天狗が羽根を広げたら(前編)

今週の更新は2本立てです。
1本目はずーっとお待たせしていた契音様からのリクエストに応えて、「東方」の犬走椛と姫海棠はたてのコンビの大暴れのSSです。お待たせして本当に申し訳なかったです。
なお、作中の時間軸は「東方文々春新報」が発行中止になった直後のあたりです。

……
「しっかし頭にくるったらありしゃしないわね~。あそこまでやっといて発行中止? ジャーナリストの風上にも置けないわね」
お茶を一気に飲み干して、姫海棠はたてはまくし立てた。
「こっちはどれだけ恥ずかしい思いしたと思ってるのよ! 文はいいかもしれないけど、こっちの立場にもなってよね!」
「……一番ノリノリだったのはたてさんだったと思います」
ごく控えめな態度で椛が反論する。
そもそも色々と面白くなかった。
ようやく仕事を終えて家に帰ってきた途端、普段は引き籠もっているはずのはたてが押しかけてきて一方的に文句をぶちまけ始めたからである。
裏表のない正直者とはいえ、さすがに酷いとしか言いようがなかった。
「はたてさん胸を思い切り強調してたじゃないですか。しかもポーズを変えて数十回を撮らせるものだから文さんにまで文句言われてたじゃないですか」
「文なんかパンチラしてたじゃない、パンチラ! 袋綴じだからってそこまでしてもいいと思ってる?」
「いいとは思いませんけど……。私はあれが世に出なくて良かったと思ってます。対談なんか正体モロバレだったじないですか」
「上層部(うえ)にバレなきゃ問題ないわよ。……それより本当に見損なったわ。あそこまで作っておいて中止だなんて」
菓子入れの饅頭を手にして、はたてはうんざりしたようにつぶやいた。
「仕方ないじゃないですか。捏造してしまったんですから。出さなかっただけましです」
「あんたは文の肩を持つのね。あんなに嫌ってるのに」
「個人的な好き嫌いと仕事に対する矜持は別問題です。文さんの決断は正しいと思います」
「ま、あんたは記者じゃないから気楽かもしれないけど……。あの週刊誌で散々引き合いに出された私の立場にもなってよ~」
「それが本音ですね」
「決まってるじゃない! あそこまで馬鹿にされた挙句反論もできなくなったんだから。この憂さ、どこにぶつければいいのよ!」
「随分とお困りのようね」
突然、第三の声が小さな居間に響き渡った。反射的に椛は愛用の武器に手をかけたが、すぐに声の正体に気づく。
何もない空間から半身を乗り出した八雲紫だった。
「……いつも言ってますが、せめて玄関から入ってきてください」
「だって面倒なんだもの。こっちの方が楽だし♪」
「それより、何か用?」
「ふふ。憂さが溜まって困ってるようだから手助けしてあげようと思ったのよ」
「それってまさか……」
「そのまさかよ。はい、二名様ご案内~」
「あ、待って下さい! まだ何も……」

次に気がついた時、椛は見覚えのある空間の中にいた。
自分の背よりもずっと小さな建物が立ち並び、道路上には無数の車が密集するその場所は……<外の世界>の大きな街だった。
「またここに来ちゃったわね~。まさかと思ってたけど」
はたての呆れたような声が耳に届いて、椛は耳を揺らしながらその方向を見た。引き篭もりの鴉天狗は約五十倍サイズまで巨大化してすぐ隣の通りに立っていた。
その前にはやはり建物が立ち並んでいたが、はたてと比べると模型のようにしか見えなかった。
「また巨大化してしまいましたね。……壊さないと駄目なんでしょうか?」
「そうじゃないの? だってこの前だって全部壊したら勝手に戻されたじゃない」
「文さんに酷い目に遭いましたけどね」
「思い出させないでよ……。もう二度と文は怒らせないって決めたんだから」
トラウマになっているのか、はたては大げさに頭を抱えた。スカートが揺れて、裾がビルの屋上にもかかる。
「はたてさん」
「ん? なに?」
「この辺り……私が壊してもいいですか?」
「いいんじゃないの? どーせ紫が作った架空の街なんだから。何をしても平気よ、きっと」
「何をしても平気……。そうですよね」
珍しく、椛が口元だけで笑った。可愛らしいものの、どこか危険な香りのする微笑にはたては慌てて問いかける。
「まさか、本気で大暴れする気?」
「この前は途中で文さんに邪魔されてしまいましたからね。こんな街、私一人で全部壊してみせます」
「待って! 待って待って!」
「え?」
「写真撮ってあげる。後であげるから撮らせて」
一瞬、きょとんとした椛だったが、すぐに笑いながら大きく頷いた。はたてのことだから記事にするのと引き換えだろうがそれでも構わなかった。何よりも、自分の大暴れする姿を後で見てみたかった。
「じゃ、いきますよ!」
言い切るのと同時に、巨大化した椛は仮想空間上に再現された町並みに襲いかかっていった。

