その時、ハルカはまったく警戒していなかった。両手で身体を掴まれたかと思うと、そのまま引きずり倒されてしまったからだった。白いパーカーの下で瓦礫が更に潰れ、ポニーテールにした髪が大きく広がる。
「ち、ちょっと……!」
「絶対に許さないんだから。だから……こうしてあげる」
ハルカが身体を起こす余裕もなかった。両腕が絡んできたと思うと水奈が全身を寄せてきたからだった。お嬢様風の少女に相応しい甘酸っぱい香りが鼻を刺激する。わずかに膨らんだ胸同士も密接して、その上にあった瓦礫がさらに潰れる。
「水奈……」
「許さないって言ったじゃない♪」
あっと思う間もなかった。思い切り抱き合ったまま、ふたりの巨大少女は周囲の建物にも構わず転がったからだった。普段着の下でまだ壊れていなかった工場やプラントが次々に破壊されていき、爆発したり炎上したりする。
「水奈……」
たまりかねてハルカが口を開いたのは、工場地帯を出て、海岸に面した再開発地区まで転がってきた時のことだった。
「ねえ、水奈ったら」
「もう怒ってないから安心して♪ 大暴れしたらすっきりしたし」
「水奈……。ごめん。本当にごめん!」
「いいのいいの。もう気にしてないから。それより……」
ゆっくりと水奈がハルカから離れた。名残惜しそうな顔をする親友に笑いかける。
「ここを壊して遊ばない? 綺麗な建物がいっぱい建ってるじゃない。これをみーんな壊してしまうの」
「もちろん! どっちがたくさん壊せるか競争しない?」
「いいわよ。負けないから!」
顔を見合わせて笑い合った瞬間、二人の少女の間に存在していたわだかまりが消え去った。そして、それが合図となった。
「最初にこのビル壊すね! えいっ!」
いきなり、ハルカが目についた大型のビルを蹴り上げたからだった。ミニスカートが派手に翻るのも構わない一撃に、ビルは正面を完全に破壊されて無残な姿になってしまう。それでも物足りなかったのか、今度はなんとジャンピングヒップアタックを食らわせて崩壊に追い込んでしまった。
「うわ~。凄い壊し方……」
さっそく近くにあったマンションを手で壊していた水奈が呆れたような声を出す。
「面白いでしょう? どーせ痛くないんだし、何をしても平気♪」
笑って言い切ると、ハルカはなおも破壊活動を続けた。瓦礫を落としながら立ち上がると、隣りにあったビルの真上に無造作に座り込んでしまったからだった。
「見て見て! 新技・座り込み壊し!」
「面白いけど……。パンツ丸見えじゃない」
「いいのいいの。どーせ水奈しかいないんだから。えいっ!」
平然と言いながら、一度立ち上がったハルカはさらに住宅が密集する地区に座り込んでしまった。チェックのスカートの下で多くの住宅が瓦礫になっていき、潰された車が爆発したが、ハルカは座り込んだまま前に進んでしまう。すらりとした足や手が凶器となって、さらに住宅を壊していく。
「今度はこんな事をしたりして♪」
水奈の視線に気づいて、ハルカはその場に無造作に横になると、そのまま転がってしまった。ポニーテールにした髪が生き物のように瓦礫の上に広がり、白いパーカーの下で小さなビルがまとめて壊滅していく。
「水奈が壊す分が無くなりそう……」
「大丈夫♪ まだ幾らでもあるじゃない」
「うん。こっちは水奈に任せて」
無造作に道路上の車を全て破壊しながら、お嬢様風の巨大美少女も破壊活動を続けた。まずはいきなり、立ち並ぶ住宅などに向かって豪快なスライディングを敢行する。ソックスとスニーカーに包まれた足が派手に住宅を破壊したが、水奈はその感覚すらも楽しみながら両手を振り回して周囲の建物を壊し尽くす。
「水奈も滅茶苦茶やるわね」
「いーじゃない。それより、こんな壊し方もあるわよ」
巨大化した水奈が四つん這いになった状態で体を起こした。そのまま両手や両膝で小さな建物を壊しながら突き進むと、大きめのマンションの前で止まる。
「そこからどうするの?」
地面から引き抜いた高圧電線塔を持ったまま、ハルカが問いかける。
「決まってるじゃない。こーやって壊してしまうの!」
ハルカが言葉を見つける間も無かった。水奈はそのまま、Tシャツに包まれた小ぶりな胸をマンションに押し付けたからだった。巨大少女の体重を受け止めて、建物は簡単に壊れていく。
「全身を使って壊してしまうのって楽しい~。ほらほら、こんなに簡単なんだから」
嬉々とした声を上げている間にも、建物は少女のしなやかな肢体によって壊されていく。無造作についた手が別の建物を巻き込み、膝が止めを刺しても、水奈は止まったりしない。四つん這いになったままさらに別のビルも壊してしまったからだった。
「水奈も大胆ね♪」
「ハルカには負けないんだから!」
そう言いながら、今度はかなり大きなビルに思い切り抱きつく。胸を押し付けるとそれだけでガラスが砕け散り、骨組みまでむき出しになっていったが、さらに破壊的な抱擁を続けてついには真っ二つにしてしまった。
「あーあ。簡単に壊れちゃった。ちょっとつまんないわね」
「ほんと。この辺りもめちゃめちゃになったわね」
車を踏み潰しながらハルカが歩いてきた。壊したばかりのビルの上に座り込んでいた水奈だったが、当たりを見回して瓦礫しかないのを確かめて、満足そうに笑う。
「水奈たちが暴れると無敵ね」
「でもまだ物足りないんでしょう? 今度はこっちに行ってみない?」
「あ、凄い。まだあんなに大きな建物とか残ってるじゃない。まだまだ壊すんだから!」
再開発された地区を完全に破壊してもまだ物足りないのだろう。水奈はすぐに立ち上がった。そのまま、ハルカと肩を並べてまだ無傷の地区へと襲いかかっていくのだった。