最初に狙ったのは、大通りにぎっしりと止まった車だった。口元に笑みを浮かべたまま、草履に包まれた足で蹴散らして歩き始めたからだった。
「こういう壊し方も楽しいですよね。道路も穴だらけですし」
「あんた意外とSっ気あるのね。受け専門みたいに見えるのに」
「私はそんなにやわではありません!」
そう言うなり、椛は思い切り足を振り上げた。はたてがあっと思うよりも早く、豪快な蹴りを放つ。その一撃で通りにあった車は全て宙に舞い上がり、そのまま落下して全てスクラップになる。一部は爆発炎上して黒煙を吹き上げ始めたが、椛はそれすらも踏み潰して突き進む。
「こんなに大きな建物もあるんですね。外の世界には」
巨大化した少女が立ち止まったのは、交差点まで来た時だった。足元では車や信号、歩道橋などを踏み潰しながら、角に面した大型のビルの屋上に手をかける。
「でも……。邪魔ですね。えいっ!」
掛け声と共に、椛は無造作に腕を振り下ろした。力の込められたその攻撃によってビルは正面から破壊され、階層までむき出しになる。瓦礫が落下して道路上のスクラップになった車を直撃する。それでも椛は二度三度と腕を振り下ろして原形を無くしてしまうと、蹴りを入れてついには崩壊させてしまった。瓦礫が周囲を巻き込み、派手に埃が舞い上がったが、それをかき分けながら椛は足を踏み入れると、そのまま建物を壊しながら歩き始めてしまった。袴に包まれた足が小型のビルなどを全て薙ぎ倒し、草履に包まれた足がその瓦礫を踏み潰していく。それでも椛は無邪気に笑っていた。
「楽しそうね、あんたも」
携帯で写真を撮りながら、はたては半分呆れていた。
「楽しいに決まってるじゃないですか。こんなに大きくなって派手に暴れてるんですから。ここなら無敵です」
そう言いながら椛はまだ壊していないビルを土台ごと引き抜いてしまった。腋が丸見えになるのも構わずに高く持ち上げると、まだ壊していない地区へと叩きつけてしまった。想像を絶するような攻撃を受け止めて全ての建物が原形を失うほど破壊され、切れた電線がショートして火災を発生させたが、巨大化した少女は容赦しなかった。瓦礫を蹴ってジャンプすると、その中央部に着地したからである。局地的な地震が発生し、不意を突かれたはたては派手にしりもちをしたが、椛は本能のままに破壊の限りを尽くした。
立ち並ぶ住宅をまとめて蹴散らす。
ビルの密集する場所に座り込んで壊滅させる。
建物を引き抜いて周囲に叩きつける。
それらを繰り返しただけで街の一部は壊滅状態になってしまった。
「やりたい放題ね。あんたも」
大通りの上にしりもちをついたまま、はたては正直な感想を漏らした。ミニスカートがまくれてパンツが丸見えとなり、その周囲には壊された車が散らばっている状態だったが、まったく気にしていなかった。
「どうですか? 私の暴れ方は?」
「最高よ、最高! やっぱり凄い破壊衝動が眠ってたのね~」
「はたてさんだって十分凄いですよ」
「まーね。でも今は椛の大暴れが見たいな~。なんて♪」
「いいですよ。幾らでも暴れてあげますから」
派手に暴れてすっかり気分が良くなったのか、椛は笑って言い切ると無残な姿となった地区から出た。車などを踏み潰しながら次の獲物に襲いかかる。今度の狙いはマンションや住宅が混在する地区だった。
「それっ!」
まずはいきなり走り出すと、そこ目掛けてヘッドスライディングを敢行する。豊かな膨らみを持つ胸に押し潰されて小さな住宅などがまとめて壊滅したが、さらに転がってみせる。巨大化した少女の全体重を受け止めて建物は瓦礫と化していき、着物や袴も埃まみれになったが、椛はまるではしゃぐ白犬のように暴れるのを止めなかった。
ふさふさの尻尾を揺らしながら中層のマンションに飛びかかって、それだけで中央部を分断してしまったからだった。
「意外と簡単に壊れてしまうんですね」
わざとらしく言いながら壊し残した部分を手だけで壊してしまうと、別の建物にも飛びつく。大きめの胸の下で建物が破壊されていのが妙に気持ちよくて、下半身が熱くなるのを感じる。
「胸で壊してしまうなんて面白いわね。椛って可愛い顔に似合わず胸が大きいから絵になるわね~」
正面に回りんだはたてが笑って言い切る。
「ま、まあ大きいのは認めます……。気持ちいいのも……」
「恥ずかしがらなくてもいいの♪ ここには私たちしかいないんだから。二人だけの秘密よ」
「この会話だけは記事にしないで下さいね。……写真ぐらいは許しますから」
「私だって恥をかきたくないから大丈夫♪」
「それもそうですね」
はたての言葉に嘘があるとは思えなかったこともあり、椛は胸や全身を使った破壊劇を続けた。気がつくと閑静な住宅街はただの瓦礫の山となっており、巨大化したふたりの天狗たちだけが悠然と座りんでいる始末だった。
「次は何を狙うの?」
「だったらあれを壊してみます」
ふさふさの尻尾を大きく揺らしながら、椛は立ち上がった。足元の瓦礫を蹴散らしながら新たな獲物に狙いを定める。それは鉄道の高架線だった。
「うわーいいもの見つけたわね。やっちゃっていいわよ♪」
「もちろんそのつもりです」
普段はほとんど意識しない下半身がさらに熱くなっていることを意識しながらも、椛は高架線の上に巨大な足を振り下ろす。無造作としか言いようがない行動だったが、それだけで高架線は両断され一部が完全に踏み潰される。それでも壊した部分に手を入れて、そのまま引きちぎってしまった。
「いい感じいい感じ! 怪獣みたいじゃない」
すぐ近くまで来て写真を撮りながら、はたてが親指を突き上げる。その足元に高架線にのっていた電車が落下してしてきたが、思わず踏み潰してしまう。一瞬驚いたような表情を見せたもののすぐに蹴飛ばしてさらに周囲の建物を破壊する。それでもお構いなしだった。
「そのものじゃないですか。こんな事をしてるんですから!」
そう言いながら椛は両手で持っていた高架線をまだ壊していない部分に叩きつけてしまった。轟音が響き渡り、鉄道の高架線が一度に破壊されたが、椛はその埃をかき分けながら半分が壊された電車を掴み上げてみせる。
「こういうのを見てると……遊びたくなるんですよね♪」
上気した表情で言い切ると、簡単に2両分だけを引きちぎる。何を始めるのか興味津々なはたての視線を感じながらその場に座り込むと……ふっくらとした胸の谷間に挟めてしまった。
「うわー大胆」
「はたてさんだってやってたじゃないですか」
「こうやって見ると凄くエロい光景ね」
「そう……ですけど……ね」
椛の息が激しくなり始めていた。それでも両手で持った電車で胸の谷間をこすりつけるのを止めることはできない。こすられるたびに電車は壊されていったが、自分が「いけないことをしている」という罪悪感が気持ちよくて仕方なかった。
「うっ……ふう……ああっ! 駄目です!」
悦楽が脳天を直撃して、椛は壊したばかりの高架線や周囲の住宅を巻き込んで転がってしまった。本能のままに手足を動かし、建物などを壊しながら転がり回る。
「……もしかして、イッちゃってる?」
さすがに撮影を中止して、はたては呆れていた。撮りたいのは山々だったが、越えてはいけない一線を越えそう気がした。
「そんなとこは……うふっ、き、気持ちよくて……ああ!」
「好きにしてもいいわよ。でも見てるだけで興奮してきそう」
思わず自分の下半身に目を落とす。破壊衝動を無理やり押さえているところに痴態を見せられて、もはや爆発寸前だった。
「もう我慢出来ない! 私も暴れるんだから!」
恍惚に溺れる椛に構わず、はたても大暴れを始めたのはその時だった。

……

前も言ったかもしれませんが、椛は真面目なだけに暴走すると止まらなそうですね~。
続きは例大祭の後にアップします。お楽しみに!
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小さな破壊神VS巨大少女怪獣(後編)

何とか年内に間に合いました。後編はひたすら破壊しまくりになってしまいましたが、お楽しみ下さい。

……
気がつくと、工場が立ち並ぶ地区は全て壊滅していた。
建物は破壊し尽くされて黒煙や炎を盛大に吹き上げ、一部ではなおも爆発している。運河にかけられていた橋も落とされて無残な姿を晒し、道路上にはスクラップになった車が散乱している。その光景を眺めながら、巨大化したハルカは満足そうに笑っていた。
「あーあ。まためちゃめちゃに壊しちゃった♪ まともな建物なんて残ってないじゃない。ね、水奈」
親友の少女の返事は無かった。瓦礫の上に転がって目を閉じているだけだった。
「水奈も派手にやったわね。口では嫌がりながらどんどん壊していくんだから。やっぱり水奈と遊ぶのが一番楽しいわね。……楽しい?」
ハルカの表情が曇った。今更のように、自分が水奈を思い切り痛めつけた理由を思い出す。
「……水奈。大丈夫? ちょっとやり過ぎたかも」
返事は無かった。さすがに罪悪感を覚えたのか、ハルカは慌てて膝をついて親友の巨体を揺さぶる。
{ねえ、水奈。返事して。大丈夫? 水奈!」
「……ハルカ?」
「あ、やっと目を開けた……。大丈夫?」
「大丈夫なわけないじゃない。お返し」
その時、ハルカはまったく警戒していなかった。両手で身体を掴まれたかと思うと、そのまま引きずり倒されてしまったからだった。白いパーカーの下で瓦礫が更に潰れ、ポニーテールにした髪が大きく広がる。
「ち、ちょっと……!」
「絶対に許さないんだから。だから……こうしてあげる」
ハルカが身体を起こす余裕もなかった。両腕が絡んできたと思うと水奈が全身を寄せてきたからだった。お嬢様風の少女に相応しい甘酸っぱい香りが鼻を刺激する。わずかに膨らんだ胸同士も密接して、その上にあった瓦礫がさらに潰れる。
「水奈……」
「許さないって言ったじゃない♪」
あっと思う間もなかった。思い切り抱き合ったまま、ふたりの巨大少女は周囲の建物にも構わず転がったからだった。普段着の下でまだ壊れていなかった工場やプラントが次々に破壊されていき、爆発したり炎上したりする。
「水奈……」
たまりかねてハルカが口を開いたのは、工場地帯を出て、海岸に面した再開発地区まで転がってきた時のことだった。
「ねえ、水奈ったら」
「もう怒ってないから安心して♪ 大暴れしたらすっきりしたし」
「水奈……。ごめん。本当にごめん!」
「いいのいいの。もう気にしてないから。それより……」
ゆっくりと水奈がハルカから離れた。名残惜しそうな顔をする親友に笑いかける。
「ここを壊して遊ばない? 綺麗な建物がいっぱい建ってるじゃない。これをみーんな壊してしまうの」
「もちろん! どっちがたくさん壊せるか競争しない?」
「いいわよ。負けないから!」
顔を見合わせて笑い合った瞬間、二人の少女の間に存在していたわだかまりが消え去った。そして、それが合図となった。
「最初にこのビル壊すね! えいっ!」
いきなり、ハルカが目についた大型のビルを蹴り上げたからだった。ミニスカートが派手に翻るのも構わない一撃に、ビルは正面を完全に破壊されて無残な姿になってしまう。それでも物足りなかったのか、今度はなんとジャンピングヒップアタックを食らわせて崩壊に追い込んでしまった。
「うわ~。凄い壊し方……」
さっそく近くにあったマンションを手で壊していた水奈が呆れたような声を出す。
「面白いでしょう? どーせ痛くないんだし、何をしても平気♪」
笑って言い切ると、ハルカはなおも破壊活動を続けた。瓦礫を落としながら立ち上がると、隣りにあったビルの真上に無造作に座り込んでしまったからだった。
「見て見て! 新技・座り込み壊し!」
「面白いけど……。パンツ丸見えじゃない」
「いいのいいの。どーせ水奈しかいないんだから。えいっ!」
平然と言いながら、一度立ち上がったハルカはさらに住宅が密集する地区に座り込んでしまった。チェックのスカートの下で多くの住宅が瓦礫になっていき、潰された車が爆発したが、ハルカは座り込んだまま前に進んでしまう。すらりとした足や手が凶器となって、さらに住宅を壊していく。
「今度はこんな事をしたりして♪」
水奈の視線に気づいて、ハルカはその場に無造作に横になると、そのまま転がってしまった。ポニーテールにした髪が生き物のように瓦礫の上に広がり、白いパーカーの下で小さなビルがまとめて壊滅していく。
「水奈が壊す分が無くなりそう……」
「大丈夫♪ まだ幾らでもあるじゃない」
「うん。こっちは水奈に任せて」
無造作に道路上の車を全て破壊しながら、お嬢様風の巨大美少女も破壊活動を続けた。まずはいきなり、立ち並ぶ住宅などに向かって豪快なスライディングを敢行する。ソックスとスニーカーに包まれた足が派手に住宅を破壊したが、水奈はその感覚すらも楽しみながら両手を振り回して周囲の建物を壊し尽くす。
「水奈も滅茶苦茶やるわね」
「いーじゃない。それより、こんな壊し方もあるわよ」
巨大化した水奈が四つん這いになった状態で体を起こした。そのまま両手や両膝で小さな建物を壊しながら突き進むと、大きめのマンションの前で止まる。
「そこからどうするの?」
地面から引き抜いた高圧電線塔を持ったまま、ハルカが問いかける。
「決まってるじゃない。こーやって壊してしまうの!」
ハルカが言葉を見つける間も無かった。水奈はそのまま、Tシャツに包まれた小ぶりな胸をマンションに押し付けたからだった。巨大少女の体重を受け止めて、建物は簡単に壊れていく。
「全身を使って壊してしまうのって楽しい~。ほらほら、こんなに簡単なんだから」
嬉々とした声を上げている間にも、建物は少女のしなやかな肢体によって壊されていく。無造作についた手が別の建物を巻き込み、膝が止めを刺しても、水奈は止まったりしない。四つん這いになったままさらに別のビルも壊してしまったからだった。
「水奈も大胆ね♪」
「ハルカには負けないんだから!」
そう言いながら、今度はかなり大きなビルに思い切り抱きつく。胸を押し付けるとそれだけでガラスが砕け散り、骨組みまでむき出しになっていったが、さらに破壊的な抱擁を続けてついには真っ二つにしてしまった。
「あーあ。簡単に壊れちゃった。ちょっとつまんないわね」
「ほんと。この辺りもめちゃめちゃになったわね」
車を踏み潰しながらハルカが歩いてきた。壊したばかりのビルの上に座り込んでいた水奈だったが、当たりを見回して瓦礫しかないのを確かめて、満足そうに笑う。
「水奈たちが暴れると無敵ね」
「でもまだ物足りないんでしょう? 今度はこっちに行ってみない?」
「あ、凄い。まだあんなに大きな建物とか残ってるじゃない。まだまだ壊すんだから!」
再開発された地区を完全に破壊してもまだ物足りないのだろう。水奈はすぐに立ち上がった。そのまま、ハルカと肩を並べてまだ無傷の地区へと襲いかかっていくのだった。