その後もふたりの巨大少女たちの大暴れは止まらなかった。
仮想空間上の都市なのでいくら壊しても問題ないこともあって、それこれやりたい放題だった。
「また壊しちゃった……。ビルだけでも百以上は壊したかも」
また一つ、大型のビルを座り込み攻撃で破壊して、ハルカは笑った。パーカーについた瓦礫を払い、ソックスとスニーカーに包まれた足を伸ばして、道路上の車を壊す。形あるものは全て壊してしまうのが、<巨大少女怪獣>ハルカの流儀だった。
「お尻で壊してしまうのも楽しいわね。簡単に壊れてしまうし。こーんな感じで♪」
瓦礫などを落としながら立ち上がったハルカだったが、アーケードに包まれた商店街を見つけるとまたもや座り込んでしまった。チェックのミニスカートに包まれたヒップが凶器となって商店とアーケードをめちゃめちゃにしたが、ハルカは笑っていた。
一方、水奈は大きなコンベンションホールをたった一人で壊していた。駐車場の車を蹴散らしながら足を踏み入れると、その場に座り込んでまるで遊ぶように建物を解体していったからである。
「こんな大きな建物でも水奈の手にかかったら簡単に壊れるわね~。これなんてこーやって……」
原型を留めないほどにホールを破壊して、水奈は止めとばかりに屋根を力任せに引きちぎった。それを両手で持つとそのまま何度も叩きつける。派手な音がして、さすがのホールもただの瓦礫になってしまった。
「ねえ水奈。今度はこうやって壊してみない?」
「え? スニーカーを脱いでどうするの? まさか……」
「靴下履きで暴れてしまうの♪」
脱いだスニーカーを無造作に放り投げてさらに建物を壊すと、ハルカは純白のソックスに包まれた足で道路上の車を踏み潰し始めた。巨大化しているので痛みなどもまったく感じなかったが、不思議な感覚がして気持ちよかった。
「こーするといかにも自分の足で壊してる感じがして楽しい♪」
「あ、面白そう。水奈もやるやる♪」
調子に乗って、水奈もスニーカーを脱いでしまった。試しに壊したばかりのコンベンションホールの瓦礫を踏み潰してみる。スニーカーを履いていた時からは想像もつかない感覚が脳を刺激して、思わず笑みがこぼれる。
「こういう壊し方も楽しいわね」
「だからこうやって壊してしまうの。巨大少女怪獣ハルカ、車両ヤードを襲撃します~」
高らかに宣言して、白いパーカーにチェックのスカート、純白のソックスの巨大少女は車両ヤードへと足を踏み入れた。まずはヤードに留置された電車をソックスに包まれた足だけで次々に踏み潰していく。紙の模型よりも簡単に壊れていったが、それでも満足できなかったのだろう。壊したばかりの電車を中程から掴み上げると、そのまま目についたガスタンクに投げつけて大爆発を起こしてしまった。
「びっくりした……。急にやらないでよ」
すぐ近くで住宅をソックスに包まれた足で壊滅させていた水奈が抗議の声を上げる。
「ごめん。でもこうやって炎上すると楽しいわね。本物じゃないからちっとも熱くないし」
「ほんとほんと。でも怪獣映画みたい」
そう言いながら水奈は、立ち塞がったマンションの真上にソックスに包まれた足を振り下ろす。その一撃だけで建物は真っ二つになったが、さらに別の足も下ろしてぐちゃぐちゃになるまで踏み散らかす。ソックスは既に汚れていたが、あまりの気持ちよさにまったく気にならなかった。
「水奈もえげつないわね」
「こうやって壊すと楽しいから仕方ないじゃない♪ ハルカだってやりたい放題だし」
「幾ら壊してもいいんだから当然じゃない」
気がつくと、車両ヤードは完全に壊滅していた。全ての電車が原型を失った状態で転がり、電車庫に至っては中にあった車両ごと踏み潰されて無残な姿を晒すだけだった。
「さすがは巨大少女怪獣ね」
「水奈だって破壊の女神らしい暴れぶりじゃない」
「てへっ♪ ちょっと本気出しちゃった」
ソックスに包まれた足で瓦礫を踏み潰して、水奈は笑った。いつの間にか少女の周囲にあったはずのビルやマンション、住宅は全て踏み潰されており、巨大な足跡がその上に残っている始末だった。
「でもまだまだ壊していない場所は多いわね。行くわよ♪」
「うん。負けたりしないから」
その言葉を合図にして、また新たな破壊劇が始まった。
ポニーテールにした髪を揺らすパーカーにミニスカートの巨大少女、そして癖のない黒髪が似合うTシャツにジーンズスカート、シャツ姿の巨大少女。
ふたりの大暴れは都市を完全に壊滅させるまで続いたのだった。