その後もふたりの巨大少女たちの大暴れは止まらなかった。
仮想空間上の都市なのでいくら壊しても問題ないこともあって、それこれやりたい放題だった。
「また壊しちゃった……。ビルだけでも百以上は壊したかも」
また一つ、大型のビルを座り込み攻撃で破壊して、ハルカは笑った。パーカーについた瓦礫を払い、ソックスとスニーカーに包まれた足を伸ばして、道路上の車を壊す。形あるものは全て壊してしまうのが、<巨大少女怪獣>ハルカの流儀だった。
「お尻で壊してしまうのも楽しいわね。簡単に壊れてしまうし。こーんな感じで♪」
瓦礫などを落としながら立ち上がったハルカだったが、アーケードに包まれた商店街を見つけるとまたもや座り込んでしまった。チェックのミニスカートに包まれたヒップが凶器となって商店とアーケードをめちゃめちゃにしたが、ハルカは笑っていた。
一方、水奈は大きなコンベンションホールをたった一人で壊していた。駐車場の車を蹴散らしながら足を踏み入れると、その場に座り込んでまるで遊ぶように建物を解体していったからである。
「こんな大きな建物でも水奈の手にかかったら簡単に壊れるわね~。これなんてこーやって……」
原型を留めないほどにホールを破壊して、水奈は止めとばかりに屋根を力任せに引きちぎった。それを両手で持つとそのまま何度も叩きつける。派手な音がして、さすがのホールもただの瓦礫になってしまった。
「ねえ水奈。今度はこうやって壊してみない?」
「え? スニーカーを脱いでどうするの? まさか……」
「靴下履きで暴れてしまうの♪」
脱いだスニーカーを無造作に放り投げてさらに建物を壊すと、ハルカは純白のソックスに包まれた足で道路上の車を踏み潰し始めた。巨大化しているので痛みなどもまったく感じなかったが、不思議な感覚がして気持ちよかった。
「こーするといかにも自分の足で壊してる感じがして楽しい♪」
「あ、面白そう。水奈もやるやる♪」
調子に乗って、水奈もスニーカーを脱いでしまった。試しに壊したばかりのコンベンションホールの瓦礫を踏み潰してみる。スニーカーを履いていた時からは想像もつかない感覚が脳を刺激して、思わず笑みがこぼれる。
「こういう壊し方も楽しいわね」
「だからこうやって壊してしまうの。巨大少女怪獣ハルカ、車両ヤードを襲撃します~」
高らかに宣言して、白いパーカーにチェックのスカート、純白のソックスの巨大少女は車両ヤードへと足を踏み入れた。まずはヤードに留置された電車をソックスに包まれた足だけで次々に踏み潰していく。紙の模型よりも簡単に壊れていったが、それでも満足できなかったのだろう。壊したばかりの電車を中程から掴み上げると、そのまま目についたガスタンクに投げつけて大爆発を起こしてしまった。
「びっくりした……。急にやらないでよ」
すぐ近くで住宅をソックスに包まれた足で壊滅させていた水奈が抗議の声を上げる。
「ごめん。でもこうやって炎上すると楽しいわね。本物じゃないからちっとも熱くないし」
「ほんとほんと。でも怪獣映画みたい」
そう言いながら水奈は、立ち塞がったマンションの真上にソックスに包まれた足を振り下ろす。その一撃だけで建物は真っ二つになったが、さらに別の足も下ろしてぐちゃぐちゃになるまで踏み散らかす。ソックスは既に汚れていたが、あまりの気持ちよさにまったく気にならなかった。
「水奈もえげつないわね」
「こうやって壊すと楽しいから仕方ないじゃない♪ ハルカだってやりたい放題だし」
「幾ら壊してもいいんだから当然じゃない」
気がつくと、車両ヤードは完全に壊滅していた。全ての電車が原型を失った状態で転がり、電車庫に至っては中にあった車両ごと踏み潰されて無残な姿を晒すだけだった。
「さすがは巨大少女怪獣ね」
「水奈だって破壊の女神らしい暴れぶりじゃない」
「てへっ♪ ちょっと本気出しちゃった」
ソックスに包まれた足で瓦礫を踏み潰して、水奈は笑った。いつの間にか少女の周囲にあったはずのビルやマンション、住宅は全て踏み潰されており、巨大な足跡がその上に残っている始末だった。
「でもまだまだ壊していない場所は多いわね。行くわよ♪」
「うん。負けたりしないから」
その言葉を合図にして、また新たな破壊劇が始まった。
ポニーテールにした髪を揺らすパーカーにミニスカートの巨大少女、そして癖のない黒髪が似合うTシャツにジーンズスカート、シャツ姿の巨大少女。
ふたりの大暴れは都市を完全に壊滅させるまで続いたのだった。

……
ここだけの話、ちょっと幼な目の女の子たちの大暴れは書いてて楽しかったです。無邪気な破壊劇はやっぱり独特の背徳感がありますね~。
次回の更新は1月7日前後、久しぶりに依頼イラストをあっぷします。ちょっと面白いイラストが届いたのでアップしたいとおもつています。ご期待ください!

小さな破壊神VS巨大少女怪獣(中編)

更新が遅くなって申し訳ないです……。前々からなんですが、どうも周期的に気分が沈む状態に悩まされていて、前回の更新後あたりから創作どころではなくなっていました(ホームページの止まったのも同じ原因)。しかも、昨日の朝からは「胸郭出口症候群」のせいで右腕が酷く痛む始末。これは医者に行って軽くはなったのですが、散々でした。それでも、何とか書き上げましたのでアップします。本当は前後編で完結の予定だったのですが、今回は中編とさせてもらって、いちゃいちゃシーンは次に回します。巨大化した女の子たちの破壊的いちゃいちゃも書いてて楽しいですからね。

……
水奈の突撃を、ハルカは正面から受け止めた。スニーカーで足元の車を派手に踏み潰しながら両手でガードしたが、その程度では止められなかった。
「絶対に許さないんだから!」
心の底から感情をぶちまけながら、ハルカの両手を掴むとそのまま力を込めて投げ飛ばす。
「えっ……きゃっ!」
思わず女の子らしい悲鳴が口をついたものの、30倍サイズに巨大化していては被害は甚大だった。白いパーカーとミニスカートの下で巻き添えになった住宅が次々に潰れ、マンションを背中で破壊してようやく止まったからである。短いスカートの奥の下着も丸見えだったが、気にしている余裕はなかった。
後先考えずに、水奈が飛びかかってきたかと思うとそのまま組み付いてきたからである。それだけでハルカが半壊させたマンションは完全に破壊され、瓦礫が周囲の建物などを巻き込む。
「ち、ちょっと水奈止めて!」
心のどこかでは全身を使って建物を壊し尽くすことに快感を覚えながらも、ハルカは抗議の声を上げた。幾ら身体は痛くないとはいえ心の痛みまでは誤魔化せなかった。
「嫌よ! 罰としてこーしてやるんだから!」
ハルカが反論する余裕もなかった。両腕で親友の巨体をロックした水奈は周囲の建物にも構わず思い切り転がったからだった。巨大な二人の少女によって、小型のビルや住宅、商店などが原型を残すことなく壊されていく。少女たちの洋服からも瓦礫やスクラップがぼろぼろとこぼれ落ち、そこに切れた電線が絡みつき火花を散らす。
水奈が転がるのを止めたのは二車線の大通りまで来た時だった。ハルカの上に馬乗りになったまま、道路上のバスを掴む。
「お姉ちゃんから教えてもらった遊びをしてあげる! ほらほら!こーすると気持ちいいでしょう?」
悪魔のような笑みを浮かべながら、水奈は手にした大型バスをハルカのパーカーに包まれた小さな胸の谷間に押し付けると、そのままこすりつけた。握力などによってバスは簡単に潰れたが、ハルカは脳が焼けるかのような刺激にあどけない喘ぎ声を上げる。
「あっ……! 止めて止めて! なんか……下から出ちゃう!」
「やっぱりね。お姉ちゃんこれが気持ちいいって言ってたけど、本当みたいね」
<ちょっとちょっと水奈! 大声で言わないで!>
「お姉ちゃんが遊びまくってるのはみんな知ってるわよ。お姉ちゃん胸が大きいから谷間で何でも壊してしまうって」
<……>
イヤホン越しに姉が沈黙するのも構わず、水奈はバスを放り投げると、愉悦に溺れて惚けるハルカの巨体を無理やり起こした。
「もっともっと壊して遊びたい?」
「うん……。お願い……」
目がとろんとして、返事も夢見心地だったが、水奈は<お願い>を忠実に実行に移した。笑いながら、ハルカの巨体をまだ壊していなかったビルに叩きつけたからである。抱きつくような形になったが、勢いがついていたので建物は簡單に倒壊し、周囲に瓦礫を派手に撒き散らす。ハルカもまたその上に転がる形になったが、水奈はさらに物のように転がして、周囲を壊滅に追い込んでしまった。
「いけない子ね。こんなに派手に壊してしまうなんて。ハルカのせいでみーんなめちゃめちゃじゃない」
「仕方ないじゃない……巨大化してるんだから……」
「そうだけど、こんなに素直だと張り合いないわね。さっきまでの元気はどこにいったのよ」
「さあ……。もっともっと壊したい……」
「さすがはハルカね。たった一時間で街を一つ壊滅させて得意そうにしてただけあるわね」
両手を腰に当てて呆れていた水奈だったが、自分の圧倒的な優位を確信して完全に気が緩んだ。腑抜けになったハルカの相手をする気が無くなって、背中を向けたからである。
「勝手に壊したらいいじゃない。水奈も勝手に遊ぶから♪ この街ぜーんぶ壊してしまうんだから」
恐ろしいことを平然と言い切って、水奈は道路上の車をまとめて蹴散らしながら歩き始める。
「あ、工場とかまとまってるじゃない。あそこ壊して遊んだら大爆発しそう♪」
すぐに新たな標的を見つけて、平然と住宅地に足を踏み入れる。小さな建物が紙の模型のように簡単に壊されていき、少女のスニーカーによって踏み潰されていったが、水奈は楽しそうに壊し続ける。
一通り住宅地を破壊し、いよいよ工業地帯に足を踏み入れようとした、その時だった。
背後で建物などが壊される音がしたような気がして、水奈は反射的に振り向いた。てっきりハルカが勝手に遊んでいるだけと思っていたのだが……。
いきなり、正面からタックルを受けて巨大化した少女は工場の敷地の中に思い切り突き飛ばされた。全身で建物やプラントを破壊し、倒れた煙突がまとめて体に当たる。
「油断したわね。本当に甘いんだから」
タックルを仕掛けたハルカの勝ち誇ったような声が響き渡る。
「さっきはよくもやってくれたわね。お返しするんだから!」
周囲の建物をさらに壊し、煙突などをかき分けてようやく水奈は体を起こした。短めのジーンズスカートの下では工場が無残に潰れていたが、その破壊の快感を味わうより早く、ハルカに腕を掴まれる。
「あっ……」
「この工場壊して遊ぶわよ! 水奈の体を使ってね!」
正直なところ、水奈は為す術がなかった。そのまま投げ飛ばされてさらに全身で工場を破壊してしまったからである。そこに倒れた煙突を叩きつけられ、たまらず転がってしまったが、その瞬間。何かに引火したのか大爆発が発生した。さすがのハルカも慌てて目を覆ったが、すぐにただの「演出」であることを思い出して微笑む。破壊行為も楽しかったが、こうやって炎上させてしまうのも怪獣のようで面白かった。
「こーなると一段と燃えるわね。巨大少女怪獣ハルカ、炎の力を借りてパワーアップ!」
思わずつぶやきながら水奈に対する復讐を続ける。工場が全て破壊され、盛大に黒煙や炎を吹き上げるようになっても水奈は反撃一つしなかった。

「……大丈夫かい? このままだと水奈ちゃんがヤバいよ」
モニターで仮想空間内を見つめながらスタッフAがつぶやく。
「心配性ね。水奈は平気よ。ああ見えても打たれ強いんだから。それに……」
「それに?」
「ハルカちゃんは怪獣だけど鬼じゃないわ。そろそろかもね」
水奈の姉・杏奈は平然としていた。まるで何かを確信しているかのように。

……

次回の更新は来週の予定です。もちろん、イラストをアップします。SSの方は……年内に完結するように頑張ります。ホームページの連載小説「反逆の従者」もラストなのでそっち優先になると思いますが……。

小さな破壊神VS巨大少女怪獣(前編)