……
ここだけの話、ちょっと幼な目の女の子たちの大暴れは書いてて楽しかったです。無邪気な破壊劇はやっぱり独特の背徳感がありますね~。
次回の更新は1月7日前後、久しぶりに依頼イラストをあっぷします。ちょっと面白いイラストが届いたのでアップしたいとおもつています。ご期待ください!

小さな破壊神VS巨大少女怪獣(中編)

更新が遅くなって申し訳ないです……。前々からなんですが、どうも周期的に気分が沈む状態に悩まされていて、前回の更新後あたりから創作どころではなくなっていました(ホームページの止まったのも同じ原因)。しかも、昨日の朝からは「胸郭出口症候群」のせいで右腕が酷く痛む始末。これは医者に行って軽くはなったのですが、散々でした。それでも、何とか書き上げましたのでアップします。本当は前後編で完結の予定だったのですが、今回は中編とさせてもらって、いちゃいちゃシーンは次に回します。巨大化した女の子たちの破壊的いちゃいちゃも書いてて楽しいですからね。

……
水奈の突撃を、ハルカは正面から受け止めた。スニーカーで足元の車を派手に踏み潰しながら両手でガードしたが、その程度では止められなかった。
「絶対に許さないんだから!」
心の底から感情をぶちまけながら、ハルカの両手を掴むとそのまま力を込めて投げ飛ばす。
「えっ……きゃっ!」
思わず女の子らしい悲鳴が口をついたものの、30倍サイズに巨大化していては被害は甚大だった。白いパーカーとミニスカートの下で巻き添えになった住宅が次々に潰れ、マンションを背中で破壊してようやく止まったからである。短いスカートの奥の下着も丸見えだったが、気にしている余裕はなかった。
後先考えずに、水奈が飛びかかってきたかと思うとそのまま組み付いてきたからである。それだけでハルカが半壊させたマンションは完全に破壊され、瓦礫が周囲の建物などを巻き込む。
「ち、ちょっと水奈止めて!」
心のどこかでは全身を使って建物を壊し尽くすことに快感を覚えながらも、ハルカは抗議の声を上げた。幾ら身体は痛くないとはいえ心の痛みまでは誤魔化せなかった。
「嫌よ! 罰としてこーしてやるんだから!」
ハルカが反論する余裕もなかった。両腕で親友の巨体をロックした水奈は周囲の建物にも構わず思い切り転がったからだった。巨大な二人の少女によって、小型のビルや住宅、商店などが原型を残すことなく壊されていく。少女たちの洋服からも瓦礫やスクラップがぼろぼろとこぼれ落ち、そこに切れた電線が絡みつき火花を散らす。
水奈が転がるのを止めたのは二車線の大通りまで来た時だった。ハルカの上に馬乗りになったまま、道路上のバスを掴む。
「お姉ちゃんから教えてもらった遊びをしてあげる! ほらほら!こーすると気持ちいいでしょう?」
悪魔のような笑みを浮かべながら、水奈は手にした大型バスをハルカのパーカーに包まれた小さな胸の谷間に押し付けると、そのままこすりつけた。握力などによってバスは簡単に潰れたが、ハルカは脳が焼けるかのような刺激にあどけない喘ぎ声を上げる。
「あっ……! 止めて止めて! なんか……下から出ちゃう!」
「やっぱりね。お姉ちゃんこれが気持ちいいって言ってたけど、本当みたいね」
<ちょっとちょっと水奈! 大声で言わないで!>
「お姉ちゃんが遊びまくってるのはみんな知ってるわよ。お姉ちゃん胸が大きいから谷間で何でも壊してしまうって」
<……>
イヤホン越しに姉が沈黙するのも構わず、水奈はバスを放り投げると、愉悦に溺れて惚けるハルカの巨体を無理やり起こした。
「もっともっと壊して遊びたい?」
「うん……。お願い……」