今回はガリクソン様からのリクエストに応えて、水奈&ハルカのSSをお送りします。ただ破壊するだけではちょっとつまらなかったので、今回はこんなお話にしてみました。

……
「元気出しなさいよ、水奈ったら。半分は水奈が悪いんでしょう」
「違うったら! 悪いのはハルカの方だってば!」
大学生の姉・杏奈の言葉に、妹の水奈は全力で反論した。
今日は久しぶりにシティクラッシュゲーム(CCG)のテストプレイの日だったが、そのプレイヤーである水奈の機嫌がいつもよりずっと悪かった。
「ハルカかが水奈の言ったことをぜーんぶバラしたんだから! ハルカのこと信じてたのに……」
「でも言ってはいけないことを言いまくっていたのは水奈じゃない。だから無料通話アプリは気をつけないとダメだって言ってたのに」
「ハルカは絶対バラさないと思ったのに……」
姉にそっくりな正統派美少女の水奈だったが、むくれまくっていては台無しだった。
「水奈ちゃん、今日の実験どうする? 準備は全部整ってるけど」
いつもは楽天的なスタッフAが心配そうに尋ねてくる。
「ん……。そのままやっちゃって。変更なし」
「いいのかい? 水奈ちゃんそんな気分じゃないように見えるよ」
「そんな気分じゃないからやってもらうのよ。架空の街を徹底的に壊して暴れれば少しはすっきりするんじゃない? それに……」
「それに?」
「ちょっと面白いこと思いついたからそのまま実験するわよ。水奈、準備して」

身長50メートル近くまで巨大化した水奈が、仮想空間上に作られた巨大都市に降り立ったのは、それからしばらくしてからのことだった。
「今日はやりたくないのに……」
<贅沢言わないの。この実験、準備に凄く手間がかかるんだから。ドタキャンは出来ないのよ>
耳の中の超小型イヤホンから姉が注意する。それがまた面白くなかったこともあり、水奈は足元の車数台スニーカーの先で思い切り蹴飛ばして破壊する。
Tシャツにデニムスカート、羽織っただけのシャツというシンプルな私服姿のままだったが、巨大化しているのでやりたい放題だった。
「……やればいいんでしょう? やれば」
<そういうこと♪ どーしても今回のテストは必要なのよね。オプションを追加してるし>
「オプション?」
<ま、それはすぐに分かるわ。とにかくいつもみたいに好き勝手に暴れて。その街ぜーんぶめちゃめちゃにしていいから>
それで姉からの通信は終わったが、水奈は辺りを見回して小さく溜息をついた。
今立っているのは中心部に近い鉄道の駅の前だった。新幹線も通っている大型の高架駅で、ロータリーには高架の歩道橋も渡されていたが、水奈にはただのおもちゃにしか見えなかった。
もう、お姉ちゃんったら。いっつもこーなんだから!
親友と姉への怒りが、破壊衝動に転じるまでほんの一瞬だった。ぐっと唇を結んだ巨大少女は後先考えずに駅前のロータリーを蹂躙し始めたからだった。巨大なスニーカーが凶器と化して車やバス、歩道橋をまとめて破壊していく。道路は踏み抜かれて足跡だらけになり、バスターミナルはバスごと破壊され、一部の車両が爆発して黒煙を吹き上げ始める。
それでも水奈は止まったりしなかった。ロータリーなどを破壊すると今度は目の前のビルに容赦ないキックを浴びせたからだった。スニーカーの先がめり込んで建物を貫通し、そこから建物は崩壊していく。
「いつものことだけど簡単に壊れるわね……」
数十棟のビルを瓦礫に変えて、水奈は少しだけ気分が晴れるのを感じていた。この架空世界にいる限り、自分は無敵そのものだった。
<いい調子ね。そのまま高架駅も壊してしまいなさいよ。怪獣みたいにめちゃめちゃにね♪>
「もちろん!」
水奈の口元に笑みが浮かんだ。ようやく吹っ切れたのだろう。いつもの調子を取り戻した巨大化少女は躊躇い一つ見せずに大型の駅へと襲いかかっていった。
最初に、駅の上に立つビルを思い切り殴りつける。それだけで階層がむき出しになったのを見ると、華奢な肩でショルダータックルを食らわせる。巨大化した水奈の全体重を受け止めて駅ビルは簡単に崩壊して、駅の反対側も瓦礫に変える。そこに水奈はスニーカーに包まれた足を入れると、笑いながら歩き始めてしまった。足元ではホームや電車がまとめて潰され、原型を失っていったが、水奈は壊れた部分に両手をかけてそのまま引きちぎってしまった。
「えいっ!」
気合とともにまだ無傷の部分に叩きつけてさらに破壊すると、蹴飛ばして思い切り踏み潰す。ありとあらゆる建造物や電車が破壊される轟音が響き渡ったが、気持ちよくて仕方なかった。
「あ、電車あるじゃない♪ これで遊ぼうっと」
高架駅の中心部をほぼ壊滅させて、水奈は新たな獲物を見つけた。無造作に瓦礫の上に膝をつくと、既に半分の車両が破壊された電車を掴み上げたからである。
「電車はね……こーやって壊してしまうの!」
独り言のようにつぶやきながら、簡単に握り潰す。ただのスクラップになったのを確かめると投げ捨てて、別の車両はまだ壊していない建物に投げつけてまとめて破壊してしまった。
一通り電車で遊んでから、水奈は瓦礫を落としながら立ち上がった。周囲を見回して自分の破壊力を確かめると、それこそ調子に乗って暴れ始める。
高架駅の残りの部分を手足を使って完全に破壊する。
駅前にあった大型デパートやファッションビルをまとめて薙ぎ倒し、瓦礫を踏み潰してポーズを決める。
大通りの車を全て破壊しながらスライディングを敢行する。
こうして、可愛らしい顔をした巨大美少女の手によって、巨大都市の一部は完全に壊滅した。
<相変わらず水奈は派手に暴れるわね~>
瓦礫とスクラップを踏みつけながら大通りで休息していると、イヤホン越しに姉が話しかけてきた。
「当然じゃない。水奈は<小さな破壊の女神>だもん」
<そうよね。だったら<巨大少女怪獣>の相手をしてもらうわよ。小さな破壊の女神さん>
水奈が驚く間もなかった。
無傷だった車を盛大に踏み潰しながら、親友のハルカが巨大化した状態で大通りに降り立った。

「ハルカ……」
「わたしもテストに付き合うわよ。杏奈お姉ちゃんから誘われたの。久しぶりにいいでしょう?」
<中途参加機能、問題ないみたいね。今度から途中からでもプレイに参加できるようになったのよ>
「お姉ちゃん、早く言ってよ」
<言ったら水奈はテストに参加しないでしょう?>
姉の言葉に、妹は何も言わずに俯いた。まさにその通りだった。
<さあ、仲直りしなさい。意地を張ってもいいことなんて無いんだから>
「そういうこと。さ、いつものように遊ばない?」
ハルカが無造作に歩いてくる。長めのソックスとスニーカーに包まれた足が次々に車を壊し、アスファルトを陥没させていたが、慣れているので気にしたりしない。
しかし、水奈は……。
「嫌っ!」
激情が心を満たすのと同時に、水奈は近づいてきたハルカを思い切り突き飛ばした。不意を突かれて、巨大化したポニーテール少女は大通りの上に簡単にしりもちをつく。
「絶対に許さないんだから! ハルカばっかりいい子ぶってずるい! ハルカだって悪いのに!」
<水奈……>
「だいたいぜーんぶハルカが悪いんだから!」
最早水奈を止めることはできなかった。一時的にしろ、理性のタガが外れた巨大少女は、長い髪をふわりと翻しながらハルカへと飛びかかっていったからである。両手で相手の全身を掴むと、巨大化しているのもお構いなしに転がる。その先にあったのは低層の住宅が立ち並ぶ地区だったが、水奈とハルカの巨体によって簡単に破壊されて瓦礫となっていく。
「ち、ちょっと水奈……」
仮想空間上にいる為、痛みは感じなかったが、さすがにハルカは慌てていた。いつもは大人しい水奈とは思えない暴走ぶりだった。
「許さないんだから! えいっ!」
何にもできないまま、ハルカが投げ飛ばされた。受け身すら取れないままパーカーに包まれた背中でマンションの中央部を崩壊させ、伸びた手足も他の建物を巻き込む。巨大化しているため、被害は甚大そのものだった。
「水奈! わたしの話も聞いて!」
「嫌! えいっ!」
ハルカの言葉を無視して、水奈は攻撃を続けた。近くにあったビルを土台ごとを引き抜くと、親友目かげて投げつけたからだった。さすがにハルカは両手で庇ったので、建物はバラバラになり、周囲を破壊するだけで終わる。ハルカのパーカーやミニスカートにも破片が派手に降り注ぎ、少女の心を熱くしていく。
「水奈……」
「巨大少女怪獣ハルカ。退治してあげる!」
言い切るのと同時に、水奈は羽織っただけのシャツを翻しながら飛びかかってきた。後先考えていない攻撃だったが、さすがにハルカは避ける。
「本気なの?」
「本気に決まってるじゃない!」
誤爆した水奈は、ハルカが壊したマンションの隣りにあったビルをその巨体で破壊していた。髪を後ろにやり、まとわりつく瓦礫や建物の残骸を振り落として構える。それを見てハルカも破片などを落としながら立ち上がる。
Tシャツにジーンズスカート、シャツ姿の清楚な巨大少女と、白いパーカーにミニスカート姿でポニーテールがよく似合う活発な巨大少女が瓦礫の上で向かい合う。
「いくわよ!」
水奈の宣言と共に、破壊神と怪獣の二つ名を持つ巨大化少女たちの戦いは始まった。

……
というわけで、水奈とハルカの巨大化したままの大喧嘩が始まってしまいました。これで街は壊滅してしまいますね。

次の更新は来週、イラストの更新を予定しています。

荒事始末人ユリアの仕事(4)