目がとろんとして、返事も夢見心地だったが、水奈は<お願い>を忠実に実行に移した。笑いながら、ハルカの巨体をまだ壊していなかったビルに叩きつけたからである。抱きつくような形になったが、勢いがついていたので建物は簡單に倒壊し、周囲に瓦礫を派手に撒き散らす。ハルカもまたその上に転がる形になったが、水奈はさらに物のように転がして、周囲を壊滅に追い込んでしまった。
「いけない子ね。こんなに派手に壊してしまうなんて。ハルカのせいでみーんなめちゃめちゃじゃない」
「仕方ないじゃない……巨大化してるんだから……」
「そうだけど、こんなに素直だと張り合いないわね。さっきまでの元気はどこにいったのよ」
「さあ……。もっともっと壊したい……」
「さすがはハルカね。たった一時間で街を一つ壊滅させて得意そうにしてただけあるわね」
両手を腰に当てて呆れていた水奈だったが、自分の圧倒的な優位を確信して完全に気が緩んだ。腑抜けになったハルカの相手をする気が無くなって、背中を向けたからである。
「勝手に壊したらいいじゃない。水奈も勝手に遊ぶから♪ この街ぜーんぶ壊してしまうんだから」
恐ろしいことを平然と言い切って、水奈は道路上の車をまとめて蹴散らしながら歩き始める。
「あ、工場とかまとまってるじゃない。あそこ壊して遊んだら大爆発しそう♪」
すぐに新たな標的を見つけて、平然と住宅地に足を踏み入れる。小さな建物が紙の模型のように簡単に壊されていき、少女のスニーカーによって踏み潰されていったが、水奈は楽しそうに壊し続ける。
一通り住宅地を破壊し、いよいよ工業地帯に足を踏み入れようとした、その時だった。
背後で建物などが壊される音がしたような気がして、水奈は反射的に振り向いた。てっきりハルカが勝手に遊んでいるだけと思っていたのだが……。
いきなり、正面からタックルを受けて巨大化した少女は工場の敷地の中に思い切り突き飛ばされた。全身で建物やプラントを破壊し、倒れた煙突がまとめて体に当たる。
「油断したわね。本当に甘いんだから」
タックルを仕掛けたハルカの勝ち誇ったような声が響き渡る。
「さっきはよくもやってくれたわね。お返しするんだから!」
周囲の建物をさらに壊し、煙突などをかき分けてようやく水奈は体を起こした。短めのジーンズスカートの下では工場が無残に潰れていたが、その破壊の快感を味わうより早く、ハルカに腕を掴まれる。
「あっ……」
「この工場壊して遊ぶわよ! 水奈の体を使ってね!」
正直なところ、水奈は為す術がなかった。そのまま投げ飛ばされてさらに全身で工場を破壊してしまったからである。そこに倒れた煙突を叩きつけられ、たまらず転がってしまったが、その瞬間。何かに引火したのか大爆発が発生した。さすがのハルカも慌てて目を覆ったが、すぐにただの「演出」であることを思い出して微笑む。破壊行為も楽しかったが、こうやって炎上させてしまうのも怪獣のようで面白かった。
「こーなると一段と燃えるわね。巨大少女怪獣ハルカ、炎の力を借りてパワーアップ!」
思わずつぶやきながら水奈に対する復讐を続ける。工場が全て破壊され、盛大に黒煙や炎を吹き上げるようになっても水奈は反撃一つしなかった。

「……大丈夫かい? このままだと水奈ちゃんがヤバいよ」
モニターで仮想空間内を見つめながらスタッフAがつぶやく。
「心配性ね。水奈は平気よ。ああ見えても打たれ強いんだから。それに……」
「それに?」
「ハルカちゃんは怪獣だけど鬼じゃないわ。そろそろかもね」
水奈の姉・杏奈は平然としていた。まるで何かを確信しているかのように。

……

次回の更新は来週の予定です。もちろん、イラストをアップします。SSの方は……年内に完結するように頑張ります。ホームページの連載小説「反逆の従者」もラストなのでそっち優先になると思いますが……。
プロフィール

小笠原智広

Author:小笠原智広
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