やっと完結編です。お待たせして申し訳ないです。

……

一方その頃。当の謙吾はカメラを回す反対の手で電話に出ていた。動画を中継するスマホとは別のスマホに着信があったからだった。
「だからなんでこんな時に電話してくんだクソ親父! 最高のチャンス逃すだろ!?」
電話してきたのは海外にいる父親だった。余程電波事情の悪い辺鄙な場所にいるのか、いまいち聞き取りづらい。
「……え? 男なら見てないで助けろ? どーやれっていうんだ!
巨大女ふたりにビオランテもどきまでいるんだぜ!」
「へ? 護符? 今持ってるけど……。それがあれば大丈夫? 一度だけなら願いは叶う? マジかよ……」
どうやら父親の横には別の誰かがいるらしい。年老いた女性の訛りの酷いフランス語と父親の話す日本語訛りのフランス語の会話が交じるので話の筋すらよく分からない。
親父またアフリカの奥地にでも行ってるんだな。フランス語が通じる場所にいるということは……。
「なに? その護符さえあれば助けられるって呪術師のばーさんが言ってる? どんな魔法も平気だから決断次第だ? んな事言われても……」
ユリアの劣勢は明らかだった。街を盛大に破壊しながらも、一方的に嬲られ、時には痴態すらも晒していたからである。
「そろそろ本番いってみる? 世界中に中継するのも面白いわね~」
破壊されつつある大型の駅を足場に、ヘイゼルはにんまりと笑った。
「この実験体にはね、色々な性技も教えてあるのよ♪ その実験を兼ねるのも悪くないわね。うふっ♪」
「そ、そんな……」
ユリアは駅前の大型ビルを背中で破壊したまま、大通りの上に座り込んでいた。体力も魔力も消耗して、動きたくても動けなかった。格闘も得意な魔法使いといえど、両方を失っては最早無力な少女でしかなかった。
「さあ、やっておしまい!」
まるで悪の女幹部のようなヘイゼルの台詞に合わせて、実験体が触手をくゆらせながら動き始めた。自由に動けることを悟ったのだろうか? その動きは喜びに満ちているようにさえ見えた。
「駄目! 来ないで! こんな所で公開処刑なんて真っ平ごめんなんだから……って、ああっ!」
通りを破壊しながら伸ばしていた足に触手が再び絡みついてきて、ユリアは恐怖のあまり声を上げた。今度こそ犯される! そう思うと抵抗することすら出来ない。
駄目……。もうどうにもならない。任務に失敗するどころか大事なものまで失ってしまう……。あたしって、こんなに非力だったの……?
思わず閉じた目に、涙が浮かんだ時だった。
「何をしてるんだ! ユリア! 立ち上がれ!」
突然、謙吾の声が耳元に届いた。
「この護符があれば力はすべて戻る! お前が全力を出せば勝てる相手だろ!」
「謙吾……」
「この護符、お前にやるぜ。大事に使えよ! それっ!」
体格差も忘れて投げられた小さな小さな護符を、ユリアは何とか右手で受け止めた。ゴマ粒以下の大きさだったが、なぜか力が戻ってくるのを感じる。
これは……。こっちの世界の魔法? まさか……。
複数の触手がユリアのスカートの奥へと迫る。あまり気持ち悪さに身悶えしながらも、少女魔法使いは少しずつ戦う気力を取り戻していく。
「ちなみに今、中継は切ってるぜ。これ以上痴態を晒させるわけにはいかないからな」
「……いいの?」
「話は後だ。仕事だろ、荒事始末人・ユリア!」
「……。うんっ! ありがとう! 謙吾!」
大きく頷いたユリアの笑顔は無邪気そのものだった。一瞬、謙吾は胸が高鳴るのを感じたが、すぐにその場から離れる。応援はしたかったが、巨大化した少女の巻き添えだけは御免だった。
これでいいんだ、これで。後は任せたぜ、ユリア。
中継再開の準備をしながら謙吾は心の中だけでつぶやいた。
一方、力を取り戻したユリアはすぐに反撃に出た。ヘイゼルが油断しきっているのを確かめながら、足に絡む触手を魔力で一気に叩き潰す。無属性の純粋な魔力は強力な物理攻撃に相当することもあって、意外とあっさりと軛は無くなる。
「え?」
ヘイゼルが異変に気づいた時には遅かった。立ち上がったユリアがビオランテもどきの実験体へと正面から戦いを挑んでいたからだった。
「えーいっ!」
掛け声と共に、ミニスカートを豪快に翻してキックを浴びせる。純粋な魔力が込められた一撃に、実験体が大きく揺らぐ。それでもユリアは何度もキックを食らわせると、巨大化しているのをいいことに手近にあったビルを引き抜いた。撮影を再開した謙吾があっと言う間もなく、実験体に叩きつけて簡単にバラバラにしてしまった。
「えげつないな……。幾らなんでも」
「仕方ないでしょう。それに巨大化してるんだから利用しないと損じゃない」
「そういう問題か……?」
空中の謙吾は改めて辺りを見回した。巨大化したユリアとヘイゼル、そして実験体の大暴れによって街並みは原型を留めないほどに壊滅し、所々から黒煙が吹き上がり火災まで発生している始末だった。
それでも、ユリアは大暴れを止めなかった。
まだ無傷で残っていた建物を巻き込みながら実験体を投げ飛ばしたり、ビルなどを叩きつけたからである。全ての攻撃に魔力が込められていることもあり、さすがのビオランテもどきも確実に弱っていく。
「くっ……。こうなったら……」
完全に追い込んだはずのユリアの逆襲に、魔法使いのヘイゼルは打つ手が見つけられないでいるようだった。実験体はユリアの攻撃に耐えられるはずだったが、大量の魔力を吸収しきれずオーバーフローを起こしかけている。このままでは討ち取られるのは確実だった。
となると打つ手は一つ……。
「なっ……」
突然、巨大化したヘイゼルがこちらに向かってくることに気づいて謙吾は慌てた。何を狙っているのかは分からないが、逃げる方法が思いつかない。頼みの綱のユリアはこっちに気づいていない……。
何もできないまま、謙吾はヘイゼルの巨大な手の中に握られる形となった。力は込められていなかったが、状況は最悪だった。
「ユリア、これを見なさい! あなたを助けた男の子は私の手の中にあるわよ! 大人しくしなさい!」
すっかり弱った実験体に止めを刺そうとしていたユリアの動きが止まった。鋭い視線でヘイゼルを見つめると、両手をだらりと下げる。
「そう、それでいいのよ。それで。迂闊ね。この子の存在を忘れるなんて」
ユリアは無言だった。上空の風に綺麗な髪を揺らしながら、ヘイゼルを見つめるだけだった。
「条件は簡単。あなたが負けを認めて元の世界に戻ること♪ そうしたら解放してあげる」
「もし拒否したら?」
ようやくユリアが口を開いた。低く、感情のこもらない別人のような声だった。
「そうね。この子を食べてあげる♪ 今なら簡単じゃない」
「そう。勝手にするといいわ」
「なっ……!」
言葉に詰まったのはヘイゼルだけではなかった。捕らえられた謙吾もまた、ユリアの言葉に顔色を失った。
「どうせさっき会ったばかりの他人なんだから。どうぞご勝手に」
「本当にそれでいいの? 私が食べたらこの子は間違いなく死ぬわよ。本当にいいの!?」
「荒事始末に犠牲はつきものよ」
言い切って、ユリアは目線を外した。「見捨てられた」と思った謙吾は絶望のあまり、意識が遠くなる。
「ちょっと、なんでそうなるのよ! 絶対に犠牲を出さないのがあなたのポリシーでしょう!? それなのに……」
「犠牲は出すわ。……但し、それは罪を犯した者のみ!」
ユリアの言葉を謙吾が全て理解するよりも早く。少女魔法使いが風のような速さでタックルしてきた。衝撃で謙吾は空中に投げ出されたが、すぐにやわらかなクッションに受け止められる。
「えっ……?」
「もう大丈夫。安心して♪」
謙吾を受け止めたクッションの正体は巨大化したユリアの両手だった。そのまま、胸元まで引き寄せられる。程よくふくらんだ胸を目の前で見る形となり、謙吾は自分が天国にいるのか地獄にいるのか一瞬わからなくなる。
「どうしてもヘイゼル様の気を逸らす必要があったのよ。実験体の制御を乗っ取るなんて大魔法、発動まで時間がかかるから」
「え? ヘイゼルは……?」
「決まってるじゃない。罰を受けてるわよ。ほら」
ユリアに言われるまま、その方向を見た謙吾だったが、次の瞬間唖然とした。実験体の生みの親であるヘイゼルが、当の実験体に好き勝手に嬲られていたからだった。
「ああっ……! 駄目! もうっ……巨大化してるのにイキそう! 誰か止めて! ……止めなくてもいいわっ! このまま! このまま!」
「……」
「どうする? 全世界に中継するなら手伝うわよ♪」
「俺のアカウントが永久に停止されるから止めておく」

こうして。異世界から来た謎の巨大生物と魔法使いによる大騒動は、荒事始末人・ユリアの活躍によって解決した。
ヘイゼルは散々痴態を晒した後に実験体と共に元の世界に送還され、破壊された街はユリアの魔法によって完璧に復元された。
「お前、凄いんだな」
元に戻った街並みをユリアの肩から眺めながら、謙吾は大きく息をついた。
「だから荒事始末人が出来るのよ。ま、当然よね」
「大変じゃないのか?」
「大変に決まってるじゃない。でも……」
「でも?」
「こー見えても楽しいのよ。この仕事♪ 今回は巨大化して大暴れ出来たから楽しかった~。またやろうかな♪」
「遊びで街を壊滅させるな!」
「終わったら元に戻すからいいじゃない。あ、だったら今から遊んでいこうっと。日没までには元に戻すからいいでしょう?」
「馬鹿、止めろ!」
謙吾の制止も虚しく、大きな街が巨大化したユリアの大暴れによって再び壊滅したのはわずか一時間後のことだった。
ちなみにその模様も全世界に中継されており、世界中のその手の趣味の人たちを喜ばせたのは言うまでもない。

……
次に書く話は未定です。リクエストがあけば受けますが、間隔が空くと忘れてしまうので受け付けるのは「先着一名様」とさせてもらいます。また、破壊系巨大娘のお話に限定させてもらいますのでその点もご了承願います。

次回は来週更新します。久しぶりにイラストを掲載しますのでお楽しみに。
プロフィール

小笠原智広

Author:小笠原智広
